今のは告白じゃない
今日は僕、谷中晴來にとって運命の日になるはずだった。放課後の教室で、僕は幼馴染みの少女、北路茅雪を呼び出した。彼女は、幼い頃から近くに住んでいて、一緒に遊んだり、よくしてくれた大切な存在だった。
「茅雪......」勇気を振り絞って、僕は言葉を口にした。しかし、彼女の反応は冷たいものだった。
「ねえ、なによ。あんたのそのつまらない告白なんて聞いてる暇ないの」
茅雪は呆れたように首を振り、冷ややかな瞳で僕を見つめた。
「なによ、いきなり。私は忙しいの。邪魔しないでくれる?」
「ち、茅雪......」
僕は動揺を隠せなかった。
僕は茅雪に告白なんてしたつもりはない。
「あ、そうだ。あんたって妄想ばかりしてるわね。陰キャで根暗なあんたらしいっちゃらしいけど、もうちょっとマシな趣味持ったら?」
「ち、茅雪......そんなこと......」
僕はショックで言葉を失った。僕は茅雪に話を聞かせたつもりはない。茅雪が勝手に小説ノートを見て、キモいと嘲笑ったんだ。勝手に他人に見せられたこともあった…
「あ、え、え、えっと……なんでそんな事言うの……!僕、何か怒らせるようなことした?」
「は?あんたが不細工な陰キャだからでしょ。あんたみたいなゴミみたい人間が告白なんてするんじゃないわよ。」
「む、ゴミって……そんなこと、ないよ。僕だって、茅雪のためにいろいろ頑張ってきたし......」
「ねえ、あんたさ」
茅雪は立ち上がり、高飛車な態度で笑った。その表情には、かつての幼馴染みの面影は微塵もなかった。
「価値0よ、あんたなんて。あんたみたいな陰キャで、モテない、無価値な人間が」
茅雪は呆れたようにため息をついた。
「あんたみたいなクズが告白なんて100年早いのよ。勘違いもいいとこ」
茅雪は高飛車に言い放つと、鼻で笑った。
「じゃあね、邪魔しないでくれる?」
だからなんで茅雪に告白しなきゃいけないんだよ…
茅雪は冷ややかに言い放ち、教室から出て行った。彼女の後ろ姿は冷たく、晴來の心に深い傷を残していった。
その後、晴來は紗夕莉に再び会い、今日の出来事を話した。
「晴來君……本当に大丈夫?」
紗夕莉は優しく彼の手を握りしめた。彼女の温かい手のひらが、晴來の冷たい手を包み込んだ。
「うん、大丈夫だよ。ありがとう、紗夕莉。君がいてくれて、本当に救われたよ」
晴來は感謝の気持ちを込めて微笑んだ。彼は茅雪との過去を振り返りつつ、新たな未来へと歩み出そうとしていた。紗夕莉との絆は、彼にとって新たな希望となり、彼の心に温かい光を灯していた。