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蟲の君  作者: たま治癒
9/12

はじまり6

「バーネットおば様、この記録、面白いです!」


庭に椅子と机を置いてもらい、そこにいることが日課に加わった。


バラララっと虫が降っても、庭なので、虫は勝手にシャカシャカぴょんぴょんと離散していく。

私は、フワフワリボンのついた白い傘をくるっと回した。


傘、最強!


エッカルト様と話してから、数日たった私は、虫降りに順応しつつある。


あれから、蟲の祝福は私の感情の高ぶりに増えたり減ったりすることなど、注意点をいくつか教えられた。

もう最初みたいに虫の豪雨を降らせてない。

えへん。


ぽとんと、つやつやしたカナブンが落ちてきて、机をちゃかちゃか横切っていく。


「でしょう?その方はね、三代前の蟲の方なのよ。着眼点がいいわよね~。虫の発生における地域差をみるなんて」


バーネットおば様は、虫が平気らしい。

ごく薄い紫の、透かし模様のある傘を持ち、ぴんとのびた背筋は揺るぎない。


おば様、大人っぽくてステキ!と、頭の片隅で思うと、シャラララと数匹の蝶が、私とおば様の間を飛び去っていった。


シャイド侯爵家のバーネットおば様とお父様は姉弟で、我が家によく来てくれる。

おば様はものすごく物知りで、綺麗で、わたしの憧れだ。

お母様がいたら、おば様みたいな感じかなと、こっそり思っていたりする。


そのおば様が、頬に手を当てて、首をかしげた。


「嬉しいとか、楽しいときは蝶がでるようね?」


あ、なるほどそうかも!


私は真新しくてかわいい装飾のノートを広げ、カリカリとメモをした。

これが、今代の蟲の者、つまり私の『記録』になるのだ。

えへん。


またぽとんと、カナブンが落ちた。


歴代の蟲の者は、残された記録書によると、虫の出方にきまりがあったそうなので、私の祝福も同じかどうか、なるだけ記録するように言われている。


お野菜やお花の観察日記とかは、おば様の屋敷で

したことがある。

『違うところ』と『同じところ』をおば様やおじ様と探しあいっこして、楽しかったなぁ。


「自分でも気持ちがはっきりしないときは、たくさんの虫が混じるみたいです。コオロギとかテントウムシとか、ダンゴムシとか。幼虫と大人の虫も混じっていました」


「大人の虫は、成虫だったということかしら。種類のばらつきは、心が不安定だったことも関係しそうね」


大量の虫をふらせたときを思い出しながら話し、記録に足していく。

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