はじまり2
ぱちっと目を開いた私は、まず「ここはどこ?」と思った。
最後の記憶は、庭で、かなり眩しいな、だったから。
ぽとっ。
ヒヤリとしたものが額にのった。
「あ」
ここは私の部屋だ、と天井からわかり、ふかふかベッドに寝ていると理解した。
次に、水が上から落ちて?と疑問がわいた。
意識が落ちてきたものにむいて、息を飲む。
うご、うごいてる。
何かおでこに!?
そこから凄かった。
お腹の奥がひやっとしたら、ドバッと顔から爪先まで埋め尽くすうごうごが降り注いだ。
目を閉じてしまったから、見えなくてわからないけど、ベッドだけじゃないのかも。
ザザザーと、どしゃ降りみたいな音がしたから。
「むひゃあああぁ~!!!?」
うごうごが口に入るかも、と一瞬恐怖したが、追加でドザザザザー!という音と、痛くはないがまた私に降り積もる何かと、増した体への重みにパニックになった。
最初の悲鳴らしからぬ声の直後に、「お嬢様っ!!」とひと声あり、ガンっと扉が開かれた。
たぶん、護衛のハインだ。
助かった。
「お嬢様ー!えっ、どこ!?お嬢様ぁー!!うぇっ!えぇっ?虫がこんなに?!」
助かっ、るかな?
ハインの、なんでどうして虫がと慌てる声で、やっぱりこれらは全部虫なんだとわかり、私は恐怖と混乱とで体が強張り、動けない。
ハインは埋もれた私が見えず、まだ入り口でキョロキョロしているようだ。
「ハイン!お嬢様が目覚めたのっ?!」
次に聞こえたのは、私のお世話をしてくれている、マーサの喜びのこもった声。
これは助かった!
「っ、ぎゃ~!!!ぎゃあああぁ!!」
ああ、そうそう。
マーサは虫がだいぶダメだったわ。
マーサの止まない悲鳴で、スンッと少し頭が冷えた。
かさかさもそもそする気配がそこら中にある。
その間中も、ザザっ、ボトボトと虫は降り落ちてきている。
私はどうなるんだろう。
何が起きているんだろう。
わからない。こわい。