助けて欲しい
情けない姿のまま何とか頭だけは働かせようとする。
ここはどこで、どうしたら元の世界に戻れるのか。
狼に食べられた人達をどうやって助けたらいいか。(普通に考えたら無理だろうけど、何故か助けられそうな気がする)
そして何故自分は羊みたいな姿をしてるのか。
結局、何も答えが出ない。僕一人ではどうしようも無いようで、誰か助けてくれる人が必要だ。
しかし、家の中には誰もいない。狼は一人も見逃さなかったようだ、僕をのぞいて。
外に出ようか考えていると、外から足音が聞こえた。
狼が戻ってきたと思い隠れようとしたが、足音の感じが違うのに気がづいたので、窓から誰が来るのか慎重に覗いてみた。
足音の主は狼ではなかったが、人間でもなかった、また羊だった。ただ、今まで見た羊の中で一番大きい。右手に青い手提げを持っていて、落ち着いた雰囲気をしている。
助けてくれるかどうか解らないが、狼みたいに食べられる事はないだろうと思い、その羊に助けを求めた。
僕が家からいきなり飛び出した所為か羊はとても驚いていたが、事情を説明すると協力してくれた。元の世界に戻すのは無理だが、食べられた人を助けるのは、急いで狼を探せば大丈夫だそうだ。探す時に狼に食べられそうになっても、その狼は足が遅いから走って逃げれば大丈夫だ、とも言ってくれた。
二人で探すと狼はすぐに見つかった。狼は家の近くの湖で眠っていた。
どうやって助けるのか羊に聞こうとすると、羊は何も言わずに手提げから刃物を取り出し、狼の腹を問答無用で切り開いた。