狼は羊を食べるから
僕は、柱時計の中にいる。何故ここにいるのか思い出せない。
体を見た。僕の体はまるで羊の様になっていた。
驚きながら何故こんな姿になっているのか考えていると、家の外から足音が近づいてきた。
誰だろう?
足音の主はドアを勢いよく開けた。柱時計の中からはドアのある方向を見ることが出来ないため、誰なのか分からない。
そいつは家の中に入ってきた。奥に入ってくるとその姿が見えた。
そいつは狼だった。
とても恐ろしい姿で、見た瞬間声を上げそうになったが必死で堪えた。見つかったら食べられてしまいそうだ。
目をつむり、手で膝を抱え、動かないように、物音を立てないように、怖さで震えるのを必死で我慢した。
狼は、なかなか出ていかなかった。
物音がした。何をしているのか目を開けて見てみると、タンスの中や机の下辺りから羊を引っ張り出し、食べていた。助けようとも思ったけど、羊達が何の抵抗も出来ずに狼に食べられているのを見ると、勇気が出ず、ただじっとその場から動けなかった。
しばらくして、やっと狼が出ていってくれた。
僕は狼が出ていったのを確認して、柱時計の中から出た。怖かったせいか足が震えてまともに立てなくて、床に座り込んでしまった。