逃げ出したけど
その時、僕はドアから勢いよく開けて飛び出し、ドアの前に立っていた山羊を突き飛ばし、家の周りにある森に逃げ込んだ。
走っていたのは初めの内だけで、家が見えなくなるとゆっくりと歩きだすようになった。
歩いている間もう一度、ここはどこで、どうやってここに来たのか考えようとしたが、頭が相変わらずぼんやりとしていて、全く解らなかった。それどころか、僕が何をしていたのか、はっきりと思い出せなくなってきた。
それから僕は、何も考えずただ森の中を歩いた。森は予想していたよりも広く、歩いても歩いても森の外には出なかった。
まっすぐ歩いているつもりだが、森の中は薄暗く、本当にまっすぐ歩けているのか分からない。寒い。目印も無く、似たような景色が続くため、同じ場所を何度も歩いているような気もする。
一時間ほど歩くと家が見えた。
その家は残念ながら最初にいた家だった。(やっぱりまっすぐ歩けていなかったようだ)
家からは、人の気配がしなかった。長時間歩いて足が痛くなったため、少し恐怖はあったが家の中で休むことにした。
家に近づくと違和感を覚えた。家や周りの木が最初にいた頃に比べて、一回り大きく見えたからだ。
どうしてかは良く分からないけれど、家が大きくなったのではなく、自分が小さくなったようにも感じられた。
家のドアを開け、誰もいないことを確認してから、ある所に行き、疲れていたのでそのまま眠った。
目が覚めた。