食べたい、逃げたい
家の外に出る前に、頭の中が相変わらずぼんやりしている事を思い出した。
そういえば子供の頃に読んだ絵本に、狼と山羊が出てくるものがあった、今と同じ状況だ。
絵本の中では子供がもう一人、柱時計の中に隠れていた。
柱時計を調べてみると、絵本と同じように子供が(今まで食べたやつより一回りぐらい小さい)隠れていた。
子供は必死に逃げようとしたが、僕はしっかりと捕まえ、そして食べた。
食べ終わった時、家の外から足音が聞こえた。足音はだんだん家に近づいてきた、誰かが帰ってくるみたいだ。
窓から誰が帰ってくるのか見てみると、さっきまで食べていた山羊の姿をした子供によく似た大人が、こっちに向かって歩いていた。
また、絵本の内容を思い出した。
絵本では狼は子山羊を食べた後眠っていると、母親の山羊に腹を裂かれ、食べた子山羊のかわりに石を腹の中に詰められ湖に沈められた。
このままでは僕も、絵本の中と同じような目にあってしまうのでは――。
怖くなり家から逃げ出そうとしたが、三つある窓はいずれも小さく、逃げられそうに無かった。ドアは一つしか無く、そのドアに向かって山羊が歩いてきている。
何か他に逃げる方法がないか考えようとしたが、焦って何も考えつかない。
足音は段々と近づいてきて、ドアの前で止まった。