聖女マリアと着ぐるみは聖国を脱出する
私はマリアを体内に入れたまま神殿の外に出て聖王都を散策した。
『凄いわ。初めて聖王都を散策している』
彼女の歓喜に満ちた感情が流れ込んでくる。
更に神殿の連中に対しての怒りがこみ上げてきた。
マリアをこんな所に置いておけない。
私はマリアと共に聖国からの脱出を決意した。
「巡礼の旅に行く事になったわ」
突然マリアが巡礼の旅に行く事になった。
神官長から直々に言い渡されたらしい。
あの爺は以前からマリアの事を煙たがっていたらしい。
しかしこれは絶好のチャンスだ。
【チャックオープン】
「マリア様、私の体内に入って下さい」
私は強引にマリアに体内に入るように促した。
【チャッククローズ】
『マリア様、このまま聖国を脱出します』
『え、ええ、どういう事』
『拒否は認めません』
私は全速力で聖国を脱出した。
「もう逃げられないぞ」
「聖女マリア様を解放しろ」
平原で聖騎士達に取り囲まれてしまった。
しかし私の力を知っているので簡単には襲っては来ない。
私と聖騎士達は睨み合い膠着状態になった。
【烈風】
「「「「「ぎゃあああああ」」」」」
強風が吹き荒れて聖騎士達を吹き飛ばした。
「おい、ボヤボヤするな。逃げるぞ」
紫色の肌をした見知らぬ男に腕を掴まれて空中に浮かび上がった。
【転移】
そして転移の魔法でそのまま脱出させられた。
「此処は何処なのよ?アンタは何者なの?どうして紫色の肌をしているのよ?私達をどうするつもり?」
「此処は魔族の宮殿だ。俺はロデウス。魔族軍の一員だ。魔物のお前が聖騎士団に追われていたので、助けただけだ。それにしても見知らぬ魔物だな」
「助けてくれて、ありがとう。だけど私は魔物じゃないわよ」
「魔物じゃないだと」
ロデウスと色々な話をして、この世界の状況を理解した。
この世界は女神ヤーナの娯楽の為に創造された事。
魔王軍は女神から世界を解放する為に戦っている事。
聖国を脱出した私達は人族の国では生活出来ない事。
魔王軍に入るしか選択肢が無い事。
「状況は理解したわ。私は喜んで魔王軍に入るわよ」
「お前は問題無いのだが、まさか人族の聖女が体内に入っていたとはな」
「マリア様に危害を加えさせないわよ」
「落ち着け。危害を加えるつもりなど無い。取り敢えず魔王様に謁見させる」
こうして私達は魔王と謁見する事になった。