聖女達と天使達は同調しない
「「「「開けチャック」」」」
聖女達がチャックオープンの言霊を唱えて、彼女達は天使達の内部に入った。
「「「「閉じろチャック」」」」
そしてチャッククローズの言霊を唱えた。
「さてと王都を散策するわよ」
「住民達はどんな反応をするかな」
「もちろん驚くでしょう」
「それは楽しみね」
「お願いです」
「止めましょう」
「悪趣味ですよ」
「絶対にドン引きされますよ」
「「「「うるさい」」」」
天使達が聖女達を説得しようとしたが、彼女達に叱責されただけだった。
「あれってホワイトライオンの着ぐるみよね」
「ブラックウルフも居る」
「ゴールドラビットもよ」
「ピンクベアーまで居るわよ。趣味が最悪ね」
「「「「・・・・」」」」
住民達の冷たい視線が天使達に突き刺さった。
私は王宮錬金術師のカイゾウ。
着ぐるみに強化魔法を付与させれば、最強の全身鎧となると考えて、付与魔法を最優先に研究している。
天使達が着ぐるみの姿に変異したとの噂を耳にする。
これは何としても天使達に会わなければならない。
「神殿に向かう。大急ぎで支度をしろ」
カイゾウは弟子のアシスと共に神殿に向かった。
「天使様、着ぐるみに強化魔法を付与すれば、天使様の戦闘力は数倍になります。私に強化魔法を付与させて下さい」
「「「「断る」」」」
しかし天使達は拒絶した。
強化したら元の姿に戻る可能性が激減するからだ。
「聖女様、天使様を説得して下さい」
カイゾウは聖女達に話を持ち掛けた。
「着ぐるみ天使達に強化魔法を付与する」
「面白いわね」
「私達が説得してあげるわ」
「任せなさい」
「「「「貴方達、強化魔法の付与を受け入れなさい」」」」
「嫌です」
「拒否します」
「辞退します」
「受け入れません」
「お黙りなさい」
「反論は認めません」
「命令に従いなさい」
「私に逆らうつもりなの」
「「「「・・・・分かりました」」」」
聖女達にゴリ押しされて、天使達は渋々強化魔法の付与を了承した。
こうして天使達の戦闘力は格段に上がったが、元の姿に戻る可能性は絶望的となった。
しかしカイゾウは着ぐるみの真の特性を理解していなかった。
着ぐるみの真の力を引き出すには着ぐるみと中に入る者の意識の同調を必要不可欠なのを知らなかった。
もし同調に成功している着ぐるみと戦ったら、着ぐるみ天使は瞬殺されるだろう。