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⑨「萌芽」

表向きは、公の場での臓器移植ネットワークから豊梨病院への厳重注意で幕を閉じた。

後追い記事なども無く、伊達に待ったを掛けた事が功を奏し告発記事も出なかった様で此方の被害は最小限に済んだ。

今回の豊梨病院での臓器移植手術は、私自身の描く理想的な未来の秩序への試金石であり、もし、実名報道がなされていれば計画の全てが破綻する処であった。

そもそも、豊梨病院に勤務する看護師からの内部告発が誤算であった。

やはり、豊梨病院に臓器移植手術に関与する人選を任せてしまったのは明らかな判断ミスであり、充分に吟味して人選に関与すべきであったと後悔している。

それに加えて、宮本の金遣いの荒さにも考えが及ばず、全てが後手に廻ってしまった事で大慌てで事後処理に追われる羽目に陥ってしまった。

突然、あの馬鹿から「伊達って記者が臓器移植手術の件で駅前のホテルのラウンジで取材をしたいと言って来たのだが、もしかして全てバレてしまっているのだろうか?」と電話があった。

「慌てるな。金銭の授受があったと言う証拠は無い。何事も無かった様に無償の臓器提供だったと伝えれば良い。金についての話になりそうだったら、知らぬ存ぜぬで押し通せ」

「分かった、頑張ってみるよ」

「お前も捕まりたくは無いだろう?くれぐれも言葉には注意するんだな。大丈夫だ。心配するな」と言って電話を切った。

だが、やはり宮本に全てを任せる訳にもいかない。

駅前のホテルのラウンジに先乗りして一番奥の席を確保し、宮本と伊達という記者を監視する事にした。

現れた宮本の身形を見て、この馬鹿者が!!と言葉に出さずに罵った。

あの身形では、金品の授受を自ら認めている様なものである。

宮本の席の向かいに座っているのが伊達の風貌を記憶する。

取材の内容は聞き取れないが、宮本が平静を保っているのを見ると単なる後追い取材で済みそうだ。

取材が無事に済んで安堵している宮本を見て話の流れを想像し、伊達をマークする事にして跡を追った。

どうも宮本の周辺を当たろうとしている様子で、これは早く手を打たなければと思い以前警察に無届で銃槍の処置をしてやったヤクザに電話する。

「おう、あんたか。今日はどうした?」

「前回の貸しを返してもらおうと思ってね」

「相手は誰だ?」

「記者をしている伊達という男だ。少し脅しを掛けてくれるだけで良い。呉々も警察沙汰にならない様に気を付けてくれ」

「例の臓器移植の件か?」

やはりヤクザの情報網は侮れない。

ここは弱味を握られない様にしなければ。

「これ以上嗅ぎ回るなと忠告しておいてくれ」

「場所は?」

「豊梨町3丁目のコーポ荒井の辺りで私が張っている。急いで来てくれ」

電話を切って宮本の住むアパートの近くで三人の女性から話を聞いている伊達を監視を続ける。

このタイミングで宮本が自分の車で帰宅するとは、運の無さに呆れてしまう。

帰宅した宮本に声を掛ける伊達。

宮本も慌てて何処かに電話を掛けながら部屋に入って行った。

宮本の電話の相手は私だった。

「どうしよう、伊達がまだ話を聞きたいとアパートまで来た」

「何も応えなかったんだろう?大丈夫だ。後は私に任せて、お前はもう一度外出しろ。夜まで帰って来るなよ」

「分かった、直ぐに出掛けるから」と言って電話が切れた。

少しして、宮本が慌てた様子で部屋を出て車で外出した。

伊達が宮本に接触出来なかった様子を遠目で見ていると、黒塗りのクラウンが静かに近づいて来たので伊達の方を指差した。

クラウンが静かに伊達に近付いて行くのを眺めながら、この後どうするべきかを熟考した。

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