③「疑惑」
宮本のアパート前まで来てみたものの、何かあてがあった訳ではないので「どしたものか・・」と少し辺りを見廻していると、何やら話し好きそうな三人の中年の女性が此方をチラチラ見ながら立ち話をしていた。
宮本のアパートの近所の住人であれば噂話なども聞けるかと思い、近付いて話しかけてみる。
もう直ぐ夕方だが「こんにちわ〜初めまして。私、記者をしている伊達と申します。半年前の臓器移植の件で取材をしています」と言いながら近づいてみた。
すると一人の女性が「最近は記者の方も来なくなって、やっと静かになったなぁ・・と話しをしていた処でしたのよ」
すると別の女性が「マスコミって始めは騒ぎ立てるけど、今じゃニュースにもならないしねぇ」と言えばもう一人の女性も「最近の変わり様の方がニュースになりそうなのにねぇ」と返す。
「最近の変わり様って何ですか?」と尋ねると、「こんな話しして良いのか分からないんだけれども、最近のあの人の身形が派手になったって近所でも持ち切りなのよ。」
「聞いた話だけど、元々はかなりの生活苦だったって話だから・・ねぇ」
「急にチンピラみたいな身形になったと思ったら、アクセサリーなんかも派手になって。」
「しかも、トヨタの何とかって高級車を乗り回してるって言うんだから驚きじゃない?」との事。
「遺産でも入ったのでしょうか?」と尋ねると、「そんなんじゃなくて・・」と黙り込んでしまった。
「何かあったのですか?」と尋ねると「いえ・・ねぇ、初めは善意の臓器提供だって聞いて凄いわねぇと話していたんだけど、最近聞いた話だと実はそうじゃなかったんじゃないかって・・」
「私達が言ったって書かないでくださいね。臓器提供の見返りに金品を貰ったんじゃないかって・・噂ですけどね」
「しかも、家庭内DVで息子さんも怪我が絶えなかったって話もあって」
「だから、息子さんの命をお金で売ったんじゃないかって・・」
「そんな話があったんですか?でも、ただの噂話ですよね」と尋ねると「それはそうなんだけど・・」との返事。
その時、遠くから車の排気音が聞こえて来た。
「ほら、噂の張本人が帰って来たみたいですよ。詳しく本人に聞いてみたら如何ですか?」と言い残してそれぞれの家に帰って行ってしまった。
宮本のアパートの前で待っていると、噂通りレクサスに乗った宮本が帰って来た。
「ちょっとお話し聞かせて貰えませんか?」と話し掛けようとすると「嫌、この後忙しいから・・」と慌てた様子で何処かに電話しながら部屋に入る宮本。
暫く待っていると宮本が部屋から出て来て、急いで車で何処かに出掛けてしまった。
今日はもう取材は無理と判断してホテルへと向かい歩き出した時、静かに近付いて来る車の存在には全く気付かなかった。