22「俯瞰」
「そもそも、移植先進国と比較して日本の骨髄移植や臓器移植が進まない現状の問題点が何処にあるのか?伊達さんは理解しておられますか?」
「認知度の低さが原因でしょうか・・」
「認知度の低さも勿論ですが、需要と供給のアンバランスにより待機患者の多くが亡くなっていく負の連鎖が、ドナー登録をしようとする者達の意欲を削いでいるものと推定しています。ですから供給量を早急に増やす必要があります」
「供給量を増やすと言っても、現在の状況では無理ではないですか?」
「その供給量を画期的に増やす方策があります」
「どの様な方策ですか?」
「その前に、先日起きた車内に幼児を置き去りにしたまま両親がパチンコをしていて熱中症で死なせてしまう事件がありましたが、伊達さんは同様の事件の取材もお有りでしょうから、この事件に対する率直な感想をお聞かせくださいませんか?」
「両親の不注意な行動や、子供への愛情不足を感じてしまいます。また、行政など然るべき窓口が積極的にネグレクトを監視する必要があると思っています」
「同感です。子供に愛情を注げない親が増えている状況などもあり、我々も現状を憂いています。では、毎年自殺者が一万人を超えている現状については如何でしょうか?」
「やはり、現在の厳しい経済状況から将来を悲観して自殺してしまう若者や非正規雇用の方々が多いのではないかと思います」
「此方も行政からの救済が必要と考えています。では、引き篭もりや自殺志願者が自殺しきれずに自暴自棄になって、自分より弱い立場の人々を殺して『殺せるなら誰でも良かった』などと自分勝手な言い分を述べ無差別殺人を犯す輩については如何ですか?」
「正直、こればかりは防ぎようがないと思います。事件が起きない事を祈るだけですね」
「では、これまで話して来た事象を俯瞰で見た時に、何か見えてくるものはありませんか?共通項などでも構いません」
「うーん、どれも大切な命が失われている事でしょうか?」
「それも正しい捉え方だとは思いますが、もう一歩踏み込んで少し見方を変えると見えて来るものがあるのですが・・どうでしょう?」
「見方を変える・・大切な命を別の言葉に言い換える・・あっ!!いや、まさか!!そんな事はあり得ない・・」
「やはり貴方は我々と同じ思考回路をお持ちの様で安心しました。そのあり得ない事を実現しようとしているのです、我々は。そして貴方は協力するだろうと見込んでいます」




