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16「胎動」

娘が退院して早くも1ヶ月が経つ。

既に元の親娘関係に戻っていて、普段通り会話の無い日々が続いていた。

今日は早めに仕事が終わりそうなので、久し振りに手の込んだ料理を作ろうと思い帰宅した。

夕飯の支度の途中に娘が帰宅したのだが、何か暗い表情をしているのが気になる・・。

夕飯を食べ始めてからも気になっていたのだが、何と声を掛けて良いかと思案するだけで済ませてしまった。

普段なら夕飯の片付けをしている最中に自室に入ってしまう娘が、居間で何か考え事をしている様子であった。

片付けが終わり居間で寛ごうとした時に娘が話し掛けてきた。

「最近さぁ、何か知らない人に見られてる気がするんだよね」

「気のせいじゃないのか?」

「うーん、気のせいじゃないと思うんだよね。今日なんか、サングラス掛けた男の人が停車している車の中から、ずーっと私を見てたんだよ。何か気持ち悪くて・・」

「それは気になるね。でも何かされた訳ではないから警察に保護を求める訳にもいかないし・・仲の良い友達と一緒に帰るとか?」

「ううん、友達に迷惑掛けるのも嫌だからそれはしない。でも、何かあったら大変だから、人通りの多い道を通るとか、明るいうちに家に帰る様に気を付けるよ」

「そうだね。何かあったら必ず電話しなさい。仕事放っぽり出して駆けつけるから」

「そうだね。必ず連絡するよ」と言って娘は部屋に入って行った。

何事も無いと良いのだが・・。


その連絡は、私の平凡な日常を一変させた。

心臓移植の待機患者が出たと言うのだが、今回の件は普段とは事情が少々異なっていた。

標準的な一般家庭では、臓器移植ネットワークに登録してから手術費用の寄付を募り、目標額(約2億円)に到達した時点で移植先進国のアメリカへ渡航の手続きを始める。

患者本人の体力が適合するドナーの出現まで保つのかが鍵となる。

今回の場合、手術費用については既に工面出来ているのだそうだ。

全国にチェーン店を持つ焼肉店の社長の娘で、15歳の患者との事である。

容態が安定せず、アメリカへの渡航は断念せざるを得ない状況との事で、適合するドナーの出現が待たれていた。

これは絶好の機会だと思ったのだが、容態が不安定な事がネックになりそうで二の足を踏んでいた。

また、私と同じタイミングで豊梨病院もこの情報を知り、既に動いている可能性がある。

ここは、豊梨病院に送り込んでいる内通者に連絡を取り、豊梨病院側の動きを先読みして事に当たる必要があるだろう。

取り敢えずメールで現状報告する様に伝えた処、間を置かず返信があった。

やはり、既に豊梨病院側は移植手術の体制を整えていた。

しかも、ドナーの当てがあるとの報告に驚き、ドナーの氏名を確認して二度驚かされた。

これは千載一遇のチャンスである。

心臓移植のドナーと共に、我々の活動を進めるに当たり力強い援軍になってくれる可能性があった。

何か新しい情報が得られたら直ぐ連絡をくれる様に内通者に頼んでおく。

さぁ、理想的な未来の秩序の幕開けだ!!

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