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14「発端」

その連絡を受けたのは、市内で起きた幼児を車に置き去りにしてパチンコに熱中していた若い夫婦が息子を熱中症で死なせてしまった事件の後追い取材中の事であった。

近所に住む住人から話を聞いている時に携帯が鳴ったので、相手に断りを入れて電話に出た。

「もしもし、伊達美幸さんのお父様ですか?」

「そうですが貴女は?」

「美幸さんが通う真山高校の担任の高橋です。突然の電話で申し訳ありません。緊急の要件なのですが、今お話出来ますか?」

「大丈夫です」と言って取材対象に頭を下げ往来の邪魔にならない路地へと入り込んだ。

「緊急の要件とは何でしょうか?」

「今、美幸さんは豊梨病院で治療を受けています」

「何かあったのですか?」

「今日は課外授業で市内の福祉施設を訪れていて、その帰り道に無謀運転の自転車と衝突して倒れた際に怪我をしたのです」

「娘の怪我の具合は?」

「倒れた際に頭を打った様で、今はCT検査を受けています」

「では、私も豊梨病院に向かいます。詳しい話は病院で伺います」

「はい、お待ちしております。この度は申し訳ありません、宜しくお願い致します」

「では病院で」と言って電話を切り、急いでタクシーを拾って病院へと向かった。

病院の受付で「伊達美幸の父です。娘は何処ですか?」と尋ねると「娘さんは502号室です」との返答があった。

駆け足にならない様に気を付けながら、急いで病室へと向かう。

部屋に入ると美幸が頭に包帯を巻いて横になって寝ていた。

寄り添っていた女性が先生なのだろう。

相手も気付いて此方を向いた。

「あっ、美幸さんのお父様ですか?」

「そうです。娘は大丈夫ですか?」

「検査の結果は異常無しとの事でした。頭部の外傷も直に治るだろうとの事です」

「顔に傷など残らないでしょうか?」

「それは大丈夫との事です。御心配をお掛けして申し訳ありません」

「相手の自転車の方は?」

「それが、そのまま走って逃げて行ってしまいまして・・。兎に角、救急車を呼ぶ事を優先しました。警察にも連絡して事故の状況は説明しています」と話していると看護師が入って来た。

「伊達さんのご家族の方ですか?」

「父です、娘の怪我の具合は?」

「検査の結果は異常無しですが、頭を打っているので念の為に明日まで入院して頂きます」

「はい、宜しくお願い致します。娘と話は出来そうですか?」

「鎮静剤で眠っているので、夜までこのままだと思いますよ。面会時間もありますので今日はお帰りください」

「分かりました」と言って娘の頬に軽く触れてから病室を出た。

「私の注意不足で大切なお嬢様に怪我を負わせてしまい申し訳ありません。」

「いえいえ、先生の責任ではありませんよ。的確で迅速な対応に感謝しています」

「私が夜まで寄り添って居ましょうか?」

「いいえ、看護師さんの言う通りに今日は帰りましょう。本当に有難う御座いました」

「分かりました。それでは失礼致します」と言って先生が帰って行った。

美幸と話せなかったのは残念だが、明日には退院出来そうとの事なので今日は取材を切り上げ帰宅する事にした。

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