11「計略」
今後役立つ事もあるかと思い調査会社に伊達の素行調査を依頼した。
ギャラは弾むからと告げると、至急調査して報告すると返事があった。
調査報告が上がるまでに中村医師に電話し、「近いうちに伊達と言う記者が取材に行くかも知れない」と伝えておく。
「ペラペラと余計な話をすると修徳大学附属病院に居られなくなるのを忘れるなよ」
「あぁ、分かっている。こんなに見返りの良い話を棒に振るつもりはない」
「君の手術の腕前を腐らせておくつもりはない。今暫くは大人しくしていてくれ」と電話を切った。
現状報告を兼ねて三浦修造にも連絡しておく。
「こんにちは。その後、真里さんの体調は如何でしょうか?何かお困り事がお有りでしたら話を聞かせて頂いた上で対処させて頂きます」
「あー君か。孫はピンピンしているよ。昨日も一緒に買い物に出掛けたんだ。君達には感謝しているよ。何か問題でもあったのか?」
「いえ、大した事ではありません。小蝿が一匹嗅ぎ回っていますが、籠絡の手筈は整っています」
「あぁ、君の働きは知らせを聞いているよ。全て任せるから」
「はい。万事遺漏無き様に進めます。それでは失礼致します」と言って電話を切った。
やはり富裕層を相手にすると緊張と共に気後れしてしまうのは改めなければと反省した。
少し汗ばんでいる事を自覚し、シャワーを浴びる。
調査会社に問い合わせると、明日の朝一で報告書を持参するとの回答があった。
現時点でしておかなければならない事を全て済ませてしまったので、今日は早めに休む事にする。
伊達を上手く利用して此方の有利な展開に持ち込む方策を彼是と考えながら眠りに落ちた。