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凶器 / くらげ
【凶器】
言葉はナイフだと言う
口に出せば いつも心は
スルスルと引き裂かれた
他の人にではなく
自らの内側へ
口に出して
離れ離れになった感情を
かき集めても
どうにも色彩は戻らない
いつだってそうだ
なぜ言葉は心を殺すのだろう
【くらげ】
満たされないもの
浮かび上がってくるもの
ぽこぽこ生まれてくる虚飾のくらげ達
透明な血を通わせて
どこまでも傘を伸ばして
夜の底に漂う
いつの間にか取り囲まれていた
毒はない あるのは痛みだけ
どこまでも言葉を並べ立て
その度に現れ 昇っていく
僕の中から溢れてくる くらげ達
あれはいつだったろう
始まりの瞬間 もう思い出せない
思い出せない