第3話
「バニラ、行くよ」
エンペラーウルフにバニラと名付けて共に生活しだして数ヶ月、季節は冬になっていた。
たまに雪がチラつく程度には降るがこの辺はしっかり積もる程では無いようだ。
季節の進みや一年の長さは日本とほぼ同じで、日本なら割と暖かい場所に近いような気候だと本にあった通りだ。
近くの村までは徒歩で4日程、そこからそれなりに大きな街までは更に3日程かかるらしい。
アニャの親は近くの村の人で、森での作業をする時は一月以上泊まり込みでこの家に住んでいたらしい。
アニャが転生して気がついた場所がこの家だった為、ここが向こうの世界と繋がってると思いこの家を残したようだった。
残された本の中に、ここに現れた星の民へのメッセージがあり、その中にはまずは一年、人のいる場所に近づかないように書かれていた。
半兵衛がここを去ってから100年以上たっているし、アニャは更に前だ。
近くの村や街がどうなっているのかわからないが、ハルキはとりあえず指示に従っていた。
2人の残したメッセージにはまずここで一年修行しながら過ごしてある程度の能力を持ってからじゃないと他の人間に接するのは危険だと言うことだった。
その為の修行の方法やこの辺りでの生活の手引きは残されており、ハルキはそれを守りながら日々を過ごしていた。
この家の近くの森を散策して動物を狩り、果物や木の実を集め、岩塩や鉱物を掘り出す。
家に戻って食料を保存加工して、畑を耕す。朝晩にバニラと共に修行をする。
そんなある日、今まで来た中で一番家から遠い場所に差し掛かった時にそれは起こった。
「ドンッ!!」
見えはしないがそう遠くない所から大きな衝撃音がした。
少し離れた所にいたバニラを呼び寄せたハルキは状況を確認すべく気配を消しながら音のした方に近寄って行った。