第1話
「フー、ちょっと休憩するか」
ハルキがこの世界に来てそろそろ一ヶ月がたった。とりあえず食事には困らずにいた。
『異世界見聞録』を見た後、周りにある読めなかった本を順番に手にしたハルキは様々な情報を手に入れる事が出来た。
まず、この家の前の住人は半兵衛さんだが、その前にも元の世界から来た人が住んでいたという事。元の世界から来た人はこちらの世界では「星の民」と呼ばれ、ごく稀にこちらの世界に現れるという事。
星の民は高い能力を持ち、場合によっては国家の行先までも左右する存在とされているという事。
星の民が持つ能力は人それぞれだが、こちらの世界に来た者皆が初めから持っている能力もあるという事。それが言葉や文字の覚え方と簡単な生活魔法、鑑定等々。
この辺の情報は全部半兵衛さんの前の住人であるアニャって人が書いたり集めたりした本の中にあった。
彼女は「踊る大賢者」と呼ばれ、数多くの危機から世界を救ったらしい。彼女はこちらの世界に来た時は記憶を持ったまま小さな子供になっていたらしく、その生家がこの家の様だ。
彼女は自分みたいな星の民がまたこの場所に現れるんじゃないかと思い、この小さな家に出来る限りの結界を張り、情報を残しておいた。
半兵衛さんもその意思を継いで道具やなんか色々取り揃えていた。
とにかく星の民の先人達のおかげでハルキはなんとか飢えずにいる事ができていた。
特に生活魔法で火を起こす事が出来るのと、鑑定で植物が毒を持つかどうかなどがわかるのがありがたい。
家の前には森が広がってるが裏手側にはちょっとした農地のような場所があり小川が流れ、小さな小屋もある。その辺りまではアニャの結界がまだまだかかっている様だ。
ハルキは森に入り、果物や食べれそうな植物を獲り、アニャや半兵衛の残した地図にある街に向かう方向へ行動範囲を広げていった。農地の整理と育てられそうな植物を森から持ってきては植え、少しずつだがこちらの生活にも慣れてきた。
そんなある日の森でちょっと休んでいたハルキの前に小さな生き物が飛び出してきた。