【短編】『ストレンジゼロ』売りの少女~その後のアンネ=マリアの生活
『ストロングゼロ』売りの少女の続編。祖母のレシピを魔改造した先にあるものは……
ロックシェルの街に今日もアンネ=マリアがやって来る。一度は『ストレングゼロ』が密造酒扱いされ路頭に迷いそうになったのだが、今では『ストレングゼロ』を用いた狩りの獲物の肉を顔見知りの酒場に卸したり、ちょっとした川や沼で『ゼロ漁』を行い生計を立てている。
『ストレングゼロ』はお酒ではなく「調味料」「添加物」として酒や料理に使用されるようになり、「酒ではない」ということで法の網の目を擦り抜けている……いや、違法じゃないから合法だ!!
「ふぅ、ただいま戻りました」
「お帰りー」
「お帰りなさい、アンネさん」
祖母と二人暮らしであったロックシェル郊外の庵に彼女は祖母の死後、ただ一人暮らしていた。薬師である祖母が残してくれた全財産がこの少々古ぼけた錬金工房であったからだ。とはいえ、アンネ=マリアは『見習薬師』のそのまた卵に近い存在であり、ストレングゼロ以外に、たいした換金性の高い物を作ることは出来なかった。
その工房に訪れる二人の客は、たまに数日を共にし、女性の冒険者はアンネに薬師や錬金術のことについて少しずつ教えてくれている。
女性の名前はオリヴィ=ラウス、男性の名前は……通称ビルさんだ。
二人は高名な帝国の冒険者で、オリヴィは魔術師、ビルは魔剣士・戦士だという。ロックシェルの周辺で冒険者活動をする為に、メインツからやってきたのだ。
『ストレングゼロ』の話をロックシェルで聞いたオリヴィがアンネの工房を訪ねてきたのが出会いのきっかけであり、ニ三日滞在しては祖母の残したアンネの作れないレシピを解析し、二人で新しくポーションを作成することがあるのだ。
アンネも祖母の作った物を再現したいと望んでいたが、一人では何年かかるか見当もつかなかった。古の帝国の文字も読めないものの方が多く、読めたとしても書いてある内容を理解することも難しい。
実際、『師』となる者がいなければ、書物を読んだだけで再現できるほどアンネの薬師・錬金術師としての能力は足りていない。
本来は門外不出・一子相伝の『森の魔女』の知識なのだが、アンネが抱え込んでいても宝の持ち腐れになってしまうどころか、彼女の代でその知識が失われてしまいかねない。そこで、アンネはオリヴィに相談し、レシピを公開する代わりに、共にその再現を試みて欲しいと頼み、オリヴィは快諾し今のような関係となっている。
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今日のロックシェルは何時もと変わらず……異端審問の為に兵士が街中で逮捕状を発せられた貴族や商人とその家族を連行する姿が見られたという話をオリヴィとビルに話をしながら、オリヴィの作ってくれた夕食を三人で食べている。
数年前、祖母は存命の頃からネデルの新しい領主となった神国国王とその代官であるネデル総督は、ネデルから沢山の税金を集めるために様々な新税を設けるようになっている。
その税金は、ネデルと関係のないと多くの住民が感じている、神国の新しい植民地への派兵費用や、サラセンと戦う軍船や兵士を雇う金へと費やされている。
神国本国から一万人以上の新しい兵士を連れて新総督である神国の老将軍が着任したのがつい最近。兵士だけではなく、異端審問官たちも引き連れてきた老将軍は、国王の命に従わない者たちを「異端者」として収監し、『異端審問』の末に火刑に処している。
一年余りの間にネデルの沢山の貴族が逮捕され収監の後審問にて異端と判断され火刑に処せられている。逮捕状を発せられた物は一万人、当然、隣国に逃げ出した者も少なくない。
いなくなった貴族・商人に代わり、沢山の兵士がネデルで活動するようになっている。その多くは傭兵であり、ネデル人の納めた税からその費用が賄われているというのは心に来るものがある。
「空気がどんどん悪くなっています」
「そうね。必要なとき以外ロックシェルには近づかない方がいいわ」
今までは樽が大きかったという事もあり、二日に一度足を運んでいたアンネだが、今は「調味料」ということもあり、蒸留したままの状態で小さな容器に収めて渡している事もあり、頻度は週に一度程度に収まっている。
狩りの獲物があった時は、それとは別に納めに行くのでもう少し頻度は多くなるのだが、金銭的には『ストレングゼロ』の販売で問題なく生活出来ているので、むしろ安全を考えれば足を運ばない方が良いのかもしれない。
「今は『異端者』を捕まえていますけれど、『魔女狩り』が起こってもおかしくはない空気でしょうから。あなたは小さい女の子とは言え、森の中で一人暮らす独身女性です。『魔女』であると言いがかりをつけられないとも限りませんからね」
ビルの言う『魔女』というのは、御神子教が広まる以前に精霊や地の神様を祀り、その恩恵を民に与えていた女性たちのことを示している。精霊の『加護』を持ち、民を代表してその地に住まう目に見えない存在との関係を築く役割を担っていた。
御神子教が広まり、精霊や地の神様を信ずる者が減り、力が弱まってしまった結果、精霊の力を生かす事ができる加護も弱まってしまった。その力を補うために、薬師や錬金術師としての技術を磨いて今のように山野に隠れ住む野良薬師として活動しているのだ。
ところが、自分たちが恩恵を受けているにもかかわらず、その存在を自ら忘れてしまった者たちが精霊や地の神様の力を『悪魔』の力だと言い始めたことから野良薬師は『魔女』とされることも少なくない。
これは、御神子教が広まる過程で『宣教師』と呼ばれる御神子の祀る神以外を認めない狂信者が「我らの唯一の神以外は、神の信仰を揺るがせる敵対者である『悪魔』である」と信徒に言い含めたからである。
野に生える草を調合し、病を癒す野良薬師の姿を見て感謝するどころか「病を治すことができるなら、病にする事もできるはずだ」と考え、病気や不幸を野に隠れ住む独り身の女性であることが多い野良薬師のせいだと決めつけた集団心理を生み出したりする。
守ってくれる者もいない野良薬師は、飢饉や自然災害などの不幸が起こりその不満が高まった時にやり玉にあげられリンチされ処刑されたりすることもあるのだ。
「まあ、ここまで来るのは大変だから、ロックシェルからわざわざ来ることはないだろうしね」
「近隣の村もありませんし。交流も全くありませんから問題ないと思います」
時折、森の中で猟師と会う事もあるが、基本的には没交渉であり、アンネの仕掛けていない罠を見つけた場合、暫くその周辺に足を運ばないように努めている。
祖母が生きている間に、ロックシェル以外に足を向けない理由を聞いたとき、祖母は少し考えてこう言った。
「お互い関わり合わない方が身の為って事だね。それに、助けを求められたとしても何もできないと断るんだよ。下手に情けを掛けると、禍になって帰って来るのが農民って奴だからね」
祖母もその昔、いやな経験があったのかもしれないとアンネは思い出していた。
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この世界には魔力があり、魔力を用いて様々なことができる人たちがいる。それは、貴族に多く平民には非常に少ない。また、持っている魔力量も全く異なる。貴族は魔力を持つ血をどんどん取り込んでいき、平民でも魔力を多く持つ者は養子にするなり、婚姻して身内に取り込むなりして貴族の一部としていったからだという。
その中に、魔力量が多すぎた上にその放出が間に合わず病気となる人がいる。『高魔力圧』等と呼ばれ、突然昏睡状態になったり、高熱を発し体が麻痺したりすることになる。その結果、亡くなる方も多い。
高魔力圧の対応は、魔力を体内から上手に排出することにある。適度に魔力を使い、身体強化や常時発動系の魔術を使用することで問題なく生活できるのだが、魔術の教育を受けていない乳幼児であれば、発症する事が命取りとなる。
ほとんどの魔力持ちの子供は、魔力を用いる事で魔力量が成人の頃まで暫時増加する。つまり、魔力を持っていたとしても使わなければ量が増えず高魔力圧症となることはない。ほとんどが、高名な魔術師が高齢となり魔術を使う頻度が低下して発症するので、年齢を重ねても魔術を定期的に用いる事が魔術師の健康の秘訣であるという。
高魔力圧となる魔術師はケガなどで身動き取れない状態で魔術も使えない場合『急性高魔力圧症』となることもある。また、ごくまれに生まれつき魔力の高い乳幼児も発症し、多くの場合亡くなってしまうという。
アンネ=マリアの祖母の薬のレシピの中に、その高魔力圧症に効果のある物を見つけたのは偶然であった。
「原理は分かるんだよ。でも、素材が足らない」
「マンドラゴやアルラウネは動かない魔物ですからね。探し出すのも厄介ですし、かなり高ランクの存在です」
素材に欲しいのはアルラウネの蔦なのだ。幸い、祖母の素材庫の中に何度か作成する分素材はあったものの、それ以上は新しく素材を確保しなければ難しそうだ。
「先ずは作ってみましょう」
「は、はい!」
高魔力圧症で苦しむ人は高位魔術師か高位貴族の幼児が多い。つまり……
「お金になるということですね、ヴィー」
「まあね。それに、お金じゃ買えないコネも伝手も生まれるってこともあるのよ」
アンネ=マリアの知らない世界の話を聞きながらそんな事は自分とは先ず関係ないと思いつつ、祖母との思い出のレシピを作るのであった。
そのポーションの名前は『レンジゼロ』という。魔力を体内から強制的に体表へと排出し、その効果は体全体を『魔力壁』で覆うような効果があるという。
これで魔力を用いた不死身の盾を手に入れたと思わない方が良い。高魔力圧症になり、生死にかかわるほどの圧となる魔術師であれば、魔力圧を抑える事になるのだが、魔力量が並みの健常な魔術師が用いれば、魔力の強制排出は『低魔力圧』状態となり、貧血や昏睡と似た症状をもたらす。所謂『魔力切れ』が急速に訪れる。
「ふふ、これで金貨百枚は固いわね」
「き、金貨百枚ですかぁ!!」
金貨百枚というのは、平騎士の年収の凡そ十年分、兵士であれば生涯年収に近い金額だ。大きな商店の取引や国単位の予算でなければ、まず扱われる事はない。そもそも、金貨自体、日頃見ることはない。見るのは精々金貨の十分の一の価値である小金貨だ。
「それはそうでしょう。高魔力圧で命の危険にさらされるのは高位貴族や王族の乳幼児ですもの。子供の命を守るために、金に糸目は付けないからこのくらいは最低だと思うわ」
他にも封土や陪臣貴族として召し上げられる可能性すらあるという。
「ほんと、魔女だ悪魔の手先だっていう無知蒙昧な農民もいるけれど、人の命を救ってきたのは御神子の司祭たちではなく、野良薬師だってわかっている人は少なくないのよね」
「はぁ……そうなんですね。それなら……嬉しいです」
彼女の祖母もそのまた祖母も野良薬師であったという。アンネの中で『魔女』呼ばわりされる事もある血筋を考えると、時に憂鬱となることもあったのだが、誇りをもって生きていけると……そう強く思えた。
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オリヴィとビルが旅立ち、再びアンネは一人となった。けれど、彼女にはやりたいことがあった。
「この、アルラウネの代わりに、マンドラゴをつかえないかな」
不足しているアルラウネは植物の魔物だが、マンドラゴの亜種であるとされる。マンドラゴは様々な治療に用いられる素材なのだが、主に魔力を活性化させる効果があると考えられている。
『低魔力圧』であればマンドラゴを用いる事で、体内の魔力を活性化し状態を回復させることができる。状態異常回復のポーションにはマンドラゴが使われている事が多いのだ。
これは、毒消しや麻痺回復の効果を『毒の中和』ではなく、身体の持つ治癒能力を魔力を持って回復させるのである。
魔力の活性化を何かの素材を加えて『不活性化』に反転できないか……など、野良薬師見習のそのまた卵が考えるべき事ではないのだが、アンネはオリヴィとの会話の中で『魔女の係累』としての誇りを掻き立てられ、分不相応な試みにチャレンジしているのである。
「で、できたかも……」
いくつかの素材を引き、そして効果を反転させる素材を加え、新しい
ポーションが完成した。
「『ストレンジゼロ』……と名付けましょう……」
こうして、怪しげな新レシピの効果を確認するために、彼女はいくつかの実験をする事にした。例えば……麻痺毒を用いた鏃で倒した猪に『ストレンジゼロ』を与える。勿論、縛り上げたうえでなのだが、あっという間に麻痺の効果を打ち消してしまった。
また、失血性の毒、溶解性の毒に関しても問題なくその効果を消してしまう。回復することはないのだが、毒の効果がある状態で回復ポーションを与えたとしても、体力は回復するが毒の効果が継続する間は効果が相殺される。
確認してみたところ、毒・麻痺だけでなく、精神衰弱や混乱、昏睡といった精神的な異常にも効果があるように見られた。可能性的にではあるが、継続して効果のある『異常』を回復させる効果があるのではないかというのがアンネの推論だ。
これは、体内の魔力や生命力を活性化させることで、『異常』を『正常』に回復させようとする向精神的なものではないかと考えている。
「可能性なんだけど……」
例えば指や眼を失ったばかりの状態であれば、『正常』に戻ろうとする精神の効果で、回復薬と併用することで指や眼のような小さな部分は回復するのではないか……というのである。
それに、内臓の病気等であれば、患部を排除し回復薬とストレンジゼロの併用で『正常』な内臓が復活するのではないかと考えられる。病気をポーションで回復することは出来ないとされるが、病気の幹部を切除するのは『怪我』と認識され、回復薬では不足する能力をストレンジゼロで付加し『正常』な状態に回復させるのだ。
「なんかやばい物作っちゃったかも……」
アンネが想像する通り、これはかなりやばい物なのだが、オリヴィが再び訪問するまで、この成果はしばらく放置することにした。十二歳の世間知らずの少女に判断するには、『ストレンジゼロ』の効果が非常識なものに思えたからだった。
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「うーん、面白いものだね!」
「……ど、どちら様でしょうか……」
「怪しい者ではありません。ルーン商会のアイネと申します。ヴィーちゃんとお話して、アンネちゃんが面白い子だって聞いて訪ねてきました」
「は、はい。オリヴィ先生のお友達ですか。よろしくお願いします!!」
アイネはオリヴィの友人で、アイネ曰く「親友だよ☆」ということである。手紙を持たされており、王国の有名な商会の会頭夫人であるから取引に関しては安心して欲しいという事が書かれていた」
「もしかして『レンジゼロ』のことでしょうか」
「そうそう。いやぁー 高魔力圧のお薬ってないからね。王国でも需要はあるだろうから、少し買わせてもらえばなって」
「はい……今なら……二本くらいならお譲りできます」
「ありがとね。じゃあ……」
アイネは魔法袋からポンと金貨百枚入りの革袋を二つ取り出した。
「ま、マジックアイテムですか!!」
「そうそう。でもこれ、持っていると少しずつ魔力を使う物だから、魔力持ちじゃないと意味ないよ。それに、持っているのがバレると危険だよ」
非常に高価なものらしく、金貨百枚は下らないという。商人でも軍人でも持っている物はとても有利になるので、アンネのような身寄りもない子供が持っていることを知れば……非常に危険だという。
それでもアンネは欲しいと思った。いつかこの庵を出て世界を周り、色んな事を学びたいと考えていたからだ。その時、この家にある祖母の残してくれた書物や機材は出来れば持って行きたいと考えていたからだ。
魔法袋がどのくらいの容量があるのかはわからないけれど、一部屋分くらい収納できるのならお釣りがくるくらいだ。
「うーん。何なら、金貨百枚分を魔法袋と交換しようか?」
「い、いいんですか?」
「うん。私にはいくつか手持ちがあるし、王国に帰れば作ってもらえるから問題ないよ!!」
「ぜ、是非お願いします」
アンネは「やった! やった!」と内心小躍りしていた。魔力は少しずつ増えているとオリヴィにも言われているし、魔法袋を身に着けていれば日頃から魔力を鍛錬している効果があるとも聞いているからだ。あと何年かしてここで出来る事がなくなれば、庵をたたんでオリヴィ達のように旅をしながら修行するのも楽しいかもしれない。
その為には、自分の身は自分で守れるようになりたいとも思う。
「そうか……色々伝手はあるし、ヴィーちゃんにも相談してみたらいいと思うよ。それに、王国へ行くなら『リリアル学院』を訪ねてちょうだい。王都の南に半日くらいいった場所にある魔術師や薬師になりたい子供が勉強している場所だよ」
王国の貴族の子供が通う「大学校」のような場所かと思ったアンネは詳しく聞くことにした。ネデルにも大聖堂付属の学校やメイデン大学のような研究施設がある。そこは、大概貴族の子弟が学んでいるのだ。
「違うよ。王都の孤児院から魔力のある子を誘ってきて育てているんだよね。まあ、アンちゃんも王国の子なら入る資格ありだね。というか、是非おいで☆」
孤児院の子の中の魔力持ちを魔術師に育てる……確かにアンネは今は天涯孤独の紛れもない孤児である。
「い、いつか必ずたずねます!!」
「そうだね。いつかと言わず、ロックシェルが危険になれば王国に逃げておいで。その時はここも危険だろうからね」
「そ、そうします……」
孤児でも学べる場所があると聞き、とても心が明るくなったアンネ。その場で、アイネは紹介状を書いてくれた。
「リリアルは私の妹ちゃんが院長先生なんだ。リリアル男爵って知ってる?」
アンネは貴族の名前など知らないので首を横に振る。
「じゃあ、『妖精騎士』って聞いたことない?」
「あのお芝居とか物語のですか……知ってます」
「そのモデルのリリアル男爵が我が愛しの妹ちゃんなんだよ☆」
アイネは妹の自慢話を始めた。最初はうんざりした気持ちになったが、やがて海賊と戦って船を奪い取ったり、竜と戦ったり、三千のスケルトンの大軍に向かって一騎駆する話に胸が熱くなる。自分もそんな冒険がしてみたい……とは思わないが、やはり物語になるような経験を少しはしてみたいのだ。
すっかり王国に向かう気になっているアンネは、思い切ってオリヴィに相談するつもりであった『ストレンジゼロ』のことをアイネに相談することにした。
話を聞いたアイネは「売れそうだけれど危険だね」という。
「そんな何でもなおしちゃうポーションがあったらさ」
「はい」
「毒を仕込んでおいて、自分も安心させる為に飲み食いするじゃない」
「はい」
「それ飲んで、自分だけ助かる……なんて暗殺もできちゃうよね。絶対、どこかに収監されて作り続けることになるんじゃない? ここから旅に出るなんて夢のまた夢になるよね」
「あー!!!」
そう考えると、途端に現実に引き戻され、膨らんだ胸が急激にしぼんで行くように感じる。
「でもさ、例えばだよ……」
アイネ曰く『ストレングゼロ』や二日酔いに聞く程度に希釈して「酔い覚まし」として今の売っている店に卸せば危険はかなり低くなるのではとアイデアを提供する。
「騎士なんかはいつ呼び出されてもいいように嗜む程度にしかお酒は呑めないんだよね。でも、それがあれば……」
「安心して沢山のお酒が飲めます。酒場の売り上げが上がります」
「正解☆ だから、そんな感じで手を広げないで売り方も限定してあげればいいんじゃないかな」
もっともだと思い、アンネは『ストレングゼロ』を勧めている酒場に『ストレンジゼロ』を酔い覚ましとして提案してみた。
だがこの時、ネデルに起こった『ノインテーター』に支配された狂戦士の軍団に『ストレンジゼロ』を持って立ち向かう事になると、アンネには思いも寄らない事であった。
本作とリンクしているお話。『妖精騎士の物語 』 少女は世界を変える
本作の前のお話『ストレングゼロ』売りの少女
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