あれ?待って、幸先良すぎない??
あまりの寒さにさすがの私でも、行動不能になり、ようやく見つけたログハウスの前で疲労もあってか倒れるように眠ってしまったのだけど、運の良いことにログハウスの主人である少女に助けられた...ここまでは理解した。
けど、何て?
「一日ぐらいはかかるね。」
とか言われたんだけど!
私達、数時間でダウンしたのに一日もかかると!?
「...大丈夫そうかな~?」
ああ、失礼。
「すっかり忘れてた。えっと...この国って昔からこうなの?」
少女は首を横に振る。
「そんなわけないよ~。ここはそんなに寒くなかったんだって。」
ふーん。
「それより~、何でアルフェリスに?」
...信じてもらえるかなぁ?
「神候補の人間を捜してるの。」
「は?神って...何を言って...?」
んん?
「あの、大丈夫...?」
ありゃ?
「待って、最寄りの医者は確か.....」
.....あれー?
「もう大丈夫だからね?安心して寝てて。医者呼んでくるから。」
...ふっ。
「ルシアー!?」
「へ!?どうしたの!?」
『あぁ、ハイハイどうした?』
「話が違ーう!!」
『何が?』
「何が物分かりの良いだよ!」
『えぇ?...そう言われても...あ、簪ある?』
...は?な、無い!?
『それがないとわからないよ?』
「ちょっと、簪ある?」
「えっ...?あの髪飾り?ちょっと待って。」
あの子、部屋を出て行っちゃった。
あ、戻ってきた。って、雷亜君?
「いつまで寝てたんだよ!馬鹿!!」
え?えぇ~!?
「今回は助かったけど、危うく死ぬところだったんだぞ!?」
え?いやいや...え?
「何で怒ってるの!?え?そんな睨まなくても...」
「はぁ!?目の前で死にかけられてそれをどうしようもなくて...何も出来なかったおれの身にもなれよっ!!」
あ、少し涙目になってる。
仕方無い...。
頭撫でてやろうかな。
「?!」
「ほら、死んでないよ?生きてるから。ね?泣かなくてもいいよ。」
「泣いて、ない、やめろよっ、見る、なよ...!」
よーしよーし...何か、犬みたいだね。よく見るとかわいいなぁ。
「...そろそろい~い?」
あ、
「ごめんね?」
「...仲いいね~。」
「ソウダネ。簪は?」
はい、と手渡された簪は少しひんやりしていた。
「で、さっきの候補者の話は本当なんだよ。」
簪で髪を纏めながら話す。すると、
「へぇ、そうなんだ。何の神様なの?」
あ、成る程ね。簪が無いと信じて貰えないのね?
「おい...そろそろ、離せよ.....」
「いや、つい。撫で心地が良くて。」
「...ん.....」
「あのさぁ...目の前でやめてくれない~?」
「「ごめんなさい。」」
「それで、どうやって捜すの~?」
「そこの鞄を取ってくれない?」
確かこの辺りに...あった。
「地図...と、ペンデュラム?」
「さて、よーく見てよ?」
ペンデュラムをアルフェリスの辺りを動かしていく。
と、
「色が...?」
ぼんやり黄色に光った。
ここは?
「って、どこ?」
「ここはどこかわかるか?」
雷亜君が少女に聞く。
「?.....え?え~、っと...ここ、だねぇ?」
「「はい?」」
ん~?
........。
「他に誰か居るの?」
「ここには私と、ソリを引くイヌしかいないよ?」
oh...なるほどね?
「犬の所に案内して?」
まさか...そんなわけ無いよね?
「わふっ」
大型犬の前に案内された。
ペンデュラムを手にのせて差し出す。
「?」
...首を傾げないでくれない?
う...目をキラキラさせないで.....。
「お手できる?この子達。」
少女は片眼を瞑った。
「お手。」
「わふ。」
ペンデュラムに.....反応無し、かぁ。
「んー、デスヨネー。」
一応、約10匹の犬に触れさせたが反応無し。
この子達、中々指示を聞いてくれないから20分程かかった。
つ、疲れたぁ~。
念の為とはいえ、ここまでの苦労が水の泡になったような感じが...。
「はい、犬は反応しませんでしたー!」
「だろうな。」「だよね。」
うっ、二人共...ちょっと傷付いた。
まあ、それは置いといて。
「となるとだよ?残るは君だけという訳だ。」
赤髪の少女にペンデュラムを差し出す。
「.....ぁ。」
んん?何か気不味そうだね。
「いや、なんでもないよ。ただ...」
「私にはやらなければいけないことがあるから...何ていうか、少し不味いというか...。」
赤髪の少女は苦笑いを浮かべた。
うーん?
ちらっと雷亜君に目配せ。
「拒否権は」
「無いぞ?」
お、わかってくれた。ノリ良いね、君。
少女は唸った。
「...なら、条件をのんでくれたら君達を手伝うよ〜。」
それでも駄目かな?って訊いて来る。
むむむ、その条件次第なんだけど...。
「とりあえず、条件は?」
少女は一呼吸置いて、
「この国に居座る紅き邪竜を、討伐し、王家の呪いを解くこと。」