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プロローグ 乙女ゲームの悪役令嬢

 私、シャルロット・エスカルドは8歳の誕生日、ひどい高熱に浮かされていた。体中は拭いても拭いても汗でびっしょりになり、絶えず水分補給をせざる得ない状態に。

 もちろん、こんな状態では外に出歩くことなどもってのほか。もともと痩せ気味だった身体は枯れ木のようにやせ細る。

 そんな苦しみの中、私は夢を見ていた。



 私の身体が半透明になり、ぷかぷかと宙に浮いている。ここの部屋の主だろうか、20代くらいの女性が白い袋に入っていたカップにお湯を注ぎ、砂時計で時間をはかっている。そのわずかな待ち時間に、面妖な機械の電源をつけると動く絵が映し出される。


『幻想のアルカンディア』


(アルカンディア? あれは……)


 大いなる昔、アルカンディアと呼ばれる神が人々と共に災厄の獣『アビス』を打ち倒したことから、私たちの祖先は神の名を忘れないよう、自分らが住んでいる世界をアルカンディアと名付けた。


(しかし、それを幻想と罵るとは……私に実体があれば、すかさず殴るというのに)


 先ほどから、床に散らばったものを拾うとしてもすり抜けてしまうことから、今の私は精霊と似たような霊体であると仮定している。


「ついパケ買いしたけど、楽しみっすね。ここのゲーム会社はするめげーor糞ゲーメーカーっすから、どれだけ罵っても問題なしっす」


(ゲーム……つまり、遊びというわけですわね。本当、この者に罰が当たらないかしら)


 ちかちかと映る画面に流れる長いムービーを、カップ麺を食べながら見ていき、操作可能なチュートリアル画面になっていく。そして、しばらくすると、年は違うが自分と同じ金髪ロールの同姓同名の女性が映し出される。


「あ~、今回の悪役令嬢枠はこいつっすか。どうせ死ぬことが決まっているんですけど」


 女性はぽちぽちと操作しながら、不思議な力を持つ女の子が登場していく男子との好感度を上げていく。その過程でゲームのシャルロットが私と同じ四属性の魔法を操る少女であることから、ますます違う人間には思えない。


(悪役令嬢? この操作している女の子から見れば、悪役かもしれませんが、常識のない態度ですし、多少度が過ぎていることもありますが、それくらいのことはされて当たり前ですわ)


 そして、物語中盤に差し掛かったところで婚約者レオンハルトが一方的に婚約を破棄し、女の子と婚約を結ぶ。


(以前、同名の公爵家の跡取り息子とお会いしましたけど、その人と同一人物なら、家柄に傷つきますわよ)


 そんなことはお構いなしに、話が進む。その日をきっかけに自分と同じ名の女性は歯車が狂ったかのように、何もかもうまくいかず、次第にはアビスの復活の一端を担ってしまう。

 そして、私と一体になったアビスを打ち負かし、エスカルド家の一族は打ち首に、女の子はレオンハルトと仲良く暮らしたと語られゲームは終わる。


 女性がリセットして他の攻略キャラも堕としていくが、最後はアビスになった私を倒して終了なのは変わらない。

 そんな様子を見て、私はわなわなと怒りに震えていた。


(たとえ私たちの世界がゲームの世界であろうと、父さま達をギロチン送りになんかさせませんわ!)


 私は決意する。


 悪魔が作ったこのふざけたシナリオを破壊すると。


 そして、封印されていた災厄の獣アビスを打ち倒し、登場人物が最後は笑って暮らせるハッピーエンドを目指すと誓った。

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[一言] 先に「白い袋に入っていたカップにお湯を注ぎ」とあるのに、次には「ちかちかと映る画面に流れる長いムービーを、カップ麺を食べながら見ていき」と白い袋に入ったカップから、急にカップ麺とだと名前が分…
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