第二話:ダチョウ肉のステーキ1
一年以上お待たせした「さむらいお肉旅」の続きです。
第二話:ダチョウ肉のステーキ
「暴れ鳥だぁ!」
早朝の御殿場近くの街道で声があがった。
旅行く人々が驚いて悲鳴をあげながら逃げ惑う。
突き飛ばされた巡礼の老婆が地面に倒れ込み、顔をあげると、そこには異様な「鳥」がこちらに向けて土煙をあげながら突き進んでくるところだった。
空を飛ぶ鳥ではない。太く長い日本の脚で疾走してくる、鶴の出来損ないのような姿。
駝鳥という。
22代将軍徳川家鬱の趣味が高じてこの頃の日本にはすでに「ダチョウ牧場」が作られていた。
最初にきた十二羽は今や千羽近くにまで増えて、その育成費用だけでもとんでもない金額が出ているが、その巨大な卵(げんのうで割ってもなかなか壊れない殻を持つ)にはとてつもない強壮作用があると言われ、珍重されていて、年に十数個が将軍家に、残りが京都の帝へ送られるという。
普段は大人しい鳥だが、牛馬と同じく、突発的なことに慌てふためき狂騒してしまうのは共通だった。
「ひええええええ!」
老婆は転んだ拍子に足首を捻った上、見たことも亡い奇怪な動物が自分目がけて突っ込んでくるのをみて腰を抜かしてしまった。
こうなるともう動けない。
枯れ木のような老婆など、駝鳥の脚の一蹴りで粉々に砕け散る……と誰もがそう思った時。
ふらりと肉厚で幅広の身体が老婆の前に出た。
「すまんな」
呟いたのは老婆にではなく、狂奔してくる駝鳥に対してだった。




