第20話 罪という名の足枷
「はあ……はあ……はあ……」
体が弾け飛び、サクラザカの目の前には自分の下半身があった。
「あああああああああああああああ!」
サクラザカは必死にその下半身を元の位置に戻す。
「……落ち……着け。冷静に……なれ」
左手に噛みつき、血を吸う。すると、しだいにその体が治っていくのがわかった。
だんだんと気持ちに余裕ができ、周りの状況を確認する。
「…………」
サクラザカは貧血気味になりながらも立ち上がり、光の槍を作り出す。
そして、目の前に倒れるグロウブを見つめる。彼は頭から血を出していたが、まだ息があった。
「……残念です。あなたの覚悟は無駄に終わった」
そのグロウブにその槍を向ける。
「……さようなら」
その槍をグロウブに撃ち込む。
その時だった。
「っ!?」
ドゴオオオオオオオオっ!
背後から強烈な蹴りが向かってくる。それを直感で捉え、サクラザカは槍で防御する。
「これは!?」
「よお。サクラザカ!」
その勢いは明らかにあの『物体を移動させる能力』によるものだった。
タクトはサクラザカに蹴りを入れると、メルメルを抱えながら地面に降りる。
……どうやら、タクト自身の体に能力を与えて、『浮かせる能力』の影響を受けないようにしているようだった。
「ずいぶんと可愛らしい見た目になってんじゃねえか」
「……お互い様……ですよ」
タクトは首を傾げる。そんな彼の腕からメルメルは離れ、言う。
「……兄さん……自覚……あんまり無い」
「あ? そうか?」
すると、タクトは地面に倒れるグロウブを見る。
「……わりいな。遅くなっちまって……。もう少し赤髪の男よりもサクラザカの方を優先してれば……」
そして、脚に力を込める。
「だが……絶対にお前を助ける。サクラザカをぶっ殺してな」
瞬間、能力を使い、一気にサクラザカへの距離をつめる。
「……くっ!」
タクトの能力に対して、氷結晶の武器を使うのは非常に効果的である。
しかし、氷の剣は空中に浮かび、弾丸はジェナに渡して、サクラザカ自身はそういった武器を持っていなかった。
「おらよ!!」
近づくやいなや、タクトはサクラザカに殴りかかる。
瞬時にその拳に対して、小さなシールドを展開する。
だが……。
「おいよお。同じ技が通用すると思ってんのか?」
「……っ!」
タクトは突然、攻撃を蹴りに変える。
「しまっ……」
サクラザカはタクトの蹴りをもろに腹に食らう。
「うぐっ!」
まだ治りかけだった腹に激痛が走る。
「おらよ! 吹っ飛びな!」
その蹴りはサクラザカをはるか遠くに吹き飛ばした。建物を破壊し、砂ぼこりが街に舞う。
「……兄さん」
「あ?」
メルメルは狙撃銃を取り出し、弾丸を装填する。
「兄さんは……直接、とどめをさして……。兄さんが向かうまで……」
そして、その銃をサクラザカの方向に向ける。
「援護……する……」
「……おう。了解だ」
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「がっ……はあ……」
腹から血が溢れる中、サクラザカは意識が遠くなるのを感じる。
「……まだ……まだ、死ぬ訳にはいかないんだ」
力を振り絞り、起き上がろうとする。
しかし……。
バギュンっ!
「うぐっ」
脚を弾丸が貫く。バランスを崩し、再び地面に倒れてしまう。
「……ああ」
遠のく意識の中………サクラザカはとある人物を思い出す。
…………。
…………。
「姉……さん……?」
幻覚だろうか? 彼は目の前に自身の姉の姿を目にした。
――ねえ。どうして、あの時私を助けてくれなかったの?――
「……えっ?」
――ねえ。どうして?――
「……なにを……言って……」
その姉はサクラザカに近づき、彼の頬に触れる。
そして、ただ無表情でサクラザカを見つめる。
――残念……。結局あなたは……――
目を見開いた姉は、ゆっくりとそれを言う。
――無様ね――
「あっ――」
瞬間、サクラザカの中で何かが切れた。それと同時に姉も消えてしまった。
「ぐげごがががぐががががががががぎぐごごがががが!!」
そこにタクトはやってくる。
「なんだ……? こいつ」
「うう……うはあ……ごめん……ごめんよお」
関節をめちゃくちゃに動かし、白目を向くサクラザカがいた。
「ごめんなさい……ごめんなさい……」
「……早くけりをつけた方が良さそうだな」
タクトは能力を使って、サクラザカの方に走る。
その直後だった。
「ゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイ!!」
「っ!?」
サクラザカが叫ぶと同時に、大量の光の玉が発生する。
一気にその光の玉は四方八方に弾け飛ぶ。
「……ちっ。グロウブに近いな。こりゃあ。……ここまでめちゃくちゃじゃなかったがな」
「……ううああ。アリアあ。あああ」
呻くと、サクラザカはタクトに向かって飛んでいく。
「あ? ずいぶんのろい動きだなあ!」
タクトの蹴りがサクラザカの頭部に直撃する。
「……っ!?」
蹴りでサクラザカの頭が弾け飛んだ。それにも関わらず、サクラザカはタクトに向かってくる。
「こいつ!」
――意識が無いのか。吸血鬼の本能のみで動いて――
バゴっ!
サクラザカの拳がタクトの腹を襲う。
「くっ……」
このままだと身体強化をされ、腹が貫かれる。
バギュンっ!
だが、そのサクラザカの腕が弾丸で弾き飛ばされる。それは遠くにいるメルメルの撃ったものだった。
「……ナイスだ。メルメル。これで!」
タクトはさらにサクラザカの腹に蹴りを加える。
「とっとと死にやがれ! クソ野郎!」
「……はっ……があっ……」
サクラザカは蹴りで吹き飛ばされ、建物を破壊していく。そして、その場で仰向けに倒れていた。
「…………」
サクラザカは何も喋らず、青い空の下で仰向けになっていた。
彼自身に意識が無くても、吹き飛んだ両腕はいまだに再生を続けていた。




