第12話 過去からの宿命
日の光が照らす中、空には多くの人間や物が浮かんでいた。
そんな時、日光がサクラザカの体を照らす。
ジュワ……
彼の体から煙が出ていた。その様子を見たジェナは慌てて近づこうとする。
「サクラザカさん!」
「来ないでください!」
ジェナに向かってそう叫ぶと、彼は小さな弾丸を2つこちらに投げてくる。
それはあの氷結晶の弾丸だった。
「それを持って行ってください! おそらく敵は今、僕しか場所がわかっていない。つまり、僕に集中しているということ! そこに奇襲をしかけ、やつを倒してください」
「でも! サクラザカさんがもたないよ!」
再び、弾丸は地面を滑り、サクラザカに向かってくる。それらを剣で弾いていく。
ドシュっ! バシュっ!
だが、防ぎきれず、いくつか受けてしまった。
「僕のことはかまわなくていいです! 早く行ってください!」
「でも!」
その時、コハルがジェナの肩をつかんだ。
「ジェナ。今はサクラザカさんの言うことに従いましょう」
「でも! あれじゃあ!」
「サクラザカさんを救うかどうかはボクたちしだいです」
「………え」
コハルはいつもとは違い、真剣な表情で口に笑みを浮かべていた。
「ボクたちがこの能力者を早く殺せば、サクラザカさんだって解放されます。それに、サクラザカさんが解放されれば、この浮かせる能力を持った敵も倒せる。そうすれば、カゲロウさんだって助かります。もうこの戦いはボクらしだいなんです」
「……コハルちゃん」
ジェナはその言葉を聞いて、理解した。自分が今、何をすべきかを……。
「わかった! コハルちゃん。一緒にこの能力者を倒そう」
「ええ。行きましょう」
二人はその話を終えると、すぐに弾丸が来る方向へ走り出した。
そんな彼女たちを見送りながら、サクラザカは考え込む。
「……彼女たちの相手をする人間は……おそらく財団でも上位の人間」
向かってくる弾丸から、何か熱意というものを感じた。
確実にサクラザカたちを殺すという熱意を……。
「……ジェナちゃん、コハル。お願いします」
# # # # # # # # # # # # # # # # # # # # # # # # #
「……綺麗だ」
青い空が広がり、澄んだ空気が広がっている。
「……団長……」
あの人に初めて会った時もこのような天気だった。そして、出会った場所も、ここフレインタリアである。
私は亜人だ。亜人といっても種族によっては生まれた時から亜人である者もいるし、ある程度時間が経ってから亜人の力が目覚める時だってある。
私は前者であった。なぜか、今の時代は亜人に対して冷徹である。
そのため、私は差別対象として帝国に追われていた。そんな時、私を救ってくれたのが団長だ。
「……必ず……任務を遂行してみせます」
バァンっ! ダァンっ!
弾丸を地面に撃ち込む。それは水中を泳ぐサメのヒレのように、地面を滑っていった。
すると、後ろから人の気配がした。
「…………ジェナですか。お久しぶりです」
「……グレーさん」
そこにはかつて仲間だった少女がいた。団長から聞いた話では、ある任務で財団の事情を知って嫌気がさしたらしい。
「……愚か者が……」
私はこいつが許せなかった。団長は心優しいお方だ。そんなあの人を裏切るなんて……。
……とはいえ、彼女を殺す命令は出ていない。もちろん、その後ろにいる白髪の少女も……。
「……仕方ないですね」
私は銃を彼女たちに向け、引き金を引く。それに反応した白髪の少女はジェナを抱え、横に飛び込んだ。
ダァンっ!
撃たれた弾丸は白髪の頬をけずり、彼女の後方の建物を破壊する。
それは物体操作魔法に加え、武器強化魔法も付与しているためである。
「くっ……!」
二人の少女は私の様子をうかがっている。その足掻きこそが無駄だというのに……。
「さて……」
私は弾丸を銃に備える。
「……殺さない程度に痛めつけてやりますよ」
# # # # # # # # # # # # # # # # # # # # # # # # #
「……迂闊だった!」
射撃でも、かするぐらいなら、なんとかなると思っていた。
だが、おそらくこの攻撃はあの『物体を移動させる能力』を持った男の攻撃だ。
「威力……異常すぎんだろ」
弾丸は俺の右腕の肘を豆腐のように破壊した。もう、右腕の感覚は無い。
ものすごく痛い。意識が飛びそうになるほど……。
だが……。
「サクラザカだって……自分の足を切り取るほどのことをしたんだ。俺だって負けてらんねえんだ!」
向かってくる光線、狙撃による弾丸。それらを俺は避け続ける。そこはまるで蜘蛛の巣のようだった。
それらに当たれば、体は簡単に破壊される。特に狙撃を受けたら一発KOだ。
「乗り切ってやる!」
ここで戦わなくては、サクラザカたちが『浮かせる能力』を持った敵を見つけることができなくなる。
今、攻撃を受け相手の場所を把握していること自体が俺たちにとってのメリットだ。それを捨てることは敗北を意味する。
どんなに苦しくても、ここで死ぬわけにはいかない。
「おらあっ!」
数枚のシールドを作り、体に武装する。そして、橙色の魔石を後方に投げ、光線で砕く。
ドゴオオオンっ!
爆風で光線と狙撃を避けていく。
たとえ、右腕を失っても……俺は生きなければならない。




