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異世界の執行人  作者: Kyou
第4章 どんなに傷ついても……
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第11話 弾け散る光

「あがっ……」


「サクラザカさん!」


 彼の右足と腹に一つずつ弾丸を受けていた。


「大丈夫ですか!?」


「……ええ。先程、指を噛んだ時に、少し血を飲み込んでいたので、多少の攻撃はなんとかなります。ですがおそらくもう一人敵がいるのだろう。『浮かせる能力』とは別の能力を持った人間が……」


 サクラザカは傷の形から、これが遠距離からの攻撃ではないことを理解していた。しかし、近くから撃ったとしても、その撃った場所がわからなかった。


 近くにはサクラザカたち以外誰もいないからだ。


「…………これは!」


 その時、地面に不可解なことが起きていた。


 シュルルルルっ


 数発の弾丸が地面を滑りながら近づいてきているのだ。


「ジェナちゃん! 僕から離れてください!」


 弾丸の向かう方向から、それは確実にサクラザカを捉えていた。おそらく、さっきの攻撃で位置を特定されているのだろう。


「……くっ!」


 サクラザカは向かってくる弾丸を避ける。


 だが……。


 ドシュンっ


「……っ!」


 その弾丸は突然サクラザカの方向に向きを変えた。それはサクラザカの左手を貫いていく。


「……なんだ……これは……」


 それは奇妙なことだった。弾丸はおそらく物体操作魔法で動かしている。


 だが、その魔法を使うにしても、正確に敵を捉えていた。捉えすぎていた。


「……あり得ない。物体操作魔法は必要な魔素吸収レベルが相当高い。だから、数発も弾丸を飛ばすなんてできないはずだ」


 敵はそれほど魔素吸収レベルが高いのか?


 いや、その可能性は限りなくゼロに近い。


「……何か……能力でコストを低くしている?」


 思えば、サクラザカは奇妙に感じていた。いくらなんでも、弾丸が簡単に体を貫いていた。


「……そこに秘密があるのか」


 シュルルルルっ


 再び弾丸がサクラザカに近づいていた。


――……滑っている?――


 サクラザカはそこに疑問を持った。


――まさか! そういうことか!――


 サクラザカは左手に噛みつき、血を吸い始める。


 キュイイーン


 黒い髪が灰色へ変化していく。


 氷の剣を取り出し、かまえる。そして、剣を白く発光させる。


「はああっ!」


 剣は白い軌跡を描きながら、地面の弾丸を弾き飛ばす。弾き飛ばされた弾丸は地面を削った。


 その剣の素材も『氷結晶』でできており、弾丸にかかっていた能力を打ち消した。


 それが敵の能力の答えだった。


「ジェナちゃん! コハル! もう一人の敵の能力は『摩擦を操る能力』です! それを使って物体操作魔法の威力が弱くても、うまく操作できるようにしているんだ」



# # # # # # # # # # # # # # # # # # # # # # # # #



 ピッ


 グレーはタクトへかけていた携帯を切る。


「さて……」


 持っていた拳銃に弾丸を入れる。そして銃口を地面に向ける。


 ダアンっ! ダアンっ! ダアンっ!


 撃ち込まれた弾丸は地面を滑り、複雑な路地に入り込んでいく。


「……まったく団長は面倒な命令を下すよ。ユニギリムの演説だって、わざわざ私の能力を使って射殺するなんて……。まあ、その用心深さが団長の魅力なのですが……」


 そして、携帯をかける。


「グロウブ」


『どうした?』


「これから私の弾丸が奴らに向かう。それがそいつらを地面から離すように誘う。空に浮かんだ奴らを殺せるか?」


『ああ。任せろ』


 ピッ


「さあ……」


 再び銃に弾丸を入れる。


「始めようか」



# # # # # # # # # # # # # # # # # # # # # # # # #



 カゲロウは空中に浮かびながら、周りを確認する。そして、光の玉を大量に発生させる。


「おらあ! 俺はここだ! いくらでも攻撃しやがれ!」


 すると、ある一点から光が発生した。


「さて……来やがったな」


 そこから大量の光線がこちらに向かってくる。カゲロウはシールドを発生させ、それらを防ぐ。


「うおおおおお!」


 シールドと接触した光線は光の破片となり、弾ける。だが、カゲロウのシールドも崩れてきた。


「おりゃ!」


 カゲロウはもう一枚シールドを発生させ、赤く発光させる。


「爺さんゆずりのものだ! どっちが上か、比べてみるか?」


 光線がシールドにぶつかり、弾け飛ぶ。攻撃はぎりぎり耐えられている。


「でも……こりゃあ魔素探知使ってたら完全にばれちまうな」


 激しい光の破片は空を彩っていく。幸い、まだ昼のため、そこまで目立ってはいないが……。


「…………っ!」


 その瞬間。


 一つの弾丸がこちらに向かってきた。


「……くそっ!」


 カゲロウはさらにシールドを展開させる。だが……。


 バリバリっ!


「まさか、あの……!」


 それはタクトの『移動させる能力』だった。それは完全にシールドを粉砕していった。


「……くっ!」


 間一髪で弾丸を避ける。


「……3対1ってことか? ずいぶんハードじゃねえかよ!」


 大量の光線と、タクトとメルメルの狙撃の両方を避け続けなければいけなかった。


「いいぜ! 避けきってやるぜ。その間に頼む。サクラザカ!」



# # # # # # # # # # # # # # # # # # # # # # # # #



「次だ! メルメル」


「……りょー……」


 メルメルは避けたカゲロウをスコープで追いかける。


「……かい!」


 ダアンっ!


 飛んでいく弾丸は流星のように空を進んでいく。


 だが、カゲロウは橙色の魔石を使い、爆風で避ける。


「……むうう……なかなか……手強い……」


 メルメルは瞳を鋭くする。


「……でも……」


 ダアンっ!


 その弾丸はカゲロウの右腕に命中し、弾き飛ばした。

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