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異世界の執行人  作者: Kyou
第4章 どんなに傷ついても……
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第9話 『前夜祭』

 俺とサクラザカ、ジェナ、コハルの四人は宿屋に戻っていた。


「やっぱり東地区にあの鎧はいなかったな」


 俺とサクラザカは明日のことについて話し合う。


 フレインタリアはハイスカイタワーを中心に東西南北の地区に分かれている。ユニギリムが東側なので、俺たちは最初に東地区に来ていた。


「次は南地区からいきますか。なるべく作業効率を上げるために分かれて行動しますか?」


「いや、今回はまったく知らない地区だ。うかつに離れて戦うのは危険だろう」


「……それもそうですね。なるべく、集団で行動しましょう」


 サクラザカは話が終わると、持っていた弾丸と銃を見せる。


「カゲロウ。銃を使い慣れていますよね」


「……まあ、たまに財団の連中と戦っていた時に使ったことはあるが……」


「では、これは君が使ってください」


 それはサクラザカの言っていた『氷結晶』も含めての言葉だった。


「いいのか? お前らが使わなくて……」


「ええ。僕やコハルは近接戦闘の方が得意ですし、ジェナちゃんは銃を持たせるにはまだ経験が浅い。カゲロウが一番適しているんです」


「……わかった」


 俺はその銃と弾丸を受け取る。だが……。


「とはいえ、『氷結晶』の武器は意外と汎用性が高い。……だから、お前もいくつか持っていた方がいいだろ」


「……そうですね。わかりました」


 サクラザカは2発ほど『氷結晶』の弾丸を持つ。対して、俺は5発の弾丸と銃を持つ。



# # # # # # # # # # # # # # # # # # # # # # # # #



 路地裏でサクラザカは、ジェナにナイフの使い方を教えていた。これはジェナの能力が近距離だと魔素探知によって読まれやすいため、近接戦闘にも慣れた方が良いと考えたからである。


 キインッ!


 サクラザカの剣が向かってくるナイフを次々と弾く。


「……まだ動きが単調ですよ」


「ああっ!」


 バシッ!


 持っていたナイフが大きく弾き飛ばされる。


 そして、ジェナに氷の剣が突き立てられる。


「……参りました」


「まだまだですね。……でもだんだんと動きが良くなってきています。順調にいけば、十分戦えるようになるでしょう」


 サクラザカは剣をしまい、水の入った袋をジェナに手渡す。


 それを受けとると、ジェナはサクラザカにある疑問を持った。


「……サクラザカさんはどうしてそんなに教えるのがうまいんですか?」


「え?」


 サクラザカはしばらく考えた後、返答する。


「たぶん……教えてくれた人がうまかったからですかね。あの人は結構不器用なりにも、僕のことを考えてくれていましたから」


 なぜだか、サクラザカは次の質問が予測できてしまった。


「……その人はもう死んでしまったのですが、僕はおそらく彼のことを永遠に忘れないでしょう」


「……そうなんですか……」


# # # # # # # # # # # # # # # # # # # # # # # # #


「サクラザカ!」


「……はい?」


 路地裏から戻ってきたサクラザカにタローは話しかける。


「温泉に入ってくるといいぞ! あそこには、匂いを良くする効果があるからな! 今は女であるお前には最適だろう!」


「…………ありがとうございます」


 サクラザカは勧められたとおり、風呂に向かう。


「あんたも結構変わったな」


「そうか!? 私は男っぽかったからな!」


 そんなカゲロウとタローの会話を聞きながら、歩き続ける。


 脱衣所で服を脱ぎ、風呂場の水道の前まで行く。そこで石鹸で体を洗いながら、彼は自分の手を眺めていた。


「…………いつまで…………続くんだろうなあ」


 呟いた後、体にお湯をかけ、泡を洗い流す。濡れた髪が顔に張りつき、うっとうしさを感じながら髪をどける。


「…………」


 その時、何かに気づいたサクラザカは再び手を眺め、鼻の前まで持ってくる。


「……………………………………………………血の匂いがする」



# # # # # # # # # # # # # # # # # # # # # # # # #



「おい! サブロー!」


「なんでござるか!?」


 たまたま宿に訪れていたサブローにカゲロウが絡む。


「お前、結構可愛くなってんじゃねえか!」


「いやいや、拙者はあんまり変わってないでござるよ」


 その時、サクラザカより遅れて戻ってきたジェナがいた。


「……何やってるんですか?」


「今、こいつを捕まえてるところだ」


「…………え?」


 ジェナには行動原理が理解できなかった。それはいつものカゲロウならあまりしないことだったからだ。


「もしかして、可愛いものに目がないとか……」


「あ? そりゃ可愛いものはいいだろ」


「……たぶんですけど……」


 ジェナは目を細めながら、カゲロウに言う。


「……カゲロウさん……趣向が女性に近くなっていますよ」


「……なん……だと!?」


 すると、カゲロウはサブローを離し、地面に崩れ落ちる。


「そういえば、気がついたらちゃんと髪を整えている気がする」


「別にそれはいいのでは?」


「いや、良くない! 絶対に直さねば!」


 カゲロウはタローのところに行き、何かを頼み込んでいる。


「タロー! 俺にたくさん団子をよこせ」


「いいぞ! 好きなだけ食べろ!」


 出された団子はバクバク食っている。


「……どうしたんですか?」


「女ってのは、わりと食べないだろ!」


「いや……食べる人は食べますよ」


 そんな時、ジェナはある考えを持ち始める


――もしかして、カゲロウさんの好みの人って、わりと小食だったりするのかな……。そういえば、ユニギリムにいるベルさんは小食な人だって聞いたような……。まあ、あんまり考えるのはよそう……――


 カゲロウはたくさん団子を食っている。


「タロー。この団子うまいな!」


「そうだろう! なんていったって今日は月見だからな!」

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