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異世界の執行人  作者: Kyou
第3章 最強は叫ぶ
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第6話 歴戦の王

「…………ああ?」


 集会所に行くとおやじどもが酔いつぶれていた。そこにあのピンクは見当たらなかった。


 受付のやつに居場所を聞いてみる。


「なあ。あのピンクはどこ行った?」


「へ? 確か説教で連れていかれたんじゃなかったでしたっけ。その後は知りませんよ。集会所に来た人の顔は覚えていますし、たぶん戻ってきてないんじゃないでしょうか?」


「…………はあ……」


 俺はため息をつきながら、再び外に向かう。受付はそんな俺に問いかける。


「……ベガちゃん、なにかあったんですか?」


「ああ? どうせまた外で遊んでんだろうよ。すぐに戻ってくる」


 俺はそう言い放ち、集会所の外へ出る。


 扉を閉め誰にも聞こえないと理解した時、声を漏らす。


「あの野郎……どこへ行きやがった……」



# # # # # # # # # # # # # # # # # # # # # # # # # #



 俺はあの遺跡の前に来ていた。いくらベガでも、一人でこんなところに来ないと思うが……。


「あり得ねえ話じゃあねえよな……」


 俺はその遺跡に入ろうとする。だが……。


「ちっ……」


 地面を蹴り、後ろに下がる。


 シュバババ!


 目の前に三本の光の槍が突き刺さる。


「何の真似だ? ……遺跡の番人ってところか?」


「そこまで大した者じゃない」


 遺跡の丸い部分のてっぺんに、その男は立っていた。そいつは灰色の羽の髪飾りをつけていて、妙に服の装飾が奇抜だった。


 その男は長い髪をかき上げ、思いもよらない言葉を放つ。


「どうやら、あの娘を連れ戻しに来た……というところか」


「なに? ピンク野郎がここに来たのか……」


 いや……来たというより、連れさらわれた……という方が正しいのだろう。男の、まるで俺が来るのがわかっていたかのような表情から、そのように考えられる。


「……てめえ。何のためにあいつを連れ去った? お前は何が目的だ?」


「それは我輩にはわからない。……他のやつらがその娘を欲していたからな……。聞きたいならそいつらに聞くといい」


「くははっ。はははっ」


 俺はこの状況に笑いを隠せなかった。


「そう言っておいて、お前自身は通す気は無さそうだなあ」


「当たり前だろ。我輩も久しぶりの客と戦いたいと思っていたところだ……。名乗らせていただこう。我輩の名はネロ。かつて、メディテ王国を支配していた王よ」


「王だ?」


 メディテ王国? そんな物があるのか? あったとしても、その国の王がいったいなぜここにいるんだ。


 …………まあ。考えても仕方ねえか……。


「おらっ!」


 先手必勝だ!


 俺は地面を蹴り飛ばし、その男の前に飛ぶ。『軽くする能力』で体を軽くしたため、すばやく移動できた。


 そして、男に殴りかかる。


「くらいやがれ!」


「…………ふっ」


 男が鼻で笑ったその時だった。


「なに!?」


 俺の腕がやつの体に食い込んだ。いや、やつの体が透けていると考えた方がいいだろう。


「あまいぞ。少年」


 ドボバッ!


「がはっ!」


 そいつの蹴りが俺の腹に直撃した。その勢いで俺は地面に叩きつけられる。


「くっ!」


 目の前に光の槍が飛んでくる。俺はすぐに体をころがし、それを避け続け、立ち上がる。


 男が遺跡の上から地面に降りてくる。


「ほう……。なかなか反応はすばやいではないか」


「ちっ。何かあるな……。お前の能力は……」


 透ける能力ではないようだ。俺の能力が発動しないからな……。


 だとしても、なぜやつは透けるのか……。どうすれば、ダメージを与えることができるんだ?


「……考えているな。少年よ。その行動は立派だ。だが、並みの発想では我輩に勝つことはできないぞ! ……考える余裕すらも与えないがな……」


 男は光の槍をまた三本作り出し、こちらに飛ばしてくる。


「ちっ」


 俺はそれらを避け、あいつに近づく。すると、やつの腕が赤く発光し始める。


「……身体強化か……」


 男の拳が俺の目の前にやってくる。だが、俺はそれを読んでいた。


「……能力を発動!」


 俺はあいつの背後に瞬間移動する。そして、腕をふりかかる。


「食らえ!」


「……単純だな……」


 やはり、その腕はやつの体に触れることができなかった。そして、やつの作り出した槍が俺の腕を貫く。


「うぐっ!」


 俺は体を軽くし、勢いをつけ後ろに下がる。


 いまだにやつの能力がわからなかった。完全にやつに能力を発動する余裕など無かったはずだ。


「…………ちっ。なんなんだ。あの能力は……」


 あっちは触れることができるのに、こっちは触れることができない。理不尽にも程があるだろ。


 …………。


 あいつは本当に有利なのか?


 俺は立ち尽くし、考えた。


「どうした? 少年。ついに諦めたか?」


「…………クククッ。くだらねえなあ」


「なに?」


 俺はその能力の種がわかると、笑いが込み上げてきた。


 バシュッ!


 地面を蹴り上げ、その男へ一直線に近づく。


「なんだ? どうしたんだ? 脳死で突撃してくるだけか?」


 男は光の槍を俺に撃つ。俺はそれらを避け続け、やつに近づく。


「うおおおおおおお!」


 俺はやつに殴りかかる。そして、そいつの体は透け、拳は通り抜けていく。


「何度やっても同じだ! 死ぬがいい!」


 男の蹴りが俺に向かってくる。


「…………そこだ!」


 俺は反対側の拳をその脚に叩き込む。


 ドバキッ!


「うぐっ!」


 その脚は血を出し、鈍い音を発した。その男はその場にしゃがみこんだ。


「……逆だったんだな……。てめえの能力は『触れることができる能力』だったんだ。すなわち、能力を発動しなければ、お前は触れることができねえ。それを利用して、不意打ちもかわしていたんだ」


 それがこいつの能力……。だが……。


「……てめえ。いったい何者だ? 明らかに普通の人間じゃあねえ。触れることができない体なんて、どうやって手にいれた?」


 その疑問は確かに気になる物だった。


「……だが、それを聞く暇は無さそうだな。……10秒経過だ」


 俺の近くに浮かぶ剣の短冊に『触れられないものに触れる能力』が書かれる。


「これで……終わりだ」


 その男の顔面を殴った。…………その時だった。


 ポスッ。


「……なんだ?」


 能力が……発動しない……。俺の『硬いものほど壊しやすくなる能力』が発動しなかった。


「……ふん!」


 やつは俺の脚を蹴り飛ばす。俺は体勢を崩し、その場に座り込む。


 バキキッ!


 そして、やつの拳が俺の顔面を殴り飛ばす。


「ぐはあっ!」


 俺は吹っ飛び、砂の上に倒れる。


 いったい……なんで……能力が発動しなかった。


 ふと、近くの盾の短冊を見る。すると、その短冊から『硬化する能力』が消えていくのがわかる。


「なっ……まさか、この能力を持っているやつが……死にやがったのか……。ちくしょうっ。このタイミングで……」


 あの男が俺に近寄ってくる。その男は俺を見下ろしながら、俺に言葉をかける。


「……どうやら、神が味方をしたのは我輩だったようだな。……安らかに眠れ。戦士よ……」


 待てよ……。ふざけんなよ……。こんなところで……。


 まだ、やらなくちゃいけないことがあんだよ。


 あいつを……ベガをまだ……。


「助けてや」


 その時、そいつの槍が俺の心臓を貫いた。

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