第4話 少年の気まぐれ
三日後の夜のことだ。
俺は集会所の向かった。建物の扉を思いっきり開ける。すると…………。
「よお! ぼうず! 一緒に酒でも飲まねえか!」
村のおやじどもが肩に手を回し絡んできた。俺はその手をどける。
「いらねえよ。つーか俺は未成年だっつの…………あ?」
そいつらの中にあのサソリの女が混じっていた。女は俺に話しかける。
「あの……。アルタイル。……その……ありがとね……」
「……別に……大したことはしてねえよ」
俺が何をしたか……。それは三日前にさかのぼる。
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その時の俺たちは同じ集会所にいた。もっとも、今ほど人は多くないが……。
「……依頼を達成する!? ここの?」
女は俺の言ったことに驚く。
「村の連中から信頼を得るには……これが一番手っ取り早いだろ」
「でも、私たちって……その……毒持ってるし……」
「は? ここは普通の人間でも光線を放つような世界だぞ。なんで、そんなこと気にしてんだ?」
「ええ……。でも……」
慌てふためくその女に、俺は依頼状を指差しながら言う。
「例えば、このトカゲを……」
「……ヤモリね……それ……」
「いやどっちでもいいわ。……このヤモリを討伐すれば、金をもらえるし、村の奴らも助かる。金がありゃあ、サソリたちのエサもちゃんと買える。信頼があれば、いざとなったら村の連中が助けてくれる。お前らの利益になると思わないか?」
「そうだけど……私たちに仕事ってもらえるの?」
「そのことは問題ねえよ」
俺たちは依頼状の中から、サソリの女でもできるような物を選び、受付嬢のところに持っていく。
「……あれ? どうしたんですか? 彼女でもできたんですか? リア充ですね。幸せに死んでください。ありがとうございます」
俺は何回こいつの中で死ぬように言われなくちゃならねえんだ?
「とりあえず、こいつがこれを受けたいらしいんだが、大丈夫だよな?」
そいつに依頼状を見せる。すると、受付嬢はサソリ女の顔を見つめる。
「……じーっ……」
「ひっ」
どうやら怪しんでいるようだ。すぐに受け取ってくれない受付嬢に俺は言い放つ。
「早くしてくれよ。……それとも、仕事もろくにできないニーt」
「なわけあるかああああああああああああああ! いいですとも! ぜひ行ってきてください! ありがとうございまあああああす!」
その言葉を聞いた女の顔は和らいだ。
「……良かった……」
「まあ、これから頑張れよ……」
「あなたはどうするの? 私たちを駆るっていう仕事が無くなっちゃったし……」
「ああ? 別にいいだろ。他の仕事を受ければ……」
それに、こいつらの仲間を殺して金を得るのは少々気が引ける。実際、数匹は殺しちまったしな……。
「まあ……これ以上悪いことすんなよ……」
「……うん。……わかった」
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まさか、たった三日でここまでなるとは……。
おやじどもの中に、女と数匹のサソリたちが混ざっている。あれから多くの仕事をして、一躍人気になったようだ。
むしろ、俺より仕事をしているような……。
そんなことを考えながら俺は椅子につき、コップ一杯の水を飲みほす。
すると、あの受付嬢が目の前に少しのパンを出す。
「何のつもりだ?」
「まあ。ちょっとした私のおごりです」
向かいの席にそいつは座る。
「そういえば、サソリ退治の依頼……まだ達成してませんよね」
「そうだな……。たぶん、達成することは無いがな……」
「ほれっ……」
「あ?」
そいつは俺の前に謎の紙切れを三枚渡す。
「その分の代金ですよ……。私からの……」
俺はそいつの意図を汲み取ると、口に笑みを浮かべる。
「……気づいてやがったな……。あの女がサソリを操ってたやつだって……」
「当然でしょ……。私はこう見えてこの村ができた時から受付嬢をやってるんです。……わかるに決まってますよ」
「そうかい。すごいもんだな」
「は? 何をほめているんですか? ごめんなさい。彼女にはなれません。死んでください。ありがとうございます」
なんかもう慣れたな……こいつのセリフ……。
俺は出されたパンを噛みちぎる。程よい食感は懐かしさを感じさせた。
その時、受付が言った言葉に疑問を持った。
「できた時から? この村がか?」
「ええ。そうですよ」
そいつは不思議そうに俺を見つめる。
「お前ババアか?」
「なっ! 私はピッチピチの29歳です! まだ30はいってませんから! 30はいってませんからね!」
29歳……。最低でも15あたりから仕事をしたとしても、この村は14年前にできたことになる。
14年でここまで発展したのか……。この村は……。だとしても、人口が多すぎる。
「アールターイルう!」
突然、ベガが俺の腹に飛び込んでくる。
「あ? どうした?」
「いやあ。エリンさんの説教がきつすぎたよー。あの人怒ったら怖いからさ」
だいたいそんな気はしていた。ああいう一見温厚な大人ほどキレたら怖いもんだ。
どうやら、ベガは井戸から水を運ぶ仕事をしているらしい。だが、よくその間にどこかへ遊びに行ってしまう癖がついているようで、それに関しては村の住民は手を焼いているらしい。
だから、ベガは村に帰るとすぐにあの白髪の女に連れていかれた。
「まあ……仕事はサボんなよな。じゃないと、この受付嬢みたいになっちまうぞ」
「誰がニートだ!」
受付嬢が俊敏に反応してくる。
バタンッ!
その時、集会所の扉が開く。そこにはあの白髪の女が来ていた。
なぜだか、その女は口だけは笑顔なのだが……恐ろしいオーラをまとっていた。
「ベガ……いらっしゃい。まだ、話は終わってないわよ……」
「あっ……エリンさん……」
おいおい。もしかして、説教の最中に抜け出してきたのかよ……。それ一番やばいやつじゃねえか……。
そのまま、ベガはエリンに手を引っ張られながら連れていかれる。
「へいへい! 嬢ちゃんもこりねえなあ!」
「ひゅーひゅー。こっから一時間、熱いねえ!」
周りの酔っぱらいどもはその光景は楽しんでいるが、当の本人は顔がひきつっていた。
「じゃあ、失礼しました」
エリンはそう言うと、外に出て扉を閉めた。
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「うう。……きぼちわるい」
俺が外に出ると、サソリの女が口を押さえていた。
「ああ? 大丈夫か?」
「うん……ただ久しぶりの酒だったから……うう……」
いやまあ見てる限り、久しぶりというよりか、ただ乗りに乗って飲み過ぎてたように見えたけどな……。
とはいえ、このまま見捨てるわけにもいかない。
「おら。背中乗れよ。確か……今日は教会に泊まるんだよな……」
「……うん……ありがとう」
俺はその女を背負い、教会に向かった。




