↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界の執行人  作者: Kyou
第3章 最強は叫ぶ
54/119

第4話 少年の気まぐれ

 三日後の夜のことだ。


 俺は集会所の向かった。建物の扉を思いっきり開ける。すると…………。


「よお! ぼうず! 一緒に酒でも飲まねえか!」


 村のおやじどもが肩に手を回し絡んできた。俺はその手をどける。


「いらねえよ。つーか俺は未成年だっつの…………あ?」


 そいつらの中にあのサソリの女が混じっていた。女は俺に話しかける。


「あの……。アルタイル。……その……ありがとね……」


「……別に……大したことはしてねえよ」


 俺が何をしたか……。それは三日前にさかのぼる。



# # # # # # # # # # # # # # # # # # # # # # # # # #



 その時の俺たちは同じ集会所にいた。もっとも、今ほど人は多くないが……。


「……依頼を達成する!? ここの?」


 女は俺の言ったことに驚く。


「村の連中から信頼を得るには……これが一番手っ取り早いだろ」


「でも、私たちって……その……毒持ってるし……」


「は? ここは普通の人間でも光線を放つような世界だぞ。なんで、そんなこと気にしてんだ?」


「ええ……。でも……」


 慌てふためくその女に、俺は依頼状を指差しながら言う。


「例えば、このトカゲを……」


「……ヤモリね……それ……」


「いやどっちでもいいわ。……このヤモリを討伐すれば、金をもらえるし、村の奴らも助かる。金がありゃあ、サソリたちのエサもちゃんと買える。信頼があれば、いざとなったら村の連中が助けてくれる。お前らの利益になると思わないか?」


「そうだけど……私たちに仕事ってもらえるの?」


「そのことは問題ねえよ」


 俺たちは依頼状の中から、サソリの女でもできるような物を選び、受付嬢のところに持っていく。


「……あれ? どうしたんですか? 彼女でもできたんですか? リア充ですね。幸せに死んでください。ありがとうございます」


 俺は何回こいつの中で死ぬように言われなくちゃならねえんだ?


「とりあえず、こいつがこれを受けたいらしいんだが、大丈夫だよな?」


 そいつに依頼状を見せる。すると、受付嬢はサソリ女の顔を見つめる。


「……じーっ……」


「ひっ」


 どうやら怪しんでいるようだ。すぐに受け取ってくれない受付嬢に俺は言い放つ。


「早くしてくれよ。……それとも、仕事もろくにできないニーt」


「なわけあるかああああああああああああああ! いいですとも! ぜひ行ってきてください! ありがとうございまあああああす!」


 その言葉を聞いた女の顔は和らいだ。


「……良かった……」


「まあ、これから頑張れよ……」


「あなたはどうするの? 私たちを駆るっていう仕事が無くなっちゃったし……」


「ああ? 別にいいだろ。他の仕事を受ければ……」


 それに、こいつらの仲間を殺して金を得るのは少々気が引ける。実際、数匹は殺しちまったしな……。


「まあ……これ以上悪いことすんなよ……」


「……うん。……わかった」



# # # # # # # # # # # # # # # # # # # # # # # # # #



 まさか、たった三日でここまでなるとは……。


 おやじどもの中に、女と数匹のサソリたちが混ざっている。あれから多くの仕事をして、一躍人気になったようだ。


 むしろ、俺より仕事をしているような……。


 そんなことを考えながら俺は椅子につき、コップ一杯の水を飲みほす。


 すると、あの受付嬢が目の前に少しのパンを出す。


「何のつもりだ?」


「まあ。ちょっとした私のおごりです」


 向かいの席にそいつは座る。


「そういえば、サソリ退治の依頼……まだ達成してませんよね」


「そうだな……。たぶん、達成することは無いがな……」


「ほれっ……」


「あ?」


 そいつは俺の前に謎の紙切れを三枚渡す。


「その分の代金ですよ……。私からの……」


 俺はそいつの意図を汲み取ると、口に笑みを浮かべる。


「……気づいてやがったな……。あの女がサソリを操ってたやつだって……」


「当然でしょ……。私はこう見えてこの村ができた時から受付嬢をやってるんです。……わかるに決まってますよ」


「そうかい。すごいもんだな」


「は? 何をほめているんですか? ごめんなさい。彼女にはなれません。死んでください。ありがとうございます」


 なんかもう慣れたな……こいつのセリフ……。


 俺は出されたパンを噛みちぎる。程よい食感は懐かしさを感じさせた。


 その時、受付が言った言葉に疑問を持った。


「できた時から? この村がか?」


「ええ。そうですよ」


 そいつは不思議そうに俺を見つめる。


「お前ババアか?」


「なっ! 私はピッチピチの29歳です! まだ30はいってませんから! 30はいってませんからね!」


 29歳……。最低でも15あたりから仕事をしたとしても、この村は14年前にできたことになる。


 14年でここまで発展したのか……。この村は……。だとしても、人口が多すぎる。


「アールターイルう!」


 突然、ベガが俺の腹に飛び込んでくる。


「あ? どうした?」


「いやあ。エリンさんの説教がきつすぎたよー。あの人怒ったら怖いからさ」


 だいたいそんな気はしていた。ああいう一見温厚な大人ほどキレたら怖いもんだ。


 どうやら、ベガは井戸から水を運ぶ仕事をしているらしい。だが、よくその間にどこかへ遊びに行ってしまう癖がついているようで、それに関しては村の住民は手を焼いているらしい。


 だから、ベガは村に帰るとすぐにあの白髪の女に連れていかれた。


「まあ……仕事はサボんなよな。じゃないと、この受付嬢みたいになっちまうぞ」


「誰がニートだ!」


 受付嬢が俊敏に反応してくる。


 バタンッ!


 その時、集会所の扉が開く。そこにはあの白髪の女が来ていた。


 なぜだか、その女は口だけは笑顔なのだが……恐ろしいオーラをまとっていた。


「ベガ……いらっしゃい。まだ、話は終わってないわよ……」


「あっ……エリンさん……」


 おいおい。もしかして、説教の最中に抜け出してきたのかよ……。それ一番やばいやつじゃねえか……。


 そのまま、ベガはエリンに手を引っ張られながら連れていかれる。


「へいへい! 嬢ちゃんもこりねえなあ!」


「ひゅーひゅー。こっから一時間、熱いねえ!」


 周りの酔っぱらいどもはその光景は楽しんでいるが、当の本人は顔がひきつっていた。


「じゃあ、失礼しました」


 エリンはそう言うと、外に出て扉を閉めた。



# # # # # # # # # # # # # # # # # # # # # # # # # #



「うう。……きぼちわるい」


 俺が外に出ると、サソリの女が口を押さえていた。


「ああ? 大丈夫か?」


「うん……ただ久しぶりの酒だったから……うう……」


 いやまあ見てる限り、久しぶりというよりか、ただ乗りに乗って飲み過ぎてたように見えたけどな……。


 とはいえ、このまま見捨てるわけにもいかない。


「おら。背中乗れよ。確か……今日は教会に泊まるんだよな……」


「……うん……ありがとう」


 俺はその女を背負い、教会に向かった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。