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異世界の執行人  作者: Kyou
第3章 最強は叫ぶ
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第2話 サソリ狩りに行こう

「なるほど。サソリが村の人間を襲ってるねえ。面倒な連中だな」


 俺は村からそう離れていない程度の砂漠を歩く。


「……で? なんでついてきてんだ?」


 後ろのピンク頭にその言葉を放つ。


「お手伝いが必要かと思って……」


「いらねえよ。それに足手まといになるだろうが……」


「それに、あなたは武器も何も持っていないでしょ? だから、私が持ってきてあげたんだよ……」


「そいつもいらねえよ。俺は俺自身の力で片づける」


 村からある程度離れた場所を俺たちは歩く。すると、なにやら奥に動く物が見えた。


「クククッ。どうやらお目当ての奴らがいたようだな」


 そいつらは尾に毒針を携えている。どうやら、獲物を待っている様子だった。


「じゃあ少し遊んでくるか!」


「あっ! ちょっと!」


 俺は地面の砂を蹴り飛ばし、勢いよくサソリたちの目の前に現れる。


「おらおら! かかってこいよ!」


 すると、背後から別の大きなサソリが毒針を向けてくる。


 だが……。


 バシャッ!


 サソリの尾が宙を舞う。


「『硬いものほど壊しやすくなる能力』だ。最初からわかってんだぜ。見せてたやつが囮ってことはよお!」


 これはユニギリムとかいう街で会ったクソガキに対応した能力だ。こいつのおかげでサソリの硬い皮膚は壊せるみたいだ。


「んじゃ! さっさと、10体……いや! 100体でもいいから駆ってやるかあ!」


 俺は囮だったサソリが向かってくるのに気づく。


「悪いがっ! それがてめえの敗因だぜ!」


 突如、サソリの前から俺は姿を消す。そしてサソリの背中に乗っている。


「クククッ。『移動したやつの背後に移動する能力』だ。ひゃはははっ!」


 最初にサソリの尾を殴り、弾き飛ばす。そして、胴体の皮膚を剥がしていく。


「ふひひひっ! 苦しいか? なあ! たぶん襲われた連中はもっと苦しかったと思うぜ!」


 最後に脚で踏み潰す。サソリの体液が顔にかかる。


 周りを見ると、尾を吹っ飛ばしたサソリも含めて、数匹のサソリが囲んでいた。


「クククククッ! ふひひひゃははっ! いいねえ! おもちゃがいっぱい向こうからやってきやがった。いいぜえ。遊んでやるよ。ただし、使い捨てだがなあ! ひゃははっ!」


 俺は『軽くする能力』を使い、サソリの死体を持ち上げ、大群に投げる。他のサソリたちは空中に浮く死体に注目する。


「クククッ。やっぱり単純だなあ? ええ? 動く物の方に目がいくなんてよお!」


 俺の方に警戒が緩んだサソリの一体の胴体を貫く。そして、そいつのハサミの部分を引きちぎり、別のサソリに刺し込む。


 ズシャア!


「これで三体だ!」


 サソリたちは俺の動きを警戒してか、向かってこない。だが、俺はハサミを再度引きちぎり、かまえる。


「おいおい! 来ねえのか? ならこっちから行くぜ!」


 地面を蹴る。自分の体を軽くしたからか、すぐにサソリの前まで行く。


 もちろんサソリも毒針を刺そうとしてくるが、それをハサミで防御し地面にハサミごと突き刺し固定する。


「おらあ!」


 サソリの胴体を脚で踏み潰し、やがてサソリは動かなくなる。


「さあて! ここにいるのは残り3匹ってところか……。全部駆って残りも潰しにいってやらあ!」


「もお! 待ってよお!」


「なっ!」


 そこにはあのピンク髪がいた。そして、サソリの一体が襲いかかろうとしている。


「来てんじゃねえよ! 馬鹿野郎!」


「えっ?」


 まさに毒針がベガに向かおうとしていた。


「くっ!」


 俺は能力を使い、サソリの背中に移動する。


 バシュッ! ドシュッ!


 そして、サソリの尾を弾き飛ばし、頭部を蹴り潰す。


 だが……。


 ブシュッ!


「うぐっ!」


 背後から来るサソリの毒針が俺の腕をえぐる。赤い血が砂に染みつく。


「うおおおお!」


 俺はそいつの頭部を殴る。すると、豆腐みたいに頭は弾き飛んだ。


 やがて、そいつも動かなくなった。


「はあっ。はあっ。はあっ」


「……アルタイル?」


 俺は残りの一体を睨みつける。そのおかげかはわからないが、そいつは砂漠の奥に逃げていった。


 そこで俺は膝をつく。血が流れる腕を押さえながら、ベガに言う。


「……てめえ。ふざけてんのか? 弱いくせに危険なことしてんじゃねえよ!」


「…………」


 少女は自分のしたことに後悔をしていたようだった。それを見ると俺は説教をする気がなくなった。


「……俺に仲間はいらねえよ。いるのは俺自身の力だけだ。……だから……」


 俺は目を閉じて言う。


「もう……俺に関わるな」


「嫌だ!」


「は?」


 俺はこいつの言ってることに困惑した。


 なに関わろうとしてんだよ。現にお前は俺に迷惑しかかけてねえじゃねえか。


「アルタイル……いなくなる前の日も……同じこと言ってた。……関わるなって。……一緒にいると、ろくなことがないって……」


「…………」


「だから! お願い! 私にもできることをさせて! 一緒に働かせて!」


「お前みたいなやつに何ができるってんだよ!?」


「できるよ! 役に立てるよ!」


 そう言うと、ベガは俺の腕をつかむ。


「おい! 何やってんだ!」


「いいから! 見せて!」


 ベガは俺の腕に手をかざす。すると、その周りに水色の光と青色の光が舞う。


「何をやってんだ。お前」


「浄化魔法と、回復魔法をかけてるんだよ。毒も無くさないとね……」


 俺の腕の傷はたちまち消えていった。


「てめえ。……魔法が使えんのか?」


「うん。昔、ちょっと教わっててね」


 俺は小さく舌打ちをする。魔法って物はあまり好きじゃない。


 とはいえ、今はそれのおかげで助かったのは事実だ。サソリの毒は人間にあまり効果が無いといっても、あの大きさなら話は別だ。


 俺はベガの状態を確かめる。


「……怪我は……してねえのか?」


「うん……」


「……そうか……」


 俺は再び歩き出す。


「…………行くぞ」


 そう言うとそいつは笑顔になる。


「うん!」


 そして、勢いよく返事をする。



# # # # # # # # # # # # # # # # # # # # # # # # # #



 しばらく歩いた時、遠くに砂ぼこりが舞っていた。


「……なんだありゃ」


 奥から大量のサソリがやってくる。そいつらは一心不乱に俺の方へ向かってきた。


「まるで軍隊のように統率をとってやがる。さっき逃げたサソリが呼び寄せたのかあ? ずいぶん人間らしい動きをするじゃねえか……」


 そう。あまりに人間味がありすぎる。まさか……そういうことか?


 俺はベガを隠すように後ろにまわす。サソリの大群は目の前で止まり、こちらを見つめる。


「……なんだ? 攻撃してこねえのか?」


 サソリたちは後ろから、なにやら道を空けていく。そこからある人物が歩いてくる。


「……なるほど。どうやら、黒幕ってところかあ? お前は?」


「ええ。そうよ」


 そこには黒く長い髪で、腰にサソリの尾のついた女がいた。


「私はサソリの亜人のパメラよ。フフフッ。よくも私の仲間を殺してくれたわね」

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