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異世界の執行人  作者: Kyou
第3章 最強は叫ぶ
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プロローグ 『敗北者の行方』

「……ちく……しょう……」


 地面の暑さに俺は目を覚ます。


「ここは……砂漠か……?」


 あの吸血鬼野郎……くそ遠いところまで吹っ飛ばしやがって……。


「うっ……」


 立ち上がろうとするも……うまく脚が動かなかった。地面と太陽の両方から熱を受ける。


「がはっ!」


 口から血も出た。こんなところで俺は死ぬのだろうか……。


 俺は……最強だ……。だが、無敵じゃあない。


 砂漠の中で……俺に……助かるすべなど無いのだ。


「くくくっ……これも……罰か……。誰かを引きずり下ろしてでも……強くなりたいと思った……俺の……」


 俺は再び目を閉じる。あの吸血鬼には殺意を持ったままだったが、そんなことはあまり重要ではなかった。


 最強の……能力か……。それを扱うには、俺は器ではなかったってことか……。


「……ル!」


 不意に、俺の近くに声が聞こえる。


「……アルタイル! しっかりして!」


 誰かが……俺を呼んでいるのか……。



# # # # # # # # # # # # # # # # # # # # # # # # # #



「ごめんよお……」


 泣いている声でそいつは話す。


「僕も……もう止められないんだ……」


 そいつは何かを食べていた。むしゃむしゃと……何かを……。


 それは脚だった。そいつは誰かの脚を食べていた。


「ごめん。……ごめんよお」


 そして……ようやく俺は気づく。


 食べられていたのは、俺の脚だった。


「……ッ!」


 そいつはもう片方の脚も引きちぎる。俺はその痛みに身悶えそうになった。


 やがて、そいつの正体を理解する。


 その顔は……俺自身だったのだ。


「うう……」


 そいつは俺の体を食らう。だんだんと俺は感覚が無くなってきた。



# # # # # # # # # # # # # # # # # # # # # # # # # #



 …………。


 …………あ?


「ここ……どこだ?」


 そこは砂岩や石でできた家だった。慌てて俺は体を起こすが、辺りには誰もいない。


 同じく砂岩でできたベッドから立ち上がり、その建物を出る。そこには、あの砂漠が広がっていた。


「……どれだけ飛んできたんだ? ここはどこなんだ?」


 すると、突然横から来る気配に気づく。


「……アルタイル?」


「は?」


 そこには一人の少女がいた。少女はピンクの髪を持っていた。そいつは俺を見るやいなや、飛びついてきた。


「あ? なんなんだよ!?」


「良かった! アルタイル! 本当に生きていて!」


 アルタイル? なんで俺のことをそう呼ぶんだ?


「とにかく! 離れろ!」


「え? どうしたの? アルタイル? いつもと全然口調が違うけど……」


 奥から、ある女性がやってくる。


「……ベガ。その人から離れてあげて……」


 その女性は白く長い髪を持ち、ずっと目を閉じていた。


「私はエリン。あなたとは話があるわ。少しこっちに来てもらっていいかしら?」


「……ちっ」


 俺は舌打ちをする。突如こんなところに来て、状況がつかめないからだ。


 本当にイライラする。だが……。


「まあ話すしかねえわな。仕方ねえ。ついてってやる」

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