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異世界の執行人  作者: Kyou
第2章 ユニギリムでの、トウソウ
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『動かない私』

 サクラザカがここを出てから二週間。


 その間、私はずっと館に引きこもっていた。


「やあ! アリアちゃん! 今日も早起きをしよう!」


 寝室にクロエさんがやってきた。彼女は差し入れにカフェオレを持ってきていた。


「……それ、大丈夫なの? 腐ってない?」


「やだなあ。ちゃんと浄化魔法かけたから大丈夫だよ」


 私はそれを受け取り、飲み始める。


「…………味薄いわね……」


「ありゃりゃ……」


 どうやら、浄化魔法をかけたせいで中の成分も消えてしまったようだ。


「じゃあ。私ちょっと集会所に行ってくるから、ちゃんと起きてね!」


 そう言って、クロエさんは部屋を出ていく。


 差し入れには新聞もあった。それを開き読んでいく。


「……『突如、財団に反発する吸血鬼が出現』……『名前はサクラザカ』……か。……完全に指名手配されてんじゃないのよ」


 私は呆れながら笑う。そして、その新聞をベッドに投げ捨て、部屋を出ていく。


「……たまには……外に出ないとね……」



# # # # # # # # # # # # # # # # # # # # # # # # # #



 どうやら、外の雨は二週間前の豪雨よりは弱かったようだ。


 傘をさして、外へ出る。道を歩き、畑の隣に入っていく。


 そこには新しく作った墓があった。


「……ライリーさん」


 彼のことを思い出すと、なぜか苦しくなる。ライリーさんは本当の父親以上に、私を大切にしてくれていた。それは彼に会う度に理解できた。


 私は右目に触れる。それは包帯が巻かれていて、まだ見えていなかった。


 だが、その目の先には何かがあった。私の知らない何かが……。


「……お母様」


 なぜか、あの日からその人の姿が思い浮かぶ。これまでは一度もそんなことは無かったのに。


 どうして……。どうして今になって……。


「…………サクラザカ……」


 彼が……もうこの館に帰って来ることは無い。だけど、私は彼のことを忘れることはできなかった。


 私を守ってくれた……いや、守ってくれている彼のことを……。


 忘れることは……できない。

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