『動かない私』
サクラザカがここを出てから二週間。
その間、私はずっと館に引きこもっていた。
「やあ! アリアちゃん! 今日も早起きをしよう!」
寝室にクロエさんがやってきた。彼女は差し入れにカフェオレを持ってきていた。
「……それ、大丈夫なの? 腐ってない?」
「やだなあ。ちゃんと浄化魔法かけたから大丈夫だよ」
私はそれを受け取り、飲み始める。
「…………味薄いわね……」
「ありゃりゃ……」
どうやら、浄化魔法をかけたせいで中の成分も消えてしまったようだ。
「じゃあ。私ちょっと集会所に行ってくるから、ちゃんと起きてね!」
そう言って、クロエさんは部屋を出ていく。
差し入れには新聞もあった。それを開き読んでいく。
「……『突如、財団に反発する吸血鬼が出現』……『名前はサクラザカ』……か。……完全に指名手配されてんじゃないのよ」
私は呆れながら笑う。そして、その新聞をベッドに投げ捨て、部屋を出ていく。
「……たまには……外に出ないとね……」
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どうやら、外の雨は二週間前の豪雨よりは弱かったようだ。
傘をさして、外へ出る。道を歩き、畑の隣に入っていく。
そこには新しく作った墓があった。
「……ライリーさん」
彼のことを思い出すと、なぜか苦しくなる。ライリーさんは本当の父親以上に、私を大切にしてくれていた。それは彼に会う度に理解できた。
私は右目に触れる。それは包帯が巻かれていて、まだ見えていなかった。
だが、その目の先には何かがあった。私の知らない何かが……。
「……お母様」
なぜか、あの日からその人の姿が思い浮かぶ。これまでは一度もそんなことは無かったのに。
どうして……。どうして今になって……。
「…………サクラザカ……」
彼が……もうこの館に帰って来ることは無い。だけど、私は彼のことを忘れることはできなかった。
私を守ってくれた……いや、守ってくれている彼のことを……。
忘れることは……できない。




