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頃丸理、エバーワールドに落ちる。

 私は、頃丸里コロマルリ。しがない研究家である。蔵書に埋もれ、時間になれば私を「先生」としたう者たちの前に立つ。今、齢28。この職を始めたのは4年前。



 始めた頃は、刺激的な毎日でとても楽しかった。


 だが、回数を重ねれば重なるほど一つごとの記憶が薄れて行く。

 私はこの仕事で、きっと新たな発見をすることができるだろうと期待していた。満足感はもうないに等しい。

 わたしはこの空腹感に耐えきれず、自ら宇宙へ旅立つことを志願した。


 周囲の人は困惑し、一心に私へ考え直すことを求めてきた。


 魅力のない言葉には耳を貸さず、自己の意思を通す私の行動が届いたのか、すぐに新たな発見を伝える情報が飛び交った。

 志願先にもこの便りは届き、私の見慣れたこの場所から逃げ出す準備は整った。



 見つかったのは、計算上、宇宙の中心部分とされる位置に存在する惑星だ。

 わたしたちの住む星と同じように昼と夜に別れた星。水が存在し、大地には緑がある。



 先に送られたカメラ機器からの映像は、決して目新しいものではなかった。だが、決定的に我々の興味を引くものが写されていた。

 


 星に住む住人たちである。この住人たちは、見るに健康体であるのに人口が少ない。


 いや少なすぎた。


 カメラに写されたのは一国だけであったが、我々の歴史にもここまで人の少ない集落はなかった。


 全員家族という繋がりでもない。


 住人の身体的特徴は、当時のわたしを含め同じ船の仲間の意見は、


 軽量化された無駄のないフォルムをしている。だ。


 さて、我々と同じで二足歩行をするこの生物は我々の言葉を解することができた。彼らは、我々の統一語でメッセージが送られてきた。



「我、この輝きの国の王なり。機械仕掛けの目を所持する異なる星のものたちよ。我が高き山に囲まれし城へ見えよ。」



 高き山に囲まれし城というのは、輝きの国の中心に位置した巨大なカルデラにある城の事を指した。


 城といっても容易く想像した城とは全く形状が異なる。城は大木の中にあるのだ。


 船は常に輝きの国の上空に浮いていた。船内で


「念願が叶うのは早かったですね。」


「気候の良く似た星であってよかった。専用スーツがいらない。」


と、喜びの言葉が飛び交った。


「謁見をするのですから、我々のなかでリーダーを決めませんか。」


9名のなか、わたしが一番名声があることから私が選ばれ、操縦を任された。全員の命を自身の両手に託し、船は大気圏に突入した。



 激しい振動の中、奇妙な体の変化に気づいた。

 瞬きをするほどの一瞬で、手から離れてはいけない機械が遠のいていた。


 モニターで見ていた星の住人と同じ形に、それぞれ誰が誰かわかるように姿が変わっていた。

 ただ変わっていないのは、背負った甲だけ。



「これは想定外だ」






 見えているものが変わったのではなく、自分たちそのものが変化していることに気づくのは早かった。


 体が座席より小さくなったことにより、数人が天井に叩きつけられた。

 船内には、悲鳴が飛ぶ。


「今座席についている者は耐えろ。離れた者はこれから対処する。」


 座席にしがみつきながら、緊急時に強制的に座席に戻されるスイッチをおした。


 力の向きに逆らい元の座席ににつく。

 天井には血痕が残った。


「パラシュートをこれより開く。振動に気を付けろ」


次星にくる同じ星の者には、話さなければいけないことがいくつもある。

 とか、

何故わたしが最初なのだ。


 と考えたのちパラシュートのスイッチを押した。

 頭が浮くのを感じ、目の前は暗転した。 

 






「先生、起きてください。」

 一声にわたしは気がついた。あの後気絶したようだった。

「先生の命がけの判断、操作に我々は、命を救われました。ありがとうございます。」

「ありがとうございます」

「感謝よりまず、あのカルデラに降りることはできたのか」

 成功しています。と答えるのを耳にしたあと、外に目を向ける。

 広大な湿原と禿げ山がしっかりとその場にあった。

 霧がかった景色は幻想的であった。

 皆に支えられながら、外に歩みでる。水草の青々とした香りが辺りに満ちていた。


「あれが城ですか」

 霧を貫いた幹が見えた。

「城の方向から誰か来ますよ」

 霧にうつる影は、同じ形の人型で、こちらをうかがっているようだった。


「私たちは敵ではありません。この国の王に御目にかかろうと足を運んだまでです。」


 影は顔のわかる位置まで近づき

「怪我人はいますか」

「5人ほど」

「分かりました。城に到着しだい手当てをします。」

 使者は私の顔をのぞきこみ、

「あなたは、先につれてゆきましょう。」

 間近で見たからか、使者は宇宙の闇のようであった。

 わたしは使者に体を預け、城に向かった。

「失礼ながら、我々は貴方たちがこの星に降り立つ事ができるとは、予想していませんでした。」

 使者の足取りは泥に絡まれることがなく、異様に速い。

 担がれている私には全く振動が伝わってこなかった。


「何故我々の言語を解することができるのですか」

「空から落ちるとき姿が変わったでしょう?それと同じように言語もここに入る時点で変わっているのですよ。」



 大木が霧の中でもはっきりと見えるようになってゆき、私だけ先に城についた。

 大木は水の張られた堀に囲まれており、たった一つの大きな門があるだけ。使者は自身とわたしが通るだけの隙間を開き城内へはいった。

 城内には、装飾という装飾はなく、広いだけで簡素そのもの。城門からすぐの広間には外からの光がふしぎと、密閉された空間に入ってきている。

 静かすぎて耳鳴りがした。

 広間についた私たちは小さな扉に入った。

 下ろされた私は、簡易ベットのようなものに横にされる。

「気づいていないんだろうけど、あんた額パックリ切れてんだよ。」

 何をいっているんだかわからない。額に触れようとするが、その手を止められる。


「ほら、鏡見てみなよ。」

 渡された小さな手持ち鏡をのぞきこむと、確かに額に大きな傷があり、まだ出血を続けている。

「分かっただろ。すぐに治療するから」

 使者はポケットから缶の入れ物を出す。そのなかにはキラキラした粉が入っていた。

「それはなんですか」

「この国がグラマラ、輝きの国って呼ばれる理由。じっとしてて」


 私は、使者にたいして質問を続けた。


「貴方、私たちが星に降り立つことは予想していなかったと言っていましたよね。あれはどういうことなんですか」

「これまでも様々なエイリアンが来た。だがどれも、降りてくるときに全滅してたんだよ。」

「貴方たちの王も、それを視野に入れて?」


治療をしていた手を止めて、私の目を見る。

「もちろん。今回は堅苦しい言葉遣いのエイリアン 。他にもあんたたちみたいなのはいたよ。こうして無事湿原に降りてこられたのは奇跡か、それとも船が良かったのか」

硬い笑いをする。

「ぼく、ツキヨ·アライザ。あんたがこの星に来たことを祝福するよ。」

「頃丸里です。光栄です。」

握手を交わした手から体を起き上がらされた。もう額の痛みはない。先程の手鏡を覗いても傷はなかった。

 


 ツキヨは扉に寄りかかって立っている。

「後もう少し明るくなればみんな起きてくるから。」

「わたしの仲間たちは?」


「…」


冷ややか、ではなく、無邪気なメッセージをツキヨは顔で作った。

 この顔の意味。

 それは私たちが降り立った場所に答えはあるのか。

 ツキヨは、泥に足が取られることがなく私を担ぎこの城まで連れてきた。


 もし足を取られた場合、どうなるのか。消極的な答えが私には出てきた。


 先程の缶をとりだして

「この星じゃ、この粉が体に含まれていない生命は、ただの動く燃料とか食物なんだよ。ぼくは食べなきゃいけないタイプじゃないから襲わなかっただけ。特に君たちの体は大きいみたいだから、すぐに狙われるよ」


 予想していたことより残酷な結果だ。



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