1話 三組に一組
「将来はぜったい、結婚したい!!」
結婚、って素晴らしいものだと思う。
一昔前はお見合い結婚、なんてことも多かったけれど、今は殆どが恋愛結婚。
知り合って、お互いを好きになって付き合う。それから喧嘩したり、仲直りしたり…距離が離れたり、縮まったり。そういうのを重ねて、やっと結婚する。お互いを支え合う、決して派手ではないけれど、小さな幸せを感じる毎日____なんて素敵なんだろうか。
昔から、少女漫画の世界に憧れて育ってきた私。“結婚”というものに、少し夢をみている。
もちろん、現代の日本の現状は知っている。今や三組に一組は離婚すると言われていて、周りの友人の家庭でも離婚というのはそう珍しくはない。
そして、何より私の家庭もその危機に直面している。
「この携帯代は何に使ってるのよ。」
「先月の出張のお金を立て替えてんだよ。」
「いや、先月もそう言ってたでしょ!?」
「うるせえな!」
父と母が喧嘩する声だ。
毎月、携帯代金の請求が来るこの日はいつもこうだ。
父は私が幼い頃こそ、私をお風呂に入れたりしていたそうだが、妹が小学校に入って落ち着いてきた頃だろうか。この先のことを考えて父の稼ぎではやっていけない、と感じた母が働き始めると、一家を支える大黒柱という意識が薄れたのか何もしない父となった。一種の“甘え”のようなものだったのかもしれない。
仕事こそ真面目だが、家に帰ってくるとたとえ母より帰りが早くとも家事をするわけでもなく、ずっと携帯をいじるだけであった。
それにも関わらず、母の帰りが遅いと空腹で不機嫌になり、家が汚ければ家族を怒鳴り散らし、必要なもの不必要なものに関わらずゴミ袋につめて「俺はやった」と満足する。
極めつけは毎月八万円にも上る携帯料金だ。
何に使っているのか、母が聞いても絶対に答えない。聞かれると途端に怒りだす。
父が家に入れるお金から、携帯代を除くと母の稼ぎを下回る。それなのに家事はしない。子供の私や妹にだって、これが“普通”ではないことは容易に理解できた。
「二人で支えるものを、一人で支えるのが一番つらい」と母は言う。好きで結婚したとしても、こうなってしまうのだなという虚しさと共に、家族が壊れてゆくのを感じた。
母の疲れきった精神が、結婚生活の限界を告げているようであった。
これはそんな私達家族が離婚と向き合っていく物語。




