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トイレット・シンキング

作者: なすび

勢いで書いた部活の部誌に載せるやつ

「どうしてこうなった……」


不意に出たその呟きを聞くものはいなかった。




とある日のことだ。自分は友人と大型スーパーへ買い物に来ていた。

店内を一通り回り終え喫茶店で休憩をとっていたところ、急に催してきたため友人に一言告げた後トイレに向かった。しかし、この時自分は、自らの不注意が原因とはいえこのような事態に出くわすとは考えてもいなかった。




か み が な い




気づいた時にはもう手遅れだった。自分は既に用を済ませており、別の個室へ移動することもままならない。予備のロールを入れるケースを確認するも空だった。

普段ならば、このような事態に陥る前に気づくのだ。 自分は公共施設のトイレを使用するとき、必ず紙の残量を確かめていた。だが、今日訪れた店舗は友人に連れられて初めて来た場所だった。そのためトイレの場所を探すのに手間取り、確認をする余裕がなかったのだ。


この窮地をどう切り抜けるか。そう考えていると、個室の外から足音が聞こえてきた。誰かがトイレへとやって来たようだ。その時、自分の頭に電流が走った。




──────この人にトイレットペーパーを上から投げ入れてもらえば良いのでは!?




ドアを隔てているため、どのような人間かはわからないが、さすがにこのような事態に対して協力を拒むことは無いだろう。他の個室の予備のロールを投げ入れるだけだ。たいした手間ではない。それに、トイレに紙が無かったら誰だって困る。自分がもし同じ状況に出くわしたら、もし、自分が助けてもらえなかったなら、と考えれば、自ずと行動に移るだろう。

そう、期待を込めて声をあげようとした。


────だが、自分は声を出すことができなかった。否、声を出すことの無意味さに気が付き、諦めたのだ。




──────その個室の上部、そこにトイレットペーパーのロールが通るような、大きな隙間は無かったのだ。




振り出しに戻った。

否、状況は悪化したと言っていいだろう。外からトイレットペーパーを得ようとも、個室へ入れられるような隙間が無い。それに、トイレへ入ってきてから既に10分が経過している。このままでは肛門へのダメージが深刻なものとなる可能性がある。友人には調子が悪いと連絡を入れておいたが。いつまでも待たせるわけにもいかない。

そうなるともう、選択肢は2つしかない。誰もいないうちに別の個室へこっそりと移動するか、ティッシュペーパーをトイレットペーパー代わりにするかだ。だが、どちらの方法も問題がある。

別の個室へと移動する場合、本当に誰もいないという確証が無い。トイレ内部は常に換気扇が回っており、小さな音が掻き消される上、個室のドアによって音が遮られている。自分が気づいていないだけで、他にも人がいる可能性があるのだ。

一方、ティッシュペーパーで紙を代用する場合、トイレが詰まるかもしれない。紙が切れていることは店側の不手際ではあるのだが、自分が確認を怠ったせいでもある。トイレに流してはいけないものを、そんな理由で流し、詰まらせることが許されるだろうか。


どちらの方法もリスクがある。しかし、どちらかを選択しなければ、トイレから出ることができない。ティッシュペーパーを捨てられるゴミ箱でもあれば、問題は解決するのだが……。 いや、待てよ。ゴミ箱ならあるじゃあないか。たしか、このトイレの入り口にはゴミ箱があった筈だ。汚物を持ち出すのに抵抗はある。しかし、使用したティッシュペーパーは、買い物で手に入れたビニール袋を使って持っていけば、匂いが漏れることもない!これならば、全ての問題が解決する!


友人を待たせている。早くせねば。と、自分はポケットからティッシュペーパーを取り出した。




水 に 流 せ る テ ィ ッ シ ュ




……………………。




「よう、体調はもう大丈夫なのか? 」

「ああ、もう大丈夫だ。待たせて悪かったな」

「じゃあ、さっさと行こう。そろそろ夕飯の時間だし、帰りにどこか寄って行こうぜ」




おしまい

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