2話 課題クリア!
「よし、終わり!」
あれから数十分後。
家具は全て家の中に設置し終わった。
家具は屋敷に合う様に和風の物で統一した。
この屋敷はやっぱり広かった。
特徴としては、玄関が無い。
外に出る場所は、庭に面している縁側しかない。
一階は居間、台所、洋式トイレ、浴室に空き部屋が三つ。
二階は書斎、寝室、空き部屋が一つだった。
居間にはちゃぶ台、座布団、箪笥、予備の座布団七つを。
台所には料理道具一式、食器棚、食器一式、箸、フォーク、スプーン、冷蔵庫を。
トイレにはトイレットペーパーを。
浴室にはシャンプー、リンス、ボディーソープ、タオル五つ、バスタオル五つ、洗濯機を。
書斎には本棚、机、座布団、筆、書道道具一式、紙百枚、ランプを。
寝室には布団、枕、箪笥、予備の普通の和服一式五つ、予備のふんどし五つ、予備の布団五つ、予備の枕五つを。
空き部屋にはそれぞれ布団二つ、枕二つ、箪笥、机、座布団、ランプを置いておいた。
普段は使わない物は、押し入れに仕舞ってある。
この中でも、トイレットペーパー、シャンプー、リンス、ボディーソープ、筆、ランプは魔法の道具(魔道具と言うらしい)なのだ。
トイレットペーパー、シャンプー、リンス、ボディーソープは、永久に無くならない魔道具。
筆は墨を使わずにかける魔道具。
ランプは永久に切れない魔道具なのだ。
お陰で、普通の家具はそんなにしなかったが、DPが一万から4310まで減ってしまった。
俺は縁側に座りながら考える。
「さて、家具の設置も終わったし、次は何をしようか。もう、一応全章読んだしな。あ、そう言えば、まだ転生した後の顔、見てなかったな」
俺は売買の章で手鏡を交換する。
10DPか、安いな。
「さてさて、どんな顔になってるのか。………………イケメンになってる…………」
いや、マジでイケメンになってるんだよ。
転生前は平均的な顔だったけど、今はつり目気味の眼に、二重のまぶた。
スッとした鼻に、薄い唇。
眉毛は少し細くなっている。
なんつーか、こう、キリッとした日本人の顔立ちのイケメンだ。
いやー、まさかイケメンになれる日が来るとは、思ってもみなかったよ。
「これだけでも、充分嬉しいな。でも、この後は………課題をやってみるか。確か、魔物を一匹倒すって課題があった。迷宮はまだ無いから、外に出るのか。あれ、外ってどうやって出るんだ?」
屋敷は散々見て回ったから、出入り口があるとしたら庭だろう。
「あ、迷宮核の書に聞けば良いじゃん。えーと、『庭の池が出入り口になっています』か」
俺は庭を歩いて、池まで移動する。
「この後は……池の中に入るのかよ」
疑いながらも、池に入っていく。
眼の下まで入ったが、全然息苦しくない。
そのまま頭まで池に入る。
そのまま前に歩いていくと、急に景色が変わって、森の中に立っていた。
「ここが外か?目の前は森。後ろは……」
後ろも森だった。
ただし、少し開けた場所に、真っ黒な大きい扉があった。
高さは10m位で、横幅は5m位。
厚さは50cm位だ。
その扉には龍のレリーフが大きく刻まれている。
その扉が、ポツンと森の中に立っていた。
「これが迷宮の出入り口か?随分でかいな」
まあ、それより今は魔物だ。
「じゃあ、早速行きますか、って、やべ!まだスキルの使い方も試してなかった!」
俺は魔物に見つからない内に、迷宮の中に入る。
中には、扉に触れたら簡単に中に入れた。
俺は庭のかなり広い場所に移動する。
「さて、まずは身体能力から試してみるか」
試しに全力でジャンプしてみる。
すると、一瞬で屋敷の二階の屋根を越えた。
俺は体を上手く動かして、どうにか庭を壊さない様に着地する。
「凄いな。あんなに身体能力が上がってたのか。これなら、身体能力は問題無さそうだな。次はスキルだ。まずは鬼刃」
えー、迷宮核の書によると、腕が剣や刀の刀身に変化する様にイメージするだけらしい。
なので、右肘から先が刀の刀身になる様にイメージしてみる。
すると、イメージした通りに腕が真っ黒な刀身になった。
「うわっ、なんか違和感が凄いな。まあ、使ってる内に慣れちゃうんだろうけど」
左腕も同じ様に変化させて振ってみるが、動きに不自由は感じない。
寧ろ、自分の身体だからか、使いやすい。
「じゃあ鬼刃は大丈夫だな。迷宮核はもう使ったし、龍炎はここじゃ試せないから、あれ、もう試す事が無いな。じゃあ、今度こそ行くか」
池から外に出る。
「………え?」
「ガゥッ!?」
外に出ると、目の前に大きな狼が居た。
思わぬ出来事に一瞬固まるが、向こうも驚いたのか、後ろに跳んでいた。
充分驚いたが、とりあえず………………。
「先手必勝!」
両腕を刃に変えて、狼に斬りかかる。
「ガルッ!」
だが、それを狼は後ろに下がって避ける。
が、俺は身体を一回転させて、左腕で斬りつける。
流石に狼も空中では避けれづ、もろに攻撃をくらう。
狼もその後はフラフラしていたが、直ぐに倒れて動かなくなった。
「ふぅ、意外と簡単に終わったな。てか、初めての殺しなのに、何も感じてないな。なんかいじられてるのか?ま、別に良いけど。ん?」
俺が考えていると、狼の死体が光の粒子に変わって、俺の身体の中に吸い込まれていった。
「なんだったんだ、今の?そうだ、迷宮核の書は………お、DPが200増えてる。課題の方はどうなってるんだ?」
課題の章を見てみると、一つの課題が光っていた。
その課題に触れると、課題クリアの報酬が出てきた。
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弐の章 課題の章
・魔物を一匹倒そう!
クリア報酬
100DP
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「100DPか。じゃあ、さっきの狼は100DPだったのか」
物品の章も見てみる。
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肆の章 物品の章
・ウルフの死骸
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「さっきの狼の死骸か。とりあえず一回迷宮の中に戻るかな」
一応、課題はクリアしたので、迷宮の中に戻る。
俺は縁側に座って、庭にウルフの死骸を出す。
「うーん、やっぱり傷が大きすぎて素材に使えそうにないな。確か売買の章でDPと交換出来た筈……100DPか。これで、4600DPになったな」
そう言えば、迷宮の階層ってどうやって増やすんだろう。
「『迷宮の章でDPを使って増やす事が出来ます。消費DPは一階層ずつで倍になっていきます』か。一階層は………げっ、5000DPかよ」
多すぎだろ、いくらなんでも……………。
これって、課題をやれって事なのか?
いや、まあ、家具に使わなきゃ大丈夫だったんだろうけど。
「仕方ない、また行くか。まだ龍炎も試してないしな」
俺はまた池から外に出る。
今度は魔物は居なかった。
「まずは魔物を探すかな。何処に居るかは全く分からんけど」
とりあえず前に行ってみる事にする。
「ウルフなら、最低でも五匹は倒さなきゃだな。他の魔物はどうか知らんが」
そのまま歩いていると、何か鳴き声の様な、喋り声の様なものが聴こえてきた。
俺は咄嗟に木の上に隠れた。
そのまま隠れていると、数匹の魔物が歩いてきた。
人型の魔物で、緑色の肌でシワだらけの顔をしている。
俺も転生前はゲームをしなかった訳ではないので、あの魔物は知っている。
(ゴブリンか……数は三匹。武器は、木の棍棒、かな?こいつ等だけなら、多分倒せるだろうけど、どうするか………)
どうするか、というのは、今こいつ等を倒してしまうか、後をつけるか、という事だ。
後をつければ、多分群れに合流する筈だ。
そうなれば危険だが、DPを増やすには良い手段だといえる。
俺は…………。
(よし、後をつけよう)
後をつける事にした。
勝算が無い訳では無い。
群れに合流したら、最初に龍炎を使うつもりだ。
多分、それでかなりの数を倒せるだろう。
確証は無いが。
と、どうやら群れに合流したみたいだ。
一応柵で囲まれた場所に、木の枝で作られた粗末な家と、多くのゴブリンがいる。
奥の方にある周りよりは立派な家は、リーダー格の家だろうか。
「ま、とにかく始めるかな。[龍炎]」
すると、俺の掌から洋風のドラゴンではなく、和風の蛇の様な形をした龍の形をした、銀色の炎が出てきた。
その龍炎は、俺が指示を出すまでは待機させられるみたいで、俺の首の辺りで浮いている。
「銀色か、目立ちそうだな。まあ、良い。行け、龍炎!」
俺が指示を与えると、龍炎は真っ直ぐにゴブリンの群れに飛んでいった。
凄い速さだな…………。
龍炎に気づいたゴブリンが慌てているが、叫び声を上げるだけで、まともに対処出来ていない。
そして、龍炎がゴブリンの群れを襲った。
その結果………………。
「…………………ヤバくね?」
ゴブリンの群れが全滅した。
死体も完全に消滅したみたいで、光の粒子が俺に向かってくる事は無い。
「って、あれ、なんか凄い目眩が………」
頭痛と吐き気もする。
一体どういう事だ?
迷宮核の書を出して、問答の章を開いて聞いてみる。
「『魔力が切れたのだと思われます。龍炎に全ての魔力を注ぎ込んでしまったのではないでしょうか』って、ああ、成る程」
だからあんなに凄い威力になったのか。
じゃあ、魔力を操作出来ないのか、と聞いたら、訓練すればスキルが手に入るらしい。
それまでは龍炎は封印だな。
「そろそろ動ける様になったし、移動するか。流石に、もう戦闘はしたくない」
いつの間にか、迷宮からだいぶ離れていたみたいだ。
空ももう暗くなっている。
迷宮の場所は、なんか感覚で分かった。
迷宮主だからかな。
迷宮までは戦闘もなく帰る事が出来た。
俺は縁側に倒れこむ。
「あー、疲れた。てか、この核部屋も暗くなるんだな」
核部屋も、空が暗くなり、星と月が輝いている。
「そういや、DPはどのくらいになったんだろうな。かなり増えてると思うんだが」
迷宮核の書を開いて確認してみると、DPは57100になっていた。
「うわっ、凄い増えてるし。あ、課題もクリアしてたんだな。これなら、当分は心配要らないか。そうだ、物品の章は……やっぱり何も無いか。まあ、これは自業自得だな」
これからは魔力の訓練をしよう。
じゃなきゃ、龍炎はずっと使えない。
「さて、もう夜だし何か食べるか!って、食材無いんだった。ん?そもそも腹が空いてない様な……」
迷宮主になったからか?
迷宮主って食べなくても平気なのか?
「まあ、別に困らないし良いか!じゃあ、寝よ、眠気はあるみたいだし」
俺は寝室に入り、布団と枕を用意する。
「あ、この布団気持ち良い。なんか良く眠れそう………な………」
俺の異世界初日はこうして過ぎていった…。