1話 屋敷と庭園
ドンッッッ!!!
「がっっっ!?」
俺は背中から響いた強烈な痛みに、強制的に目を覚ました。
「痛いなー、くそ。えーと、ここは?」
痛みに顔をしかめながら、体を起こして周りを見渡す。
そこは綺麗に整えられた庭園だった。
木々はみずみずしく輝いていて、池は涼しさを感じさせる。
そして、その中に昔ながらの和の風情を感じさせる、大きな二階建ての屋敷が建っていた。
「凄い屋敷だな……。って、あれ、髪が伸びてる?それに、裸!?何で?」
俺はこんなところに裸でいるのが恥ずかしいが、落ち着いて次の事を考える。
「とりあえず、あの屋敷まで行ってみるか。多分、ここは迷宮の中だろうし、あそこに何かあるだろ」
俺は立ち上がって、縁側から屋敷に入る。
「お邪魔しまーす」
そこは広い部屋だった。
畳が敷かれていて、それ以外には家具すら置かれていない。
「何も無いな、ってあれ、何だ、この本?」
気づいたら、右手に和綴じの本を持っていた。
黒に銀で龍の絵が描かれていた。
その本の中から、光が漏れ出ていた。
「何なんだ?とりあえず、開いてみた方が良いよな。明らかに何か関係あるし」
俺は本を開く。
そこには次の文章が書かれていた。
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この本は、[迷宮核]の書です。
貴方のスキルなので、自由に出したり閉まったり出来ます。
最初という事で、貴方には1万DPが与えられます。
これから頑張って下さい。
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この文章は、俺が読み終えると、どんどん薄くなっていき、やがて消えた。
「成る程な。確か、迷宮核の能力はDPを使って色々出来る、だったっけ?やってみるか」
やる事が見つからないんだ。
試してみるしかない。
「でも、どうやって使えば良いんだ?ん?」
首を捻っていると、開いたままのページに、文字が浮かんできた。
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壱の章 問答の章
弐の章 課題の章
参の章 把握の章
肆の章 物品の章
伍の章 迷宮の章
陸の章 売買の章
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「これは……目次か?壱の章、問答の章…。俺がさっきどうやって使えば良いのか口に出したからこれが出てきたのか?」
まずは今の持ち物を確認しなきゃな。
服があれば良いんだが……。
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肆の章 物品の章
・普通の和服一式
・ふんどし
・髪止め
・スキル玉
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「おぉ!あった、服!どうやって出すんだ?って、おっと。成る程、念じるだけで良いのか」
出したふんどし、普通の和服一式を急いで着る。
ふぅー、落ち着くなぁー。
俺って、小さい頃からばあちゃんに育てられてきたから、普段は和服だったんだよな。
まあ、これは侍が着るような袴もはいてるけど。
この長い髪も邪魔なので、髪止めを出してポニーテールみたいに結んでおく。
残りは、スキル玉か。
「これって何なんだ?詳しい説明とかは見れないのか?」
一旦、問答の章に戻って聞いてみると、どうやら、その文字に触れば見れるらしい。
俺はまた物品の章に戻って、スキル玉の文字を触る。
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スキル玉
説明|スキルをランダムで一個取得出来る。そのスキルが弱いか強いかは、運しだい。割れば使用出来る。
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「これって貰って良かったのか?ただでさえ強そうな種族になったのに……」
うーん、まあ考えても仕方ないかな。
もう貰ってるんだし。
「こういうのは、さっさと使った方が良いよな」
俺はスキル玉を迷宮核の書から出す。
スキル玉は無色透明の球体だった。
俺はそれを握り潰………そうとしたが、割れなかった。
おかしいな?強くはなってる筈なんだが。
スキル玉を庭に出て、地面に叩きつけて割る。
すると、地面が一瞬光った。
「………?これで新しいスキルが手に入ったのか?そう言えば、自分の所持スキルって見れないのか?」
縁側に座り、ページを確認していくと、どうやら把握の章で見られるみたいだ。
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参の章 把握の章
『ジンリ・リューロー』『0歳』
『種族・刃魔[変異個体]』«Lv1»
『職業・迷宮主』
『所持スキル』
<種族スキル>[鬼刃]
<職業スキル>[迷宮核]
<固有スキル>[龍炎]
<特殊スキル>[演算][高速思考]
<通常スキル>[刀術][体術]
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「貰えたのは龍炎か。説明はっと」
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[龍炎]★★★★★
説明|龍の形をした炎を操る。その炎は使用者に影響は及ぼさないが、他のものには、全てを焼き尽くす龍の業火となる。
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「えーと、凄そうなスキルだな。また生き残れる可能性が上がった。さて、これで持ち物もスキルも確認したな。次にいくか」
さて、次は何にするかなー。
決めた、次は迷宮の章だ。
さて、俺の迷宮はどんなのかなー、っと。
………………あれ?これってこの屋敷と庭園だよな?
他のページは、無いみたいだ。
マジか、本当に最初からスタートなんだな。
「詳しく調べるのは後にして、次は課題の章かな」
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弐の章 課題の章
・核部屋に家具を揃えよう!
・魔物を一匹倒そう!
・魔物を百匹倒そう!
・魔物を千匹倒そう!
・魔物を一万匹倒そう!
・迷宮を構築しよう! 等々
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「多いな。スクロール出来るって、どんな本だよ。まあ、とりあえずやる事は決まったか」
俺は売買の章を開く。
「家具を揃えて、更に俺好みの屋敷にしてやる!」
俺のどこか変なスイッチが入っていた。