表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小さな秘密と幸せの花園  作者: 雪雨サクラ
秘密の花園
2/3

story1 花園

6/18

内容一部変更いたしました。

7/21

内容一部変更いたしました。

本日、4月5日は私、花宮はなみや瑠璃るりの、中学デビューの日。


―———そうつまり、入学式なのだ。

中学受験をし、見事合格。友達も共に合格したため、現在待ち合わせ場所でその友達を待っている。

集合時刻より10分も遅れているのは、いつもの事なので気にしない。


私と友達の集合場所は、桜の木の下。

この桜雨さくらさめ学園は、桜並木で有名な学校だ。校門から昇降口までの道を、満開の桜が飾っている。校外からの観覧者も出るくらいだ。

桜以外にも、パンジーやチューリップなどの有名な花から、花に詳しいつもりの私でも知らないマイナーな花などもあり、全体的に花の種類も数も豊富。花粉症の人にとっては辛そうな学園だ。

―———すると、遠くから足音が聞こえた。

「ごっめん瑠璃!寝坊した!」

そう言って、くだんの彼女がやってくる。

真っ白な長い髪を揺らし、元気よく手を振っている。

髪の一部分が黒くなっているのは、生まれつきだという。

「おっそいよ、鈴ちゃん」

呆れたような声音で、私が言う。

「ごめんねッ!」

「はいはい……早くいかなきゃ間に合わないから、行くよ」

「りょーかいです!」

溢れんばかりの笑顔でそういう鈴ちゃん。

ニッコリと笑うその笑顔は、どこか作り笑顔のようにも見えた。……気がした。


*

「城永 舞」

「はい!」

白羽しらは すず

「……はい」

眠いのか、気だるげに返事をする鈴ちゃん。昨日何時寝たら、この時間に眠くなるのだろうか。

さっきからの呼名を聞いて改めて思ったのだが、この学園は女子の割合が多い。男子はクラスに10人いればいい方だろう。


————それにしても、鈴ちゃんと同じクラスになれてよかったなあ……――――

そう思う。鈴ちゃん以外で仲がいい子は、別の中学へ行ってしまったから。

―——―遠くに行ってしまった子もいる。

その子には、逢いたくても逢えない。

私一人の力じゃとても行けない、遠い遠いところに行ってしまったのだ。

―———私と鈴ちゃんと3人で、よく遊んだな……――――

遠くに行ってしまったのは、とても残念で、とても寂しくて、とても悲しかった。

でも、昔のことをいつまでも引きづっていてもしょうがない。

鈴ちゃんはちゃんと近くにいるし、同じクラスにもなれたのだ。これ以上は望めない。

―———―それに、遠くに行ってしまった子によく似た人形を見つけた。

人形、というよりかは、ぬいぐるみに近いのだろうか。

フリーマーケットに行ったとき、古ぼけた小さな古ぼけた人形。

その人形は、髪の色、髪型、目の色、服装など、とてもよく似ていた。

恥ずかしながら、その人形にはその子の名前を付け、全寮制のこの学園にも持ってきている。

―————その人形があることで、寂しさも少しは和らぐのだ。

「花宮 瑠璃」


「ぇ、え、ひゃい!?」

考え事をしている間に、自分の番が来たようで、名前を呼ばれる。

突然のことに頭が追い付かずに、反応が遅れたうえに、噛んでしまう。

クスクスと笑い声が聞こえ、顔に熱が集まるのを感じる。

鈴ちゃんはというと、誰の目で見ても明らかに大笑いしている。

「葉山 沙希」

「ッふッは、はい」

次の子の名前も呼ばれるが、笑い声が収まる様子はない。

いつになったら収まるのか私には見当もつかない。


そんな空気のまま呼名が終わり、入学式の後も鈴ちゃんにさんざんいじられ、そのまま昼寝という名のふて寝をし、そのまま朝まで寝てしまい今日という一日が終わった。


*

次の日は月曜日で、学校があった。

日曜日が入学式の学校があるのかないのかは知らないが、この学園は新入生に精神的な疲れがあるのではないかということは考えもしないのであろう。もっとも、新入生の中でも精神的な疲れがあるのは私だけだろうが。

学生寮と校舎は距離が近いため、人にもよるが徒歩数分で行くことができる。


*

校舎に入り、何度か迷いながらも教室に着くと、既に一人の女性がいた。

スーツを着ているが、髪は上のほうで一つにまとめてあり、小ぶりだがイヤリングも付け、薄めのピンクのネイルもしているようだ。

が、その女性は教卓の前に座っていた。この状況は、非常に理解し難い。

スーツを着ているがギャルになりかけのような女性が教卓の前に座っているという状況など、誰が理解できるのだろう。

……認めたくないが、あの女性は”先生”ということなのだろうか。

「あ、来たねラストの新入生!私がこのクラスの担任になった、結城ゆうき愛良あいらだよ!よろしくね!」

先ほどの女性せんせいが私に話しかける。

教室内を見ると、すべての生徒がそろっているようだった。珍しく寝坊をしなかったのか、鈴ちゃんも席についている。

「さーてっ!今日から君たちの担任になる、『結城愛良』です!年齢は永遠の15歳です!」

先生的には笑わせるつもりだったのだろうが、実際はしーんと静まり返る。

「え!?ちょ、笑ってよ!!笑うところだよそこは!!うー…じゃ、君たちには重大発表教えてあーげないッ!」

完全に拗ねている。

というか、重大発表なら教えておいた方がいいと思う。

「ちょ、教えて下さいよ!重大発表!!」

生徒の一人がそういう。

「ふっふふーん…そこまで言うなら、教えてやってもいいですぞ!聞きたいか諸君!」

そこまで言うならってほど言ってないけどつっこまないでおく。

「あのね、君たちには無限の可能性が眠ってるの。漫画とかじゃ『魔力』とか『魔法』って言われてる存在が、君たちには眠ってる」

嘘のような、冗談のような、そんな発言を耳にし、一人の生徒が口を開く。

「え、先生漫画の読みすぎじゃあ……」

「違う。これは紛れもない真実だよ」

―———そう言う先生の目は、真剣だった。

さっきまでの目とは違う、真実を語る目。

先生の雰囲気から状況を察したのか、教室内が静まり返る。

「実はね、この学園の敷地内に、普通の…魔力が眠っていない人には見えないところがあるの。そこには、何千年も前に溢れ出した魔物が封印されている」

”魔物”

”封印”

漫画やアニメの中以外では、殆ど見聞きすることの無い単語。

その言葉に、私は少しの恐怖を覚えた。

「でも、その魔物を封印している結界が、あと1年で解けてしまう。つまり、1年後には魔物がこの世界にあふれ出してしまうってこと」

魔物があふれ出す、という言葉に、数人の女子生徒がひっと声を上げ、一部の生徒が教室から逃げ出していった。

「だから、君たちに協力してほしいの。この世界に、魔物があふれ出すのを防ぐためにね。高等部の先輩たちにも協力を依頼してあるから…お願い!危険なのは先生たちも承知の上でお願いしているの。

実際、死人も出ているし。

協力してくれなくても、先生たちと高等部の先輩たちで頑張って全滅させるわ。

でも……でも!正直言って、全滅させる前に全員死ぬ。だから……だから……

数人でいい。数人でいいから、協力してくれる人は……この教室に残ってください……!」

そう言って、先生は頭を下げる。

―———でも、当然の結果だった。

あっという間に、数十名いた教室は、数名を残すのみとなった。

私と鈴ちゃんは、残った。その他に、男子が一人残った。

「……ゴメンね……巻き込んじゃって……」

そう言って、何度も何度も頭を下げる先生に、どんな言葉をかければいいのかわからなかった。

そう思っていると、男子生徒が声をかけた。

「大丈夫ですよ!僕は、僕の意思で残ったんです。僕たちに力があるなら、その力で、魔物を全滅させたい。皆を、救いたい。そう、思ったんです」

「あたしだって、死ぬのは怖いけど……でも、あたしたちには、力がある!この力を…誰かを助けるために使いたいんです。この世界に魔物があふれ出れば……確実に人類は絶滅する。なら、少ない犠牲で済ませたいんです!」

鈴ちゃんも、言葉をかけた。

―———普段何も考えないような鈴ちゃんも、ちゃんと考えてここに残っていたんだ……――――

「お二人の言う通りですよ。私も、死ぬの怖いです。けど、でも!残りました。学園の外にいる、お母さんや、残りの友達。そういう人たちを、助けたいって、そう、思ったから」

「ノンちゃんの言う通りです!魔力、すっごくいい響きじゃないですか!うち……じゃないや、私たちには、人を救えるだけの力があるって、いってましたよね、先生。なら、いい方向に、使いますよ!」

女子生徒二人も言う。

私も、それに続けた。

「そうですよ!人数が多い方が全滅させられる確率も高まりますしね。私たちみんなで協力して、結界が解ける前に、魔物を全滅させる。そう、約束します」


―———約束は、もう絶対に破りたくないから。


「皆…ありがとう!」


そう言って顔を上げた先生の頬に、涙がつうっと流れていった。





いかがでしたでしょうか?

2話以降は後日投稿いたします!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ