第一話 入学試験
「え~、これより、王都立聖戦士学院入学試験を始める」
ついに試験が始まる。
「え~、まずは、え~、戦闘試験からじゃな。え~、では、え~出席を執るぞ。」
「え~、一番、東区の凶司郎君」
「へい」
「え~、二番、西区のジャン君」
「はいっ」
「え~、三番…」
次々と、志願者の名前がが呼ばれていく。
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「え~、八十三番、中央区のロベルト君」
「っはいっ」
八十三番まで来た。俺は八十五番だからもうすぐである。
「え~、八十四番、近衛隊のガスパー」
「はい。」
“ザワザワ”
近衛隊だって?何で近衛隊の奴がここに?
突然の出身以外、更に近衛隊なんて言葉に周りはざわついている。
「え~、お静かに。え~、八十五番、ライノス村のトーマ」
「え…、あ、はいっ」
周りのこの反応で、何か説明があると予想したが、そのまま進行して反応が遅れてしまった。
「ぷぷぷ…」
「何だ?」
「え…、あ、はいっだって(笑)田舎者はまともに返事も出来ないのかなぁ~てね」
隣で笑っている奴、確か東区のジムって奴だ。
「君、トーマ君って言うんだね。これからよろしくね。ぷぷぷ…」
「あ、ああ。よろしく」
何となく、こいつとは合わない気がする。
「え~、全員居るな。それでは、戦闘試験を始める。」
「それでは、それぞれ相手を見つけるのじゃ」ジムと話している内に出席は執り終えたようだ。
戦闘試験。この試験は、入学志願者達がそれぞれ相手を見つけてタイマンをする。
この試験では、基礎戦闘能力、相手を選ぶ判断力が試される。
この試験は、戦意を失うまで続ける。
この試験で武器は、学院から支給される'模擬刀'に限定される。
「おい、ジム。俺とやろうぜ?」
「ごめんね~。僕は先約があるんだ。」
そう言って、ジムは去っていった。少し、イラついていたため、ジムをぶっ飛ばしたかったから残念だ。
「なら、俺とやるか?」
背後から現れたのは、凶司郎だった。
「相手が居ないんだ。よろしく頼むよ。」「え~、では、試験官が今から廻るので、え~、試験官に模擬刀を渡されたペアからえ~、始めてください。」
試験官が廻り始めた。俺達の所まではまだ、来そうにない。
「ぷぷぷ、じゃあ、行くよ。ガスパー君」
「ジム君。手加減は無しですよ。」
早速、ジムの出番のようだ。先約の相手は、あの近衛隊のガスパーだったようだ。
相手がガスパーだけに、他の志願者達も注目している。
「タイマン開始」
試験官の合図に、ジムとガスパーは互いに模擬刀を構える。
ジムの素人丸出しの構えに対して、ガスパーの構えは一切の隙もない。
「それじゃ、行くよ~」
ジムは大振りでガスパーの頭を狙い、模擬刀を振り落とした。ガスパーの模擬刀はジムの模擬刀を軽く弾く。ジムはバランスを崩した。
「えぃ」
ガスパーはその隙に模擬刀でジムの腹を狙う。
「ブォウ」
ジムに腹に当たる。ジムはその場に倒れた。
「ストップ!大丈夫かい?」
試験官は試合を止めてジムに駆け寄る。
「邪魔だ。まだ、俺はやれる。この試験は戦意を失うまでだろ?」
ジムは立ち上がった。
「試合再開」
試験官は試験を再開させた。
「ここからが…ハァハァ、本番だ。」
ふらつくジムに、ガスパーは無情に攻撃を仕掛ける。
“カキン”
ジムは、意識が朦朧の中、ガスパーの鋭い一撃を回避した。
「うっ」
しかし、ガスパーの攻撃の鋭さにジムは再び体制を崩す。
「奥義 花火」
ガスパーはその隙を逃さず、必殺技?を放った。必殺技?が命中したジムは、高く舞い上がった。
「ぎゃふん」
ジムが、上空で激しく吐血し、まるで花火のようだった。
落ちてきたジムが立ち上がる事は無かった。
「医務室に運べ」
ジムは医務室に運ばれた。
「私としたことが、少々やりすぎたか?」 ガスパーは少し反省しているようだった。
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・「あの試合を観た後だとつまらんのぅ」
凶司郎は不満そうにしている。
「そうだなぁ」
俺達は、自分達の出番を退屈しながら待っていた。
「うぬの強さ、期待してもいいんじゃろうな?」
「ああ、期待に応えて見せるよ。」
ん?何か違和感が…
「なぁ、凶司郎。」
「なんじゃ?」
「そのしゃべり方は…」
「(ハッ)ななな、何かおかしいか?あっしはいつも通りでやんすがねぇ」
「またおかしいぞ?」
「(汗汗)いやいや、何も可笑しくはない。普通だ普通。」
「そうか。普通か。」
とりあえず、凶司郎は普通では無い事は分かった。
「次はお前等だぞ。」
いつの間にか進んでいたようで、ついに俺達の番のようだ。
「じゃあ、凶司郎、手加減は無しだからな。」
「当たり前じゃ…だろう。」
試験官に模擬刀を渡された。
「タイマン開始!」
試験官の合図に俺達は構えた。
「行くぜ、トーマァァァァァァ!」
勢い良く凶司郎は飛びかかって来た。
あまりの勢いに圧倒され、反応が遅れた。
「くっ」
間一髪で避けることは出来た。しかし、「うおらぁ」
素早く追撃が飛んできた。
「チッ」
これも避けようとしたが、顔を掠る。
「今度はこっちの番だ」
凶司郎の顔をめがけて模擬刀を振り落とす。
「そんなもんか?トーマァァァァァァ?」
俺の一撃は、凶司郎にカードされた。
「まだだ!せい」
「ふん」
「てやぁぁぁぁ」
「ふん」
乱暴に模擬刀を振りまくったが、全て凶司郎にガードされてしまう。
「トーマ…」
凶司郎は残念そうな顔をしている。
「(こんなはずじゃねぇ…こんなはずじゃねぇんだ…こうなれば)覚悟しろ凶司郎!」
「ん?」
「奥義 雷光撃!!」
俺のとっておきの必殺技だ。
「(あれ?)うわぁ」バターン
転んでしまった。
「トーマ…じゃあな…」
「ま…まて…」
「ふん」
勢い良く振り落とされる凶司郎の一撃は、俺の脳天を直撃した。
「う…(ヤバい…意識が…)」
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続く