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天使狩人   作者: 怒牙
3/6

元凶



 天使狩人……見殺しにした人でなし………と、恵の頭の中では認識されているが、実際は違った。

 『脅威である天使から安全を勝ち取り、我らを生かしてくれる戦士』

 平和世界での常識だった。

 本当は違う……。

 人を見殺しにする人でなしだ…。

 学校でも、どこに行っても天使狩人は崇められている。それを教える奴等は、天使狩人でもないくせに我が物顔で言う。

「天使狩人は偉大な戦士なんだ。だから、感謝しなさい」

 いつも何処でもそれを言う。洗脳されているみたいだ。誰も天使世界を見たことない奴等なのに…。知らない奴等なのに…。どうして我が物顔ができる!!? 

 毎回その言葉を聞くたびに怒りが沸く。感謝しなさいって……てめェらは感謝してんのか? 毎回そう思う。

 一度興味本意で聴いてみたことがあった。

「私たちは随時感謝しております」

 はっ嘘をつくなよ。もし、本当だとしたら何故、無表情で棒読みなんだよ!? 

 くだらない

 くだらなかった。聴いておいてくだらなかった。また、自分が情けなかった。何故なら、自分も行動で表せなかったからだ……。

「天使狩人は偉大な戦士なんだ。だから、感謝しなさい」

 また、聞こえた…。今度は教師らしかった。グッと拳を握りしめた。そして、聖人面した奴に正拳を殴り込んだ。

「お前らみたいにいっつも決まった台詞しか聞けねぇなら、バカみたいだ。うせろっ」

 こんなことをしたのは初めてだった。怒りに身を任せたのだ。とても心地良かった。初めて行動できた。初めて自分を出せた。

 赤いサイレンが聞こえてきた。どうやら御迎えのようだ。

 

  俺は悪くない


 心に刻んだ。そう、悪くないのだ。事実を体で伝えただけ……悪くない。

 警官に手を捕まれパトカーに乗せられる。

「うわっ! 酷い……」

 最後に耳に入ったのは、警官が教師の具合を見て言った言葉だった。


 パトカー内は静かだった。恐ろしいぐらいに……。警官も喋らずただ、エンジン音が響いていた。

 やがて、警察署ーーーではなく……茶色をした裁判所についた。そして、目隠しをされた。

 何を裁くのだろう? 不思議に思ったが、声には出さなかった。出せなかったのだ。怖くて…。

 椅子に座らされ、目隠しをとられた。一瞬目が眩んだがすぐに馴れた。顔を隠した人が目の前にいる。周りには大勢の人……。

「これより判決を行う。異論は認めない」

 上等だ。悪くないのだから。

「一つ、現役教師の殺害……」

 ちょっと待て、殴っただけだ。殺してはない……。

「少し待てよ!」

「異論は認めない」

 すぐに黙らされた。ふざけるな! 

「二つ、天使狩人の評判を落としたことについて……」

 は? 

「だって天使狩人は人でなーー」

「異論は認めない、以上二点。特に後者に関して長峰恵を罪とする!」

 罪? いや、その前に事実を言っただけだろ? なぜ罪になる? そもそもお前らが悪いんだろうが! お前らが天使狩人を崇めるからこうなったんだ! 

 肩を捕まれた。そして、足を持たれる。

「ふっ……ざっ……けんな!!!」

 反抗も虚しく、一人の拳で鎮圧された。その拳は重かった。

「何が悪くない、だ……現実は違うだろ? 悪いのはお前で、正しいのが俺たちだ!」

 最後に聞こえた言葉が心に刻まれた。

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