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鳩―シンジャエ
「しんじゃえ……」
かつてのおいらは、雑木林に燃え盛る業火の中にいた。
主はあの日、燃え尽きることのない火の中からおいらを呼ばれた。
「汝よ、汝よ」
おいらは答えた。
「はい。おいらはここに居ります。」
ミスル記第壱章第二節。
あの時、確かにおいらは主の使い、九鳥…気高い鳩であったはずなのだ。
なのに、今のおいらは…。
「キュルちゃん、お歌歌って」
グェェッ。
「じょーず!すごいすごぉーい!もっとぉ!」
ギュルェェッ。
「わぁー!!」
ソンチョイッカのシライマオ。
ガッガッ…。
その幼子は籠の隙間から指を差し入れてくる。
「キュールちゃんっ。」
おい、丁寧に羽根を触れと…おいらはこんな事のために…。しぶしぶ黒い羽を震わせ、止まり木で跳ねてみる。
「キャハハ」
おいらは鳩だ。
滑稽なる鳩に過ぎない。九官鳥の皮を被った鳩。
鳩は喋る。当たり前だ。おいらは主の使いだ。人なんかよりずっと前から在るのだ。
はしゃぐマオが顔を近づけてくる。
「シンジャエ……」
マオはびくっと肩を揺らし、顔を落とす。
「キュルちゃん、なんでいつも、ひどいよお…」
その顔は涙いっぱいで今にも溢れ出しそうだった。
在りて在る者。
おいらは、この鳥籠を壊し、この九官鳥という皮を剥ぎ、一刻も早く主の元へ帰らなければならないトイウノニ。
ソンチョもマオもおいらも。
みんなシンジャエ…。




