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虚無王ザラビスは退屈している  作者: 釘宮・連
ザラビスの起源に関する注釈
92/98

92.悪竜の誤解、そして遠くの呼び声

ニリオン多元宇宙の第一層。


宇宙はまだ揺れていた。


先ほどの衝突の余波は完全には消えていない。


崩壊した銀河の残骸が、ゆっくりと宇宙の暗闇を漂っていた。


星の破片。


崩れた星系。


砕けた次元の断片。


まるで宇宙そのものが巨大な戦場になったかのようだった。


その中心に、二つの存在が向かい合って立っていた。


アルロ・アッシュヴァレン。


そして――フェルダ。


フェルダの体の周囲では、濃い紫色のエーテル霧が静かに渦巻いている。


それは先ほど解放された


「エーテル・ソブリン・フォーム」


の余波だった。


だが今、二人は攻撃を止めていた。


なぜなら――


新たな存在が戦場に入ってきたからだ。


空間が震えた。


次元がゆがんだ。


第一層の奥深くから、巨大なエネルギーがゆっくりと現れる。


それは紫でも金でもない。


漆黒の竜のオーラ。


そのエネルギーは銀河を押しのけるように広がり、宇宙空間を満たしていった。


アルロはわずかに視線を動かした。


フェルダは小さく笑った。


そしてその存在が姿を現した。


巨大な黒竜。


悪竜。


ヴェルドラ。


彼はあくびをしながら戦場へ歩いてきた。


周囲の宇宙空間が、彼の重力だけで軋んだ。


ヴェルドラは周囲を見渡す。


壊れた銀河。


裂けた次元。


崩れた星々。


彼は頭をかいた。


「おいおい……」


ため息をつく。


「ちょっと目を離しただけで、宇宙がこんなに散らかるのか?」


アルロは何も言わなかった。


フェルダはヴェルドラを見つめた。


その目には、わずかな興味が浮かんでいた。


「やっと来たか」


静かな声が宇宙に響く。


ヴェルドラは肩を回した。


「呼ばれた気がしたからな」


彼はフェルダを見た。


それからアルロを見た。


「で?」


「誰と戦えばいい?」


フェルダはすぐには答えなかった。


代わりに彼は、ゆっくりと手を下ろした。


「戦いに来たわけじゃない」


ヴェルドラは眉をひそめた。


「……あ?」


フェルダは視線をまっすぐ向けた。


「俺たちの目的は一つだ」


彼の周囲でエーテル霧が揺れた。


「ヌルヴァガナ」


その名前を聞いた瞬間、ヴェルドラの動きが止まった。


フェルダは続ける。


「覚えているか?」


宇宙の静寂が広がった。


ヴェルドラはしばらく考えた。


そして――


「あー」


思い出したように指を鳴らした。


「飯が美味かった星か」


アルロがわずかに顔をしかめた。


フェルダの表情は変わらない。


だが声は冷えた。


「その星をお前は半分壊した」


ヴェルドラは笑った。


「いやいや」


手を振る。


「俺は飯を取っただけだ」


だがその言葉に、遠くで怒りのエネルギーが揺れた。


第二層。


ニスベルクとグレーターが、戦いながらその会話を感じ取ったのだ。


フェルダは静かに言う。


「お前が食料を奪った」


「それを止めようとしたニスベルクとグレーターと戦った」


「その結果――」


彼は宇宙の彼方を指さした。


遠くの暗闇に、壊れた惑星の残骸が漂っていた。


それがかつての


ヌルヴァガナ。


「半分が消えた」


ヴェルドラはその残骸を見た。


数秒沈黙する。


そして――


肩をすくめた。


「星一つくらいなら」


ニヤッと笑う。


「二つでも弁償してやる」


だがフェルダは首を振った。


「違う」


彼の声は低い。


「俺たちは戦いを望んでいない」


「元に戻せ」


宇宙が静かになった。


ヴェルドラはその言葉を聞いた。


そして――


ゆっくり笑った。


「なるほど」


彼の体から黒竜のオーラが溢れた。


銀河が震えた。


「つまり」


「俺に喧嘩売ってるんだな?」


フェルダの眉がわずかに動いた。


だがヴェルドラはもう止まらない。


彼の翼が広がる。


「いいぜ」


宇宙の空間がきしむ。


「ちょうど退屈してた」


その瞬間――


戦場の空気が再び緊張に包まれた。


だが戦いが始まる直前。


場面は別の場所へ移った。


第二アルマゲドン。


巨大な門の内部。


そこでは数人の存在が宇宙戦争を見守っていた。


ヴェルキラ。


ヴェルミラ。


スレイゼス。


セルマラ。


そして――


ニメロス。


その隣には二人の異世界の存在が立っていた。


ヤイ。


スワールタ。


彼らはまだこの世界の規模に慣れていない。


遠くの銀河が破壊されるのを見て、スワールタは震えていた。


「……信じられない」


彼は小さくつぶやく。


「俺たちの世界じゃ」


「王一人で国が滅びるだけだった」


ヤイは黙っていた。


スワールタは続けた。


「でもここじゃ……」


「星がただの石ころみたいだ」


ニメロスはその言葉を聞きながら戦場を見ていた。


その時――


スワールタが突然言った。


「そういえば」


全員が少し視線を向けた。


「俺がここに来た時の話だ」


ニメロスは眉を動かす。


「どういう意味?」


スワールタはゆっくり言った。


「俺は死にかけてた」


「もう終わりだと思ってた」


ヤイもその話は聞いたことがない。


スワールタは続ける。


「その時……」


「二人の人間が俺を助けた」


空気が少し変わった。


「名前は――」


「レイジ」


「そして……ミジャルン」


ニメロスの目が細くなる。


スワールタはさらに言った。


「でもな」


「俺、今になって思うんだ」


全員が静かに聞いている。


スワールタの声は低かった。


「たぶん……」


「俺を救ったのは」


「ニヒロード様だった」


その瞬間。


空気が凍った。


誰も動かない。


ヴェルキラの瞳が鋭くなる。


スレイゼスのエネルギーがわずかに揺れた。


ニメロスは静かに言った。


「……それは本当か?」


スワールタは頷く。


「断言はできない」


「でも……あの気配」


「普通の存在じゃなかった」


その瞬間。


周囲の空間が震えた。


十三の門の奥から、守護者たちのエネルギーがわずかに揺れたのだ。


もし誰かが――


彼らの主を侮辱したなら。


宇宙など簡単に消える。


だがニメロスは手を上げた。


「落ち着け」


全員の視線が彼女へ向いた。


彼女はゆっくり言った。


「まず確認する」


「ミジャルンを探す」


なぜなら――


ミジャルンは


主の“弟”だからだ。


ニメロスは目を閉じた。


意識が宇宙を越える。


銀河。


星雲。


多元宇宙。


その感覚は光より速く広がっていく。


そして――


彼女は見つけた。


遠い。


とても遠い。


だが確かに存在する微かなエネルギー。


場面は再び変わる。


遠い銀河。


天の川銀河。


小さな恒星系。


太陽系。


その中の青い星。


地球。


夜の山。


巨大な火山。


富士山。


その頂上近くに、一人の青年が立っていた。


ミジャルン。


彼は夜空を見上げていた。


不安な表情。


寂しそうな目。


彼は小さくつぶやく。


「兄さん……」


彼はその名前を知らない。


ザラビスという名前も知らない。


彼にとってはただ――


兄。


ミジャルンは拳を握った。


「今どこにいるんだ」


その時。


突然――


頭に激しい痛みが走った。


「ぐっ……!」


彼は地面に倒れた。


雪の上を転がる。


「うああああ!」


頭を抱えた。


そして視線が空へ向く。


その瞳に――


遠くの光景が映った。


崩れる銀河。


裂ける宇宙。


紫のエネルギー。


多元宇宙ニリオン。


ミジャルンの呼吸が止まる。


「……兄さん」


彼は震える声で言った。


そしてゆっくり立ち上がる。


夜風が吹いた。


富士山の頂上で、彼は遠い空を見つめた。


「帰らなきゃ」


その言葉は静かだった。


だが彼の中で


何かが目覚め始めていた。


遠く離れた宇宙で


戦争はまだ続いている。

「次回更新: 3月 16日 21:00」

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