9.役立たずの悪魔
魔界にほど近い地域の夜空は、どんよりと暗い。濃い紫色の雲がゆっくりと渦を巻き、まるで下を歩く二つの影を見守っているかのようだ。その二つの影とは、静かで恐ろしいオーラを放つ謎の人間、レイジと、小さな鼻歌を歌いながら歩く黒髪の少女、ミジャルンだった。
彼らは魔王国の西の境界に向かっていた。そこは、役立たずとみなされた魔族が容赦なく追放される場所だった。
スウルタとの出会い
ミジャルン:「お兄ちゃん…ここ、すごく静かだね? 地獄の鳥さえ寄り付かないよ。」
レイジ:「当然だ。ここは闇そのものからも忘れられた場所だからな。」
古い塔の廃墟の中で、彼らは角が一本折れた魔族の女性が、みすぼらしく汚れた地面に倒れているのを見つけた。彼女のオーラは美しかった。
彼女こそ、失敗した元魔族の将軍、スウルタだった。
レイジは近づき、無言で彼女を見つめた。
その瞬間、彼の目は濃い青色に輝き、全知全能が同時に発動した。
レイジ:「…ふむ、面白い。彼女は五年も眠っているのか。肉体的な傷は癒えているが、魂は死んでいる。」
ミジャルン:「かわいそうに、お兄ちゃん…彼女に力を与えてあげて。ほら、まともに呼吸もできてないよ。」
レイジ(薄い笑みを浮かべて):「ほう? 私に失敗した魔族に力を与えろと?」
ミジャルン:「うん! お兄ちゃんは優しいでしょ?」
レイジ:「それは事実無根だ。」
スウルタはゆっくりと目を開け、弱々しい声で言った。
スウルタ:「あ…あなたは誰…? 私は…もう生きたくない。私はただの弱い魔族…殺して。」
スウルタの思考(諦めの表情で):「ああ…私は……これが私の終わりなの…? すでに35回も盗賊に見つかって、犯されそうになったけど、なんとか逃れてきた。でも、もう力も魔力も残ってない……そして、この人は私を……」
レイジは無表情で彼女を見つめた。
レイジ:「ならば、殺してほしいか、それとも永遠の新たな生を与えようか?」
スウルタ:「…もしできるなら…役立たずの魔族をやめたい…」(涙を流す)
ミジャルンは兄を哀れみの目で見た。
ミジャルン:「お兄ちゃん…お願い…」
レイジはついに手を上げた。濃い紫色の光が現れ、スウルタを包み込んだ。
彼女の体は激しく震え、角が輝き、呼吸が安定した。
スウルタ:「あ…私は…生きている?」
レイジ:「生まれ変わったバージョン2.0だと思え。」
ミジャルン(小さく笑って):「私はミジャルン! そして、こちらはお兄ちゃんのレイジ!」
スウルタは深く頭を下げた。
スウルタ(涙を流しながら):「本当にありがとうございます…レイジ様…ミジャルン様…」
レイジは腕を組んだ。
レイジ:「ふむ。ならば…誰も見下さない王国に行きたいか? すべての生き物が恐れることなく生きられる場所に。」
スウルタ:「…私に…できるの?」
ミジャルン(元気よく):「もちろんできるよ! そうでしょ、お兄ちゃん?」
レイジ(かすかに微笑んで):「わかった。覚悟しろ。」
その瞬間、巨大な転送サークルがスウルタの足元に形成された。白い光が彼女の体を飲み込んだ。
ニリオン虚無王国
スウルタは黒いクリスタルと生きた星々でできた壮大なホールで目を覚ました。
彼女は無意識のうちに何か柔らかいものを踏んでしまった。
???:「おい…誰だ、この私、偉大なるニメロスを踏みつけたのは?! まさかヴェルドラか?!」
スウルタ(パニックになって):「あ…申し訳ありません! わざとではありません!」
銀色の鱗を持つ巨大な人影が、驚いた顔で起きた。
ニメロス:「え?…お前は…ヴェルドラじゃない?!」
スウルタ:「わ…私はスウルタ! 魔王国から追放された魔族です!」
ニメロスは眉をひそめ、それから大声で笑った。
ニメロス:「ああ! なるほど、主様が送ってこられたのか。心配するな、ここでは誰も見下さない。ニリオン虚無王国へようこそ、すべての世界の向こうにある世界だ。」
スウルタはうつむき、再び涙を流した。
スウルタ:「ありがとうございます…こんな場所がまだあるなんて知りませんでした…」
ニメロス:「今日から、私を仲間だと思ってくれ。そして、恐れるな。主様は堅苦しい人を好まない。」
スウルタ:「わかりました……私は役に立つ魔族になります……」
ニメロス(興奮して):「完璧だ、スウルタ! 主様の部屋の中身と警備兵の名前、そして主様の偉大さを教えてやる!!」
星界の混沌
一方その頃……
ヴェルドラは宇宙空間を走り回り、大声で笑っていた。
ヴェルドラ:「私の休暇は自由だ!!」
残念ながら、彼は巨大な星にぶつかってしまった。
その爆発は、すべての星の王であり、銀河のバランスを守るソルン・スピリティアを目覚めさせた。
ソルン:「誰だ、私の星に触ったのは?!?」
ヴェルドラ:「えへへ…ごめん?」
宇宙の爆発が現実全体に響き渡った。
レイジとガーディアンのつながり
一方、別の世界では、レイジは霊的なつながりを通じて、アルマゲドンゲートのガーディアン1〜5全員を呼び出した。
彼の悪魔の声が多次元全体に響き渡った。
レイジ(重く響く声):
「一本角の魔族、スウルタを最後のゲートに送った。
彼女を大切に扱え。触るな、怖がらせるな。
好きにしても構わない……お互いを破壊しない限りは。」
すべてのガーディアンは激しく震え、彼らの周りの空気さえ震えた。
レイジは普通に話しているだけなのに。
警備兵ラニ(汗だくで):「し…主様…くつろいでいる時でさえ、そのオーラは現実を溶かすことができます…」
レイジは小さな笑みを浮かべながらその接続を閉じた。
レイジ:「彼らはどこにいるのかさえ尋ねる勇気がない。賢いな。」
ミジャルン:「へへ、そうだ、お兄ちゃん! 魔族の王国の場所を見つけたよ!」
レイジ:「ほう…面白い。それなら、行こう。この世界は退屈になり始めた。」
ミジャルン:「行こう、お兄ちゃん! 物語をもっと面白くしよう!」
空が震え、レイジとミジャルンの新たな冒険が始まったことを告げた。
まだ終わりじゃない!
[サイドプロット]
突然、遠くから大きな音が聞こえてきた。
「うわあああ! 誰だ、私のゲートの壁にぶつかったのは?!?」
ニメロスは素早く振り返った。
「また誰の声だ? まさか……」
案の定。宇宙の雲の中から、ヴェルミラとヴェルキラの双子のガーディアン、アルマゲドンゲート-2が現れた。なぜかお互いを押し合いながら叫んでいる。
ヴェルキラ:「道を間違えたのはお姉ちゃんでしょ! そこは私のゲートよ、あなたのものではないわ!」
ヴェルミラ:「あなたのゲートには花壇がないじゃない、だから明らかに私のものよ!」
スウルタ:「あ…あの…彼らはいつもあんな感じなの?」
ニメロス:「毎日だ。ブラックホールに放り込まれることもあるが、なぜか生きている。」
スウルタは笑いをこらえたが、ついに顔が少し和らいだ。
こんな魔族を見たのは初めてだ。同じ魔族なのに……とてもおかしくて温かい。
ニリオンクリスタルホールでの夕暮れ
数時間後、スウルタはニメロスと他の数人の好奇心旺盛なガーディアンに囲まれ、ニリオンの宇宙庭園に座っていた。
ケルヴォン、第3ゲートのガーディアンが、星のように輝くお茶の入ったトレイを持って現れた。
ケルヴォン:「飲んでくれ。ネビュラ茶、私の専門だ。」
スウルタ:「あ…ありがとうございます…」
[一口]
スウルタ:「まるで…太陽光とチョコレートが一緒になったみたい?」
ケルヴォン:「へへ、小さな副作用だ。二度飲むと惑星と話せるようになるぞ。」
スウルタはむせた。
そこにいた全員、ニメロス、ヴェルキラ、ヴェルミラは大声で笑った。
ニメロス:「ここでは気をつけろ、スウルタ。すべてが美しいが、少しクレイジーでもある。」
スウルタ(小さく微笑んで):「私は…生まれてからこんなに笑ったことがない。」
突然、彼らの上の空が少し震え、まるで巨大な目が観察しているかのようだった。
すべてのガーディアンの心に、柔らかいエコーの声が聞こえた。
「よし、彼女を大切にしろ。ニメロス、お前に任せる。」
全員が凍り付いた。
それはレイジ、いやザラビスの声だった。
その口調は穏やかだったが、そのオーラはすべてのガーディアンをマラソンを終えた後のように汗だくにした。
ヴェルミラ(ささやいて):「彼が話すたびに、私の心臓は0.3秒止まる気がするわ。」
ニメロス:「0.3秒で済んでよかった。」
スウルタは黙っていたが、彼女の笑顔はゆっくりと広がった。
初めて、彼女は……もう一人ではないと感じた。
スウルタのニリオンでの最初の夜
夜が来ると、ニリオンの空の星がメロディーのように回転した。
スウルタはバルコニーに横たわり、ニメロスは銀河の飲み物(中身は不明)をすすっていた。
スウルタ:「ニメロスさん、ここの魔族は…変だけど、温かい。どうして?」
ニメロス(微笑んで):「私たちは闇さえもが敬う人の名の下に生きているからだ。しかし、彼は私たちに恐れることを決して求めない…彼は私たちが笑って生きることを望んでいる。」
スウルタ(静かに):「レイジ様は…虚無の中の光のようなものですね。」
ニメロス:「へへ、お前は学ぶのが早いな、一本角の魔族。」
スウルタ:「へへ…スウルタって呼んでください。」
スウルタ:「ニメロスさん、一つ聞いてもいいですか?」
ニメロス:「ああ…もちろん。」
スウルタ:「あなたたちの主様の本当の名前は何ですか? レイジ様は、本当の名前ではないような気がします……え…すみません、ニメロスさん、私が言い過ぎたみたいです……」
ニメロス:「大丈夫だ。正直に言うと、私を含め、この王国の誰も主様の本当の名前を知らない。しかし、私が主様の警備兵として生まれた時……主様は私たちに、決して主様の名前を呼ぶな、そして決して知ろうとするなとおっしゃった……」
スウルタ:「あ…ああ、そうなんですね。まるであなたの主様の本当の名前はとても伝説的なんですね!(元気よく言う)
ニメロスは小さく笑った。
そして遠くには、ザラビス自身が薄い笑みを浮かべて見ているかのように、ニリオンの王座からの青い光が優しく輝いていた。
ザラビスは力の達人であっただけでなく、心の達人でもあった。
彼は追放されたスワータに場所を与えた。彼にとって、すべての生き物は二度目のチャンスに値する存在だったからだ。
ニリオン王国では、悪魔でさえ優しさの意味を学ぶことができる。
時に…最も純粋な光は闇から生まれるのだ。




