88.果てしなく広がる層 ―虚無王不在の大戦編―
果てしなく広がる空間。
それは単なる虚ろな場所ではなく、無数の現実の層が透明な結晶のように回転する多次元空間だ。それぞれの層には異なる世界が映し出されている――星が生まれ、銀河が崩壊し、多くの生き物が生き死にを繰り返す。彼らは決して、この存在の大海原の中でどれほど小さいかを知ることはない。
この不思議な空間の中心に、二つの姿が佇んでいた。
一方は、長い白い髪に優しい気配を持つ少女だ。頭上にはホログラムのような形をした計り知れない三角が浮かんでいる。
オメガ・アルファ。
その前に立つのは、存在そのものが現実の概念を超えた者だ。
多くの世界でこう呼ばれている――
ナイヒロード、あるいはナル。
虚無の王。
ニューリオン多元宇宙の支配者。
だが今、ザラビスの表情は……少し戸惑っているようだ。
彼は眼前でゆっくりと光り始めた世界の層を見つめていた。それはその世界が再び息づき始めた証だ。
その世界こそが、コトラットだ。
彼が今さっき去ったばかりの世界だ。
しばらく沈黙が続いた。
それからザラビスは、いつものように平板な口調だが、普段使いの偽りの声で話しかけた。
「……オメガ」
オメガは少し顔を向けた。
「はい?」
ザラビスは頭を傾けた。
この種の存在にはめったに見られない小さな仕草だ。
「一つ聞きたいことがある」
オメガは応えを待つ。
ザラビスはコトラットの世界での旅路を振り返った。
ソニヤのこと。
シラナギのこと。
ノロとの戦いのこと。
自分が下した選択のこと。
それから彼は静かに言った。
「あの旅の間……僕が彼らに言った言葉」
一瞬言葉を詰まらせた。
「それは……正しかったのか?」
オメガは彼を見つめた。
その質問は単純に聞こえる。
だがザラビスにとって、それは非常に新しいことだ。
彼は虚無から生まれた存在だ。
自分の言葉が正しいか間違っているかなど、一度も考えたことがなかった。
だがコトラットでの旅の後……
彼はこのような些細なことさえ疑問に思い始めていた。
オメガは優しく微笑んだ。
「はい」
答えは短い。
だが確信に満ちている。
「君の言葉は間違っていない」
彼女は続けた。
「君は彼らを守り、友を一人にしなかった。それは正しい選択だ」
ザラビスは黙っていた。
しばらく時間が経った。
それから彼は同じ口調でまた話した。
「……そうか」
オメガは小さくため息をついた。
「もし君が間違っていたら、ずっと注意しているから」
彼女は腕組みをした。
「私は今から君の旅の友だ」
ザラビスは彼女を見つめた。
表情は依然として平板だ。
「お前は親友ではないのか?友ではなく……親友と友の間に違いはあるのか?」
オメガは顔をそらした。
「え……えっと……ああ、そうだね?私たちは親友だったね、忘れてた……」
ザラビスは表情を変えなかった。
オメガは彼を見つめ、彼の虚無の気配の中にほんのりとした変化があるのを感じた。
ほとんど見えないほどの小さな変化だ。
それからオメガは別の現実の層を見た。
彼女は目を細めた。
「もう一つ、話したいことがある」
ザラビスは彼女を見た。
オメガは少し真剣な口調で言った。
「君の多元宇宙に紛争が起きている」
ザラビスはまた頭を傾けた。
「紛争?」
オメガは頷いた。
「強力な存在同士の間で」
彼女は簡単に説明した。
「君の守護者の一人が、別の多元宇宙――ヌルヴァガナ星のセンブリゴンから来た存在と対峙している」
ザラビスはくつろいだ様子で肩をすくめた。
彼のような存在には不条理にさえ思える仕草だ。
「大丈夫だ」
彼は平板な声で言った。
「そこには多くの守護者がいる」
彼は一人の名前を付け加えた。
「アルロ・アシュヴァレン」
その名前が多次元空間に静かに響いた。
ニューリオン多元宇宙の第一層を守るために造られた守護者の巨人だ。
アルロ・アシュヴァレン。
オメガは少し目を細めた。
「本当に大丈夫か?」
ザラビスは前の虚空を見つめた。
「強力な存在同士の紛争は些細なことではない」
オメガは続けた。
「放置すれば、多元宇宙の層を傷つけかねない」
だがザラビスは小さくあくびをした。
音さえ出さないような動作だ。
「問題ない」
彼は言った。
「あの守護者は強い」
オメガはしばらく彼を見つめた。
それから長いため息をついた。
「はあ……」
彼女はこめかみを揉んだ。
「なんて虚無の存在なんだ」
ザラビスはその言葉に全く反応しなかった。
オメガはもっとくつろいだ口調で続けた。
「では、次に何を学びたいの?」
ザラビスは前の広大な空間を見つめた。
無数の世界が果てしないモザイクのようにゆっくりと回転している。
彼はコトラットの世界で経験したことを思い出した。
笑顔。
涙。
友情。
それから彼は静かに答えた。
「……まだ全ての概念を理解していないけれど……」
オメガは眉を上げた。
「けれど何?」
ザラビスは感情のない声で答えた。
「喪失感――それはコトラットの長い旅の後、知った概念だ」
――一方で……
遠く離れた場所。
多元宇宙のある層の中で。
ニューリオン第一防護層として知られる場所だ。
そこの空間は非常に広大だ。
空でもなく、宇宙空間でもない。
世界同士の境界として機能する防護次元だ。
その空間の中心に、一人の巨人の姿が佇んでいた。
目を閉じ、体はまるで数千年前から眠っている宇宙石の像のようだ。
だが彼の周りを包む気配は、星の重力のように重かった。
彼こそが第一層の守護者、H.Y.D.A.グループの巨人だ。
アルロ・アシュヴァレン。
そして今……
彼の目がゆっくりと開いた。
高速で通過した存在があったからだ。
第3話に登場したヴェルドラだ。
それから……
アルロの瞳から薄い光が射し出された。
彼は自分の意志で目覚めたのではない。
次元のバランスを乱す何かがあった。
不思議な震動。
異質なエネルギー。
アルロはゆっくりと体を起こした。
巨人の体はまるで眠りから覚めた山のように動いた。
「異質な存在を検出したか……先程のエネルギーは見知っていたが、これは……」
声は低く、ニューリオン全層に響いた。
遠くに……
別の多元宇宙から来た存在が現れた。彼らは何かを探しているようだ。
その存在は鋭い目を持ち、非常に強力な水晶のような魔性の気配を放っている。
エテリアル・デーモンの首領だ。
フェルダ。
彼の後ろには他の姿が現れた。
追跡に同行したエテリアル将軍たちだ。
彼らは――
ミロア、グレーター、フジラ、サストラン、パゴダ、ニスベルク、シゲドン。
彼らは前に立つ巨人の姿を見て立ち止まった。
フェルダは一歩前に進んだ。
目は真っ直ぐアルロの方を見つめている。
アルロはゆっくりと立ち上がった。
大きな体は恐ろしい気配を帯びていた。
だが表情は依然として落ち着いている。
彼はフェルダを平板なまなざしで見つめた。
「お前は異質な存在だ」
彼は言った。
「我が主のニューリオン多元宇宙の領域に入る目的を語れ」
フェルダはすぐに答えなかった。
彼は自分たちのセンブリゴン多元宇宙の隣にこのような多元宇宙があることを知らなかったからだ。
魔性の気配がゆっくりと広がる。
エテリアルのエネルギーが彼の周りで黒い嵐のように回転している。
それから彼は短く言った。
「誰かを探している」
アルロは動かずに立ち続けた。
「正体は?」
フェルダは目を細めた。
「ヴェルドラという存在だ」
彼は冷たい口調で続けた。
「そいつを引き渡せ」
短い沈黙が訪れた。
宇宙のエネルギーの風が彼らの周りを吹き抜けている。
アルロは数秒間情報を処理した。
それから重い声で答えた。
「許可なく門を越える存在はいない」
――アルロの心の中で――
「ヴェルドラ……お前は外で何をしたんだ?エテリアル・デーモンとの紛争を引き起こすようなことに……」
フェルダは眉をひそめた。
「俺は許可を求めていない」
彼はもう一歩前に進んだ。
「ただ取り戻すだけだ」
アルロは動かなかった。
「守護者のプロトコルは変わらない」
フェルダは我慢できなくなり始めた。
彼のエテリアルの気配が突然高まった。
エネルギーの圧力が第一防護層を激しく揺るがし始めた。
現実の床に小さな亀裂が入り始めた。
ミロアたち将軍たちも後ろから気配を放ち始めた。
アルロは表情も変えずに全てを見つめていた。
それから静かに言った。
「もしお前の目的が紛争なら……」
彼の目が少し明るく光った。
「……この第一防護層はお前を通さない」
フェルダはわずかに笑った。
だがその笑顔には抑えられた怒りが込められていた。
「それなら……」
彼は手を上げた。
魔性のエネルギーが彼の掌に回転する紫の星のように集まった。
「……力ずくで通り抜ける」
フェルダの気配が爆発した。
エテリアルのエネルギーの波が第3層まで掃き荒れ、ルーサズ・リレスとウォルサー・ザギを驚かせて眠りから覚ました。
将軍たちはすぐに散開し始めた。
一方アルロはまるで揺るぎない山のようにまっすぐ立ち続けた。
彼の目は真っ直ぐフェルダの方を見つめている。
そして長い眠りから目覚めて初めて……
守護者の巨人の気配が目覚め始めた。
非常に古い宇宙のエネルギーが彼の体から流れ出す。
第一層の空は暗くなった。
アルロはゆっくりと手を上げた。
彼の声はまるで自然の摂理が語るように響いた。
「もしそれがお前の選択なら……」
彼らの周りの空間が揺れ始めた。
「……戦いは避けられない」
フェルダは冷たく笑った。
掌のエテリアルエネルギーがますます濃密に
「次回更新: 3月 8日 21:00」




