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虚無王ザラビスは退屈している  作者: 釘宮・連
ザラビスの起源に関する注釈
83/95

83.凍結世界、動く意思

コトラットの世界はまだ凍りついている。


空は動きの途中で止まり、現実の亀裂は空中に浮かぶガラスの破片のように凍り固まっている。塵、炎、光すべてがそれぞれの場所に留め置かれ、まるで時間そのものが息をひそめているかのようだ。


だが動きを失った世界の中で


彼らだけは動く。


まずサタンが歩み出す。


足取りは軽やかで、質感を失った地面にほとんど痕を残さない。手にした鎌がかすかに光るのは力によるのではなく、意思によるのだ。


背後にはソニヤが息を殺して立っている。心臓はあまりにも速く鼓動している死を恐れるからではなく、目の前にあるものが対抗すべきではない存在だと知っているからだ。


シラナギは瞬目を閉じ、再び開く。


「連携せよ」


短く言葉を放つ。


「個々に動けば、死ぬ」


貴族パーティーは言葉もなく頷く。

レイジロウは剣を掲げる。

タケルは深呼吸をする。

ジョウシロウは槍をゆっくりと回す。

ユカリは拳を締める。

ハルナは眼差しを鋭くする。

ヨルは一番後ろに立ち、震えながらも後ずさまない。


向こう側には、五人のデーモン・エグアマが横一列に立っている。


ユラが半歩前に出る。


「一度入れば」


声は平板だ。


「戻る道はない」


ニカは嗤う。


「面白そうだな」


クロガミは一言も発しない。

ヒノカは頷く。

コウガイは——小さく微笑み、まるで誰も気づいていない何かを知っているかのようだ。


彼らの前に——


ノロ。


その姿は宇宙の壁のようにそびえ立っている。形は脈打ち、変化し、絶え間なく再生している。体の亀裂は自ら塞がり、存在の骨と肉はまるで破滅が脅威ではなく�なる印象に過ぎないかのように再び絡み合う。


「おいでよ」


ノロの声は方角もなく響き渡る。


「全ての現実が服従するだろう」


サタンは微かに微笑む。


「それなら」


言葉を続ける。


「騒ぎを起こそうぜ」


第一の衝突


彼らは一斉に動く。


英雄的な合図もない。壮大な戦いの雄叫びもない。ただ「今か、それとも絶対にないか」という集団の決断だけがある。


まずレイジロウとタケルが前に出て、剣と拳でノロの足元にある存在の層を叩きつける。衝撃は大きくないが、注意をそらすには十分だ。


ジョウシロウは高く跳び上がり、槍を再生の結節部に突き刺す——そして一瞬の間、再生は止まる。


「今だ!」


シラナギが叫ぶ。


ソニヤは疾走し、両刃の鎌が回転してノロの体の核心へと流れるエネルギーの道筋を切り裂く。光は歪み、裂かれた布のように分断される。


ノロが唸る。


巨大な腕が打ち下りて——


バーン!


凍りついているにも関わらず地面は亀裂し、存在の波動が跳ね返り、貴族パーティーとデーモン・エグアマを同時に叩きつける。


ユラとニカは力を合わせて衝撃を受け止め、オーラが一体化して全てを壊滅させるはずの崩壊を防ぐ。


「我々が抑える!」


ユカリが叫ぶ。


だが——


ノロはさらに速く動く。


巨大な体は学習していた。


次の攻撃はより的を絞り、より精密で、より残忍だ。


横へと拳を振りかぶる——


ソニヤは一歩遅れた。


ほとんど失う寸前


その拳は彼女を消し去るはずだった。


だがソニヤが気づく前に——


サタンは既にそこにいた。


体は一瞬の猶予もなく動き、鎌が回転して薄い防御壁を作り出す。だがそれでも衝撃は届く。


クラッシュ!


サタンは弾き飛ばされる。


体は凍りついた空を疾走し、現実の亀裂は石を投げつけられたガラスのように砕け散る。


「サタン!」


ソニヤが叫ぶ。


世界は静寂を帯びる。


戦いが始まって以来初めて、真の恐怖が生まれた。


シラナギは素早く振り返る。


貴族パーティーは沈黙している。


デーモン・エグアマは構えを固める。


ノロは笑う。


「弱者を守るか」


言葉をかける。


「古典的な過ちだ」


ソニヤは走り出し、息が切れそうだ。


「……死なないで……死なないで」


つぶやく。


遠くで——


サタンは停止した。


体は空中に浮かび、血は流れず、傷も見えない。


彼はため息をつく。


「クッ……」


「……さっさとやれよ」


目を開く。


そして世界が震える。


概念を揺るがす一撃


サタンは消えた。


動いたのでもなく、移動したのでもない。


彼は距離そのものを否定した。


サタンの拳がノロの顔面に叩きつける。


バァァァァァン!


巨大な頭部は体から吹き飛ばされる。


一瞬の間——


静寂が訪れる。


ノロの頭は空中を回転し、亀裂が入り、それから——


再生が始まる。


存在の肉は再び編み上げられ、宇宙の骨はくっつく。


「足りないな」


サタンはつぶやく。


だが彼が再び動く前に——


ノロは反撃する。


巨大な腕が、まだ浮かんでいるソニヤ、シラナギ、貴族パーティーの方へと打ち下りる。


「ソニヤ!」


レイジロウが叫ぶ。


五人のデーモン・エグアマは一斉に動く。


ユラ、ニカ、ヒノカ、クロガミ、コウガイ——彼らは攻撃の軌道へと跳び込み、オーラが一瞬の間、一体化する。


バーン!


彼らの体は弾き飛ばされる。


コウガイは後ろを振り返り、微笑んでいる。


「……ここが我々の限界のようだ」


光が彼らを包み込み——


五人のデーモン・エグアマは消え去った。


爆発も、悲鳴もなかった。


彼らは自らの決断によって消去されたのだ。


ソニヤは凍りつく。


「……違う」


声は千切れる。


シラナギは歯を食いしばる。


貴族パーティーは沈黙している。


そして凍りついた空に——


赤い光が疾走する。


融合


サタンは再び戦場の中心に浮かぶ。


目は貴族パーティーへと向けられる。


「お前たち」


素早く言葉を放つ。


「拒否するな」


手を掲げる。


エネルギーは力ではなく、構造として回転する。


わずか数秒で——


レイジロウ、タケル、ジョウシロウ、ヨル、ユカリ、ハルナは引き寄せられる。


彼らの体は金色の光の中で融合する。


自己を失うのではなく——


一つの意思となるのだ。


「な……なにを!」


タケルの声は他の声と混ざり合いながら叫ぶ。


新たな姿が現れる。


英雄アズダール。


もう一方で——


サタンはソニヤとシラナギに目を転じる。


「お前たちもだ」


抗議する間もなく、エネルギーが三人を束ねる。


闇と赤が混ざり合う。


生まれたオーラは異なっていた。


英雄でもなく、


普通の悪魔でもない。


魔王ゴッドザー。


ソニヤが目を開けると、世界は違って見えた。


「……これは」


囁く。


サタンは小さく笑う。


「大丈夫だ」


言葉をかける。


「ただ……新しい経験だ」


短い真実


ノロは再び立ち上がる。体の再生は前よりも速くなっていた。


「無駄だ」


言う。


「我が身は世界創造主の意思の一部だ」


サタンは前に進み、今やアズダールと肩を並べる。


「そうだ」


言葉を返す。


「だからこそ、お前は危険なのだ」


一瞬だけ彼らを見つめる。


「我々の敵は……単なる怪物ではない」


「世界創造主の力と完全に一体化している」


アズダールは頭を上げる。


「では我々は?」


サタンは微笑む。


「お前たちは世界の英雄だ」


「そして俺は……」


「……終焉を拒む異変だ」


次なる衝突へ


ノロは咆哮する。


宇宙の力があふれるように流れ、体は再び大きくなり、より密度が高く、より安定していた。


サタンは鎌を掲げる。


アズダールは構えを固める。


ゴッドザーは彼らの間に立つ。


世界は依然として凍りついている。


だが意思は動いている。


彼らは共に前に進む。


個人としてでもなく、


種族としてでもなく、


役割としてでもない。


ただ決断として—


そして色彩を失った世界で、


ありえるはずのない戦いは


続いていく—

「次回更新: 2月 26日 21:00」

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