78.世界が涙を忘れた日
広大な平原はまだゆっくりと震えている。
天空に浮かぶ「命の螺旋軸」は回り続け、その光は重力の中心を失った銀河の渦のようにあふれ出ている。
サタンとノロの視線は互いに絡み合ったままだ。
両者の集団から放たれるオーラが目に見えない形でぶつかり合い、現実の表面に小さな波紋を生み出している。
だが――
その邂逅の中心から遠く離れた場所で……
タハバ村の近く、もう一方の側に……
死んだ街の廃墟の真ん中には巨大なクレーターが広がっている。
崩れた金属は古の戦闘兵器の骨のように散乱し、亀裂の入った地面に半分埋まった巨大な鎧の破片からはまだ細い煙がもくもくと立ち上っている。
それはロボット「ゾルントラ」の残骸だ。
かつて恐るべき存在で「世界の終焉をもたらすロボット」と恐れられたが、今では……サタンの攻撃によって大破し、ぐしゃぐしゃに壊れ果てていた。
コックピットの中で――
非常灯がかすかに点滅している。
警報音はずっと前に鳴りやんでいる。
狭い空間は静寂に包まれている。
そして――
重い呼吸音が聞こえた。
サオ・バイはゆっくりと目を開けた。
「……うぐっ……」
しばらく視界は霞んでいた。体は重く、まるで全ての神経に過剰な電流が流れたかのような感覚だった。
彼は手を動かそうと試みた。
目の前の操作パネルは完全に電源が切れている。
コックピットのガラスには長い亀裂が入り、外の灰色の世界の光が死のような影として差し込んでいた。
「……ゾルントラ……」
声は嗄れている。
システムからの応答はない。
機械の音もしない。
ただ静寂だけがある。
そばで誰かがゆっくりと動いた。
クロキバは眉をひそめ、軽度のやけどまみれの肩を押さえている。
「……俺たち……生きてたのか?」
サオ・バイはすぐに答えなかった。
彼は亀裂の入ったガラス越しに外を見つめている。
コトラト世界の空はいつもより暗く見えた。雲は空中で腐敗する傷ついた肉のようにゆっくりと動いている。
だが……
彼の目は突然震えた。
「……違う……」
クロキバが顔を向けた。
「何だ?」
サオ・バイは眉を寄せ、呼吸が少し荒くなった。
「……あいつが現れた……」
「誰が?」
サオ・バイはしばらく目を閉じた……まるで言葉では説明しきれない何かを感じ取ろうとしているようだった。
「この世界を……こんな姿にした元凶……」
コックピットの外で風がそっと吹き抜け、星の死骸のようにきらめく金属の粉を運んできた。
「……あいつは平原にいる……」
クロキバは体を固めた。
「感じ取れるのか?」
サオ・バイはゆっくりと頷いた。
「……エネルギーはまるで……世界全体に広がる傷のようだ……」
再び静寂が訪れた。
二人は崩れかけたゾルントラの体からゆっくりと鳴り響く金属の軋み音だけを聞いていた。
そして――
細いハム音が聞こえた。
クロキバは素早く顔を振り向いた。
「……聞いたか?」
サオ・バイはゆっくりと頭を上げた。
後ろに小さな影が現れた。
亀裂の入った暗いコックピットの中で、赤いライトがかすかに光り始めた。
一つの点。
それから二つ。
やがて数点に増えた。
小さなドローンが空中に静止している。その姿は感情のない赤いレンズを持つ機械の目のようだった。
合成音声が響いた。
冷たく、平板で、魂のない声だ。
「目標識別完了。」
クロキバは反射的に立とうとしたが、体はあまりにも弱っていた。
「お前たちは誰だ――」
「対象:サオ・バイ。」
ドローンの赤いライトがゆっくりと回転し、彼の体をスキャンした。
「対象:クロキバ。」
サオ・バイは体がまだ震えているにもかかわらず、静かにドローンを見つめていた。
「……ムトクメイ……」
ドローンの動きが止まった。
そして声は再び響いた。
「分類:コトラト世界構造に対する反逆者。」
ドローンの中から小さな警報音が鳴り始めた。
「殲滅命令承認済み。」
クロキバは折れた武器を掴もうとした。
「くそっ……!」
サオ・バイは赤いレンズにまっすぐ視線を送った。
目はゆっくりと細められた。
「……なるほど……最後の希望さえも過ちと見なされるのか……」
ドローンたちは空中で小さな円を作った。
赤いライトが同時に明るくなった。
最後の機械音が響いた。
「処刑開始。」
サオ・バイはゆっくりと息を吸い込んだ。
クロキバは歯を食いしばった。
赤い光は一つにまとまり、鋭い閃光となった――
そして――
静寂だった。
爆発音もない。
音もしない。
ただ光が一瞬で消え去った。
ゾルントラのコックピットは再び静寂に包まれた。
非常灯は一度……二度……点滅して……
そして完全に消えた。
ドローンたちはしばらく浮遊し、生気の残らないことを確認した。
「目標抹消完了。」
それらはゆっくりと向きを変えた。
飛び去り……コトラトの灰色の空に姿を消していった。
漆黒のコックピットの中で――
二人の姿はもはや動かなくなっていた。
だが――
遠くの平原で……
「命の螺旋軸」はより激しく鼓動した。
まるで世界自身が……二度と取り戻せない何かを失ったかのようだ。
そして運命の影は……
誰も待たずに、ただ進み続けていた。
「次回更新: 2月 12日 21:00」




