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虚無王ザラビスは退屈している  作者: 釘宮・連
ザラビスの起源に関する注釈
75/75

75.育つ希望、刈り取られる世界

彼らの周囲の空間はまだゆっくりと震えていた。


その鼓動は……音ではない。


普通の振動でもない。


まるで現実の奥底から世界の心臓が打ち鳴らしているようなものだった。


巨大な瞳が空中に浮かんでいる。鼓動している。生きている。全てを同時に見つめている。


アクシス・ヴィタエ。


部屋にいる者は誰もが固まった。異次元の恐怖に慣れた者たちさえも、息苦しくなるような圧力を感じていた。


頭を抱えたままのソニアは、畏敬と恐怖が混じり合った表情で見つめていた。


「……つまり、お前が……この世界の中心なのか?」


アクシス・ヴィタエの声が響き渡った。深く重層的で、まるであらゆる方向から同時に聞こえてくるようだった。


「その通りだ。」


シラナギは鋭く目を見開いた。


「ならば……説明しろ。なぜ世界はこんな状態になった?」


しばしの静寂が訪れた。


瞳の鼓動が遅くなり、まるで言葉を選んでいるかのようだった。


「この世界は……かつて安定していた。次元の各層は調和して回っていた。エネルギーは五つの均衡の柱『デーモン・エグアマ』を通じて流れていた……」


ユラは反射的に身構えた。

そして知っていた、デーモン・エグアマとは彼らのことではない。

クログミは少し顔を向け、目を細めた。


アクシス・ヴィタエは話を続けた。


「しかし……誰かがその流れを乱し始めた。世界を破壊するだけではない。そいつは……存在そのものの概念を支配したいのだ。」


レイジロウは腕組みをした。

「……ノロか。」


瞳の鼓動が強まった。

「そうだ。」


空気は一瞬で凍りついた。


「彼は私を束縛し……檻の中の世界の中心にした。私は世界の安定を保たされ……彼が弱体化する次元の層から力を収穫できるようになった。」


ヒノカは歯を食いしばった。

「……つまり、世界はゆっくりと死んでいくのか?」


「死ぬのではない」とアクシス・ヴィタエは答えた。

「もっとひどい。世界は……限りなく搾り取られるために維持されているのだ。」


静寂が部屋を満たした。


ハルナは腕の中で気絶したままのユカリを見つめていた。手が小さく震えていた。


ヨルはユカリをもっと強く抱きしめた。


「……化け物だ」と小さくつぶやいた。


サタンは彼らから少し離れて立っていた。

そして人間の姿に変わった。

手をポケットに入れた。


視線は静かで、まるでこの部屋に満ちる宇宙的な圧力に影響を受けていないかのようだった。


アクシス・ヴィタエは彼の方を向いた。


「しかし……君の存在はノロが作り出した均衡を乱している。」


サタンは少し首を傾げた。

「ん?」


「君は……この世界のシステムの一部ではない。」


ソニアは急いで顔を向けた。

「え……どういう意味?」


アクシス・ヴィタエは数秒沈黙してから答えた。


「君の存在は……このシステムの概念が生まれる前からある。」


全員の視線が一瞬でサタンに向いた。


彼はただ小さく微笑んだ。


「君の説明はいつもドラマチックだな。」


ユラは一歩前に出た。


「もしノロがデーモン・エグアマの力を吸収しようとするなら……次の標的は俺たちだ。」


「その通りだ」とアクシス・ヴィタエは答えた。


シラナギはユラを見つめた。

「待っていて襲われるわけにはいかない。」


コウガイは静かに頷いた。

「先制攻撃した方がいい。」


ニカは薄笑いした。


「世界を操れるなんて思っている奴をぶっ飛ばすのは久しぶりだ。」


ソニアはサタンに向いた。

「……じゃあ?君の計画は?」


しばしの沈黙が続いた。


サタンは上を見上げ、世界の中心の空間を貫く光の鼓動の方を見つめた。


「地上に上がる。」


レイジロウは薄笑いした。


「直接巣窟へか?」


「いや」とサタンはくつろいだように答えた。


「奴が一番居心地がいい場所に向かい……その安心感の幻想を打ち砕く。」


ジョウシロウは眉を上げた。


「単純な戦略だな。」


「単純だ」とサタンは繰り返した。


「たいていそれが一番効果的だ。」


アクシス・ヴィタエの鼓動が速くなった。


「私は地上への道を開き……しばらくの間ノロの監視から君たちの存在を隠すことができる。」


サタンは静かに頷いた。


「十分だ。」


彼は部屋にいる全員に向いた。


「準備をしろ。」


声のトーンは大きくない。


命令しているわけでもない。


だが全員が一瞬で理解した……大きな何かがすぐに起こることを。


――視点変更――


ソイティ市の空はどんよりとしていた。


雲が低く垂れ込めている。


空気は重く、まるで降らない雨を堪えているようだった。


古い建物と細い路地が続く市の道路では、犯罪行為がいつも通りに行われていた。


密売。

闇取引。


脅迫に包まれた値切り交渉の声。


そして……


空気が止まった。


文字通りに。


誰かの足音が聞こえた。


ゆっくりと。規則正しく。


一人の姿がソイティ市の大通りの真ん中を歩いていた。


全身は長い黒いマントに包まれている。布は暗い液体のように動き、周囲の光を吸い込んでいた。顔は隠されている……見えるのは一対の瞳だけだった。


冷たい瞳。


輝きもない。


だが見つめられた者は誰でも、その魂の核心まで見透かされているような気がした。


時間が遅くなった。


風も吹き止んだ。


埃が空中に浮かんでいる。


街の音はスローモーションで流れるように小さくなった。


普段は誰にも屈しない犯罪者たちが……一人ずつひざまずいた。


命令されるわけでもない。

自覚するわけでもない。


体が勝手に動き、まるで太古の本能が理解できない何かにひれ伏すように強いていた。


ノロは彼らを見もせずに通り過ぎた。


後ろには五人の影が一定の間隔を置いてついていた。


ゴカイシュウ。


その中の一人、高身長でひび割れた仮面をした者が静かに話しかけた。


「世界のエネルギー層が動き始めている。」


別の者が小さく笑った。


「『邪魔者』が動き出したようだな。」


ノロは歩みを止めなかった。


足取りは依然として静かだ。


まるで周囲の遅くなった時間の一瞬一瞬を楽しんでいるかのようだった。


「感じている」と彼は静かに言った。


声はほとんど聞こえない……だが本来響くはずのない空間に響き渡った。


「世界の鼓動……リズムが変わっている。」


彼は市の交差点の真ん中で立ち止まった。


瞳は遠くを見つめ……空を貫いていた。


「面白い。」


ゴカイシュウの一人が頭を下げた。


「今からデーモン・エグアマの追跡を始めますか?」


ノロは沈黙した。


そして平板な口調で答えた。


「まだだ。」


彼は少し手を上げた。


周囲の時間はさらに遅くなり……ほぼ完全に止まるかのようだった。


「彼らの希望がどう育つか……見てみたい。」


彼は再び歩き始めた。


「育つものこそ……壊すのが格段に楽しいからだ。」


時間は再び動き出した。


街の音は録画を再生し直すように再び轟々と鳴り響いた。だが犯罪者たちはまだひざまずいたままで、理由も知らずに体が震えていた。


ノロの足取りは遠ざかり続け……ソイティ市の中心部へと向かっていた。


――世界の中心へ戻る――


部屋の上空に大きな光が開き始めた。


アクシス・ヴィタエは地上へとつながる螺旋状の道を作り出した。


宇宙的なエネルギーが光の川のように流れていた。


ソニアはその道を見つめ、照れくさそうに呟いた。


「……なんか悪い予感がするけど、サタンがいるならきっと大丈夫だよね……へへ。」


サタンは彼女のそばを通り過ぎ、光の道のすぐ前で立ち止まった。


「悪い旅と思われるものは……たいてい一番価値がある。」


彼は少し顔を向けた。


「もし世界を元のように戻したいのなら……これが唯一の道だ。」


レイジロウが最初に一歩前に出た。


タケルはくつろいだ笑顔で続いた。


ハルナはユカリを丁寧に抱き上げた。


ヨルはそばを歩いた。


ユラとデーモン・エグアマは横に並び、表情は毅然としていた。


ソニアは長い溜め息をついた。

「……まあいいや。死ぬなら、せめて大勢でだ。」


サタンは小さくクスクス笑った。


アクシス・ヴィタエは前よりも強く一度鼓動した。


「気をつけろ……彼はもう君たちの存在に気づき始めている。」


サタンは答えなかった。


ただ光の道の中に歩み入った。


一人ずつ彼らは続いた。


光が彼らを包み込んだ。


そして鼓動する世界の奥深くで……何かが前よりも速く動き始めていた。


隠された現実の層の上空に広がる空は、黒いガラスのようにひび割れていた。


地面もない。

水平線もない。


ただ星の死骸の破片のような光の欠片に満たされた虚空だけが広がっていた。


その空間の中心には……生きた金属の巣のような構造物が浮かんでいる。表面はゆっくりと鼓動し、透明な血管のように動くエネルギーの流れがいっぱいだった。


その中に――


ショウヤは光の封印の輪の中に吊るされていた。


体は自分自身の影にまで貫通する細いエネルギーの鎖に拘束されている。呼吸はまだあるが、重い。意識は霞んでおり、まるで目覚められない夢の中に沈んでいるようだった。


足音が響いた。


ゆっくりと。規則正しく。


だが一歩一歩が虚空に波紋を作り出していた。


一人の男が近づいてきた。


痩身の体は有機技術の層を持つ長いマントで包まれている。頭の周りには小型ドローンのような玉がいくつか浮かんでおり……それぞれに機械眼がついてゆっくりと回転し、四方八方を監視していた。


グバン。


ドローンの一つがショウヤの顔に近づいた。


レンズの瞳が縮み、次に広がり、まるで興味深い何かを分析しているかのようだった。


「精神の安定度……かなり高い」グバンはくつろいだようにつぶやいた。


「次元層の変異エネルギーに触れても耐えられる人間はまれだ」


彼は手を上げた。


一つのドローンが空中に透明なデータ層を投影した。ショウヤの体を形成するエネルギーの線は、いくつかの点でひび割れた宇宙地図のように見えた。


「あ……適応の可能性もあるな」


グバンは薄笑いした。暖かくもなく、残酷でもない。まるで珍しい実験材料を見つけた科学者のような笑いだった。


「面白い」


ショウヤは少し動いた。


目が半分開いた。

「……ここは……どこ……」


声はからからで、ほとんど聞こえない。


グバンはさらに数歩近づき、くつろいだ様子で彼を見つめた。


「君の未来が……書き換えられている場所だ」


ショウヤは動こうとしたが、エネルギーの鎖がすぐに張り詰めた。痛みが数千本の熱い針のように神経を突き刺した。


彼は歯を食いしばった。

「お前たち……誰だ……」


グバンは一つのドローンに目を向け、まるで考え込んでいるかのようだった。


「ん。アイデンティティというのは、実験対象に与えるにはあまりに贅沢なものだ」


ドローンたちはより速く回転し始めた。機械の瞳の中に細い赤色の光が点灯した。


「君は普通の人間よりずっと有用な存在になるだろう」


金属の巣の床にあるエネルギーが光り始め、次元技術と重なり合った儀式の輪を形成した。


ショウヤは背骨に熱が這い上がるのを感じた。


「全ての生き物が目的を持って生まれてくるわけではない」グバンは静かに続けた。


「一部は……作り出される」


彼は手のひらを上げた。


エネルギーの輪はすぐに活性化した。紫がかった黒い光が液体のような煙となって立ち上り、ショウヤの体を包み始めた。


ショウヤの呼吸は荒くなった。


体の下にある影が動き始め……本来の姿から離れていった。


グバンのドローンたちはゆっくりと震え、執念深いまでの精密さであらゆる変化を記録していた。


「もし君が耐えられたなら」グバンは声を平板なままに言った、

「君は兵器となるだろう」


彼はほとんど空っぽのような平板な視線でショウヤを見つめた。


「そしてもし君が壊れたなら……」


彼はしばし黙った。


「……君はそれでも貴重なデータとなる」


変異エネルギーがショウヤの体を完全に包み込んだ。彼の喉から押し殺されたような叫び声が響き、次元の巣全体に鳴り渡った後、虚空に飲み込まれた。


グバンの主力ドローンはまっすぐ彼の方を見つめた。


「なんと面白いことだ」と小さくつぶやいた。


遠くで、隠された現実の空がゆっくりと鼓動し……今始まったばかりの変化に応えているかのようだった。


そして別の場所で――


光に向かって歩む彼らは、希望に向かって進んでいると信じていた。


だが世界は……誰かが救おうと思ったからといって変わることは決してない。


時に、彼らが追い求める光が明るいほど……


彼らを飲み込むために待ち構える闇は深くなる。

「次回更新: 2月 6日 21:00」

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