74.世界が耐えきれなかった存在
その廊下には終わりがない。
暗く、静かで、まるで進む方向さえ飲み込んでしまうようだ。
サタンは足取りを緩やかにし、もうけがれたソニアを抱えて歩いていた。ソニアの呼吸は規則的で、頭が軽く寄りかかっているのは、あまりにも無理をしすぎた証拠だ。サタンの歩みは確かで、目つきは冷静だが用心深く、まるでこの廊下が初めてではないかのようだ。
「白凪……そして他の五人のデーモン・エグアマか」
小声でつぶやいた。
時は経つのが遅く感じられる。廊下は延々と続き、やがて――
カチャッ! という激しい衝突音が静寂を打ち破った。
遠くに白凪が立っていた。デーモン・エグアマのリーダーであるユラ、そして黒住と共に。彼らは奇妙な存在と戦っていた。姿は彼ら自身にそっくりだが、空洞のようで、歪んだ影のような感じがした。
戦闘が始まった。
素早い動き、連続した攻撃、そして緻密な連携。黒住が牽制し、ユラが短い指示を出し、白凪が的確に仕留める。やがてその存在は崩れ、暗い霧のように消え去った。
サタンはその場に静かに着地し、ソニアをゆっくりと降ろした。
ソニアは目を覚まし、顔がすぐに明るくなった。
「白凪……!」
嬉しさは心からのもので、長年の重荷がようやく取り除かれたかのようだ。
サタンはすぐにユラの方を振り向いた。
「この廊下が俺たちを分断している」
ユラは静かに頷いた。
「俺は他の連中を探す」
サタンは短くつづけた。
ソニアは困惑した表情で彼を見つめる。
「え? どうして急に――」
言い終わる前に、ソニアは目を細め、おかしなほど怪しげな表情を浮かべた。
「まさか……実はもう彼らがどこにいるか知ってたんでしょ?」
サタンの動きが止まった。
しばらく沈黙が続いた。
それからカッコ良く背を向け、唇の端がわずかに上がった。
「誰が分かるか」
そして――闇の中にいなくなった。
「サタン――!」
ソニアの叫びは遅かった。
白凪、ユラ、黒住は互いに目を見合わせ、そして同時にため息をついた。
「はあ~」
我慢強そうで、まるですっかり慣れてしまったかのようだ。
別の廊下で、サタンは意識を失って倒れているヒノカを見つけた。
そこから遠くない場所で、コウガイとニカが、自分たちにそっくりな影のような存在と激しく戦っていた。
サタンはすぐに手を出さなかった。
傍観していた。
コウガイは手際よく速攻で強打し、毅然として迷いがない。
ニカも劣らぬ恐るべき力で続け、彼らの攻撃は互いに隙を埋め合っていた。戦いは長く、熾烈で、まるで叙事詩のようだった。
やがてその存在は倒れた。
サタンはヒノカの元へ歩み寄り、膝をつき、手を彼女の頭に伸ばそうとした――
スーッ!
コウガイは稲妻のように現れ、剣がほんの少しでサタンの首に届きそうになった。
しかし――
彼は突然止まった。
「……サタン様?!」
コウガイはすぐに後ずさった。
「申し訳ありません、サタン様!」
サタンはしばらく黙っていたが、それから小さく笑った。
「もうちょっとで首が飛ぶところだったぞ」
コウガイは冷や汗をかいた。
ニカはただ安堵のため息をついた。
一方、全ての中心で――
世界の中心アクシス・ヴィタエ。その瞳がゆっくりと鼓動していた。
その前にユカリが立っており、残された者たち――霧二郎、タケル、ハルナ、ヨル、そして城四郎――の道を開いていた。
光が開けた。道は広がった。
彼らが到着すると、ユカリは疲れたようだが温かい笑顔を浮かべた。
「……やっとだ」
彼女の視線は霧二郎に止まった。
「やっと再会できた……友よ」
そして世界の中心の光の向こうで、彼らの運命は再び結びつき始めていた。
その廊下は依然として暗く、冷たく、果てしないようだった。中の空気は重く、深く息をする者なら誰でも胸を締め付けるようだ。かすかな光がはっきりとしないままきらめいており、まるで現実自体がこの場に存在することを渋っているかのようだ。
サタンはくつろいだ格好で立っており、手をポケットに入れ、先の方を見つめる瞳は虚ろだった。
目の前で、ついにコウガイが話し始めた。
「私たちが散り散りになった時……」声は低いが力強い、「……私たち自身にそっくりな存在に攻撃されました」
サタンは少しだけ顔を向けた。
「おおー」
ただそれだけだった。
コウガイはすぐに黙り込んだ。
静けさ。気まずい空気。まるで廊下さえ動くのを止めたかのようだ。
数秒が過ぎ、ニカが前に出てきた。表情はずっと生き生きとしている。
「失礼ですが、サタン様……私たちの仲間にお会いになりましたか? それと……サタン様のお仲間も?」
サタンは軽く頷いた。
「うん」
予告なしに、サタンは姿を消した。
風が渦巻いた。
瞬く間に、コウガイ、ニカ、そしてやっと力が少し戻ったヒノカは、ソニア、白凪、ユラ、黒住のそばにいた。
移動があまりにも速く、ヒノカは膝が崩れそうになった。
「えっ?!」ソニアは反射的に白凪につかまった。
ユラは口を開き、明らかに兄を呼びかけようとしていた。
「兄……」
「しーっ!」
サタンは一本の指を立て、表情が突然真剣になった。
全員はすぐに黙った。
コウガイも……冷ややかだ。
まるで廊下の鼓動さえ止まったかのようだ。
ソニアと白凪は目を見合わせ、そして同時にサタンを見つめた。
「どうしたの?」
「何かあるのか?」
サタンは少し口を開いた。
「調子が――」
一瞬だけ止まった。
「……エネルギーだ」
声のトーンは急に変わり、まるで言い間違えに気づいた人のようだ。
ソニアは呆然とした。
2秒。
3秒。
「……さっき他のこと言おうとしてたよね?」
サタンは別の方向を向いた。
「違う」
ソニアは目を細め、怪しんでいる。
「あの角の向こう」サタンは再び真剣な表情に戻り、つづけた。「大きなエネルギーがある」
彼は全員に顔を向けた。
「俺の肩に手をかけろ」
「は?」
「今すぐ?」
了承を待たず、サタンは少し姿勢を低くした。
一人ずつ、ソニア、白凪、ユラ、ニカ、コウガイ、黒住、ヒノカが彼の肩に手をかけた。少し迷っている者もいれば、諦めたような者もいた。
サタンは目を閉じた。
そして――
目を開けた。
瞳のまなざしは変わっていた。
暗く、深い。まるで瞳孔の奥に果てしない淵があるかのようだ。
薄い笑みが顔に浮かんだ。
……優しくない笑みだ。
「ははは……」
一気に、サタンは走り出した。
速いのではない。
あまりにも速い。
「あああああーーー!」
悲鳴が一斉に廊下に響き渡った。
風が怒号し、光が裂け、現実は後ろに引っ張られるようだ。ソニアの髪は乱れ飛び、白凪はつかまるのを失いそうになり、ユラは目を瞑って悲鳴をこらえ、ヒノカは……本当に生きていることを後悔していた。
彼らは何かに激突した。
「ガバーン!」
目の前に――
霧二郎、タケル、ハルナ、ヨル、そして城四郎だった。
「えっ?!」
「おいーー!」
しかし激突する寸前、サタンは滑らかな一動作で全員を持ち上げ、彼らの肩にも手をかけさせた。
今や、二つのグループが一人の存在の肩に乗っていた。
悲鳴はさらに大きくなった。
これはもはや走りではない。
発射だ。
サタンは止まらなかった。減速もしなかった。
彼の目は一点に釘付けだった。
「あれだ!」
そして――
バーン!!
大きなエネルギー爆発が目の前で起きた。光が廊下を駆け抜け、これまで隠されていた広大な空間を明らかにした。
サタンは止まった。
彼はまっすぐ立ち、全員を抱えながらまるで何の重荷もないかのようだ。
「世界は」彼は静かに言った、「いつも自分が大きいと思っている……測れないものに出会うまではな」
目の前に――
ユカリがいた。
彼女は固まった。
目が大きく開いた。
口も開いた。
「……やっと……?」
体が力なくなった。
ユカリは気を失った。
彼女の後ろには、世界の中心アクシス・ヴィタエが隠れており、そのエネルギーは激しく震え、まるでサタンの存在を受け入れきれないかのようだ。
「ユカリー!」
ハルナとヨルは飛び降り、彼女の元へ走っていった。ユカリの呼吸がまだあることに気づき、号泣があふれ出した。
「生きてる……」
「本当に生きてる……」
彼女たちは彼女を強く抱きしめた。
破壊の中にある喜びの涙だ。
霧二郎、タケル、城四郎はゆっくりとサタンの肩から降り、その光景を見て小さく笑った。
一方で……
ソニアと五人のデーモン・エグアマはもたれかかっていた。
「頭……クラクラ……」
「世界……クラクラ……」
彼らは次々と倒れた。
サタンは彼らを見つめ、そしてソニアを見た。
「そんなに頭がぐらぐらしたら……新しい力が出るのか?」
静けさ。
1秒。
バン!
ソニアの拳がサタンの頭に当たった。
「なんだその質問は?!」
サタンは少しもたれかかった。
それから笑い出した。
そして全員が安堵して息を整え始めた時――
廊下が鼓動した。
何かが現れた。
大きな瞳だ。
鼓動している。
絶対的な威厳で空間を満たしていた。
「静かにしなさい、人間たち」
その声は全存在に響き渡った。
「私はアクシス・ヴィタエだ」
ユカリとサタン以外の全員は固まった。
「私……この世界の創り主だ」
静寂。
重たい。
「しかし私がこのようになったのは……」
「……彼のせいだ」
その瞳の鼓動はますます激しくなった。
そしてエピソードは――
世界が息を呑むままに終わった。
「次回更新:2月 4日 21:00」




