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虚無王ザラビスは退屈している  作者: 釘宮・連
ザラビスの起源に関する注釈
69/73

69.観測者は、戦場に立たない

痛みより先に、意識が戻ってきた。


小虎コゴラクはゆっくりと目を開けた。


頭上には高く密度の濃い暗い樹冠が広がり、空は見えなかった。すり抜けてきた光は細かな筋道だけで、不規則に湿った地面に落ちていた。湿った土と腐った葉の匂いが鼻を突いた。


動こうとした。


するとすぐに、胸が重く感じた。


切り傷でもなければ、刺し傷でもない。


まるで体があまり遠くへ動くことを拒んでいるようだった。


「うぅ……」


短く、押し殺されたような声が漏れた。


小虎は顔を向けた。少し離れたところ、知っている者たちの身体が根っこと茂みの間に横たわっていた。


九郎クロ


夷然イエン


石榴葉タジュバ


茂也モヤ


誰もがまだ呼吸をしている。


誰もがまだ生きている。


そして誰一人……全く動いていない。


小虎はゆっくりと起き上がった。手はしばらく震え、やがて地面について体を支えた。視線を周囲に巡らせた。


森だ。


街でもなければ、廃墟でもない。どの一味の支配地でもない。


ここには……何の印もない。


「遠いな……」と小声で呟いた。


俯いて、自分の手のひらを見つめた。まだ傷ついていない。まだ力強い。だが何かがおかしい。体の力が完全には定着していないような気がした。


小虎は指を動かした。


反応が少し遅れた。


小さく舌打ちをした。


テレポーテーションは無理やりすぎた。混乱した状態の四人を連れて、ロヨダ市からできる限り遠くへ逃れた。行動に間違いはなかった。


だが体は高い代償を払っていた。


まず九郎の方を振り返った。そばにしゃがみ込み、二本の指で首元に触れた。


脈はある。安定している。


だが九郎の顔は虚ろだった。力が入ってもいなければ、不安そうでもない。まるで夢も見ずに眠りに落ちた人のようだ。


「起きろ」と小虎は低く囁いた。


応えはなかった。


夷然も試した。同じだ。


石榴葉も同じ。茂也も同じ。


骨折してでも起き上がるはずのブラックヤニウエイターの四人は、今や生ける屍のように静かだ。


小虎はゆっくりと立ち上がった。


周囲の森は変わらない。怪しい動きもなければ、足音もしない。追手の叫び声も、追跡の形跡もない。


ここは彼らを追いかけてはこない。


それこそが危険なのだ。


小虎は一歩前に踏み出した。


地面には何の反応もなかった。


また一歩踏み出した。


歩みは……軽い。あまりにも軽い。


まるで世界が自分の体重を完全には認めていないようだ。


「はぁ……」


立ち止まった。


小虎の目は細められた。


コトラットの世界で生きてきたが、一つだけ確かなことを知っていた。


この世界は非情だが、必ず反応を示す。


ロヨダ市も反応する。一味も反応する。恐怖も反応し、暴力も反応する。


だがこの森は?


反応しない。


小さくため息をついた。


「ここは……求められていない者が落ちる場所なのか……」


再び仲間たちの身体を振り返った。


「ここに長居すれば……」


「起きる前に、みんな消えてしまうかもしれない」


小虎は拳を握った。


ソニヤ。


シラナギ。


黒と赤の鎌。


そして全ての上に――


ノロ。


その名前が頭をよぎると、顎が締まった。


コトラットの世界は大戦争で滅びたのではない。


誰かが無制限に混沌を増やすことを許したから、滅びかけているのだ。


小虎は森の中へと戻り、少し開けた場所を探して歩いた。一歩一歩、見えない何かを消費しているような気がした。


突然――


木の枝が折れる音がした。


小虎は瞬く間に立ち止まった。


反射的に手を構えた。


誰もいない。


だが石榴葉の足元近くの地面が……少し凹んでいる。まるで何かがそこに立ち、すぐに去ったようだ。


獣でもなければ、人間でもない。


足跡があまりにも……整然としていた。


小虎はあらゆる方向を見回した。


「出るなら」と小声で、声は冷たかった。


「全部出てこい」


森は依然として静かだ。


風は吹いているが、答えを運んではこない。


鼻から息を吐き、再び仲間たちの元へと振り返った。


「起きようが起きまいが」と呟いた。


「ここに長居はできない」


遠くで――


何かが動いた。


はるか彼方から。


はっきりとした姿ではない。


ただ数百人の人影が西へと歩いているのが見えた。


小虎は背筋を正した。


目つきは鋭くなった。


そして彼女は見た……ドラゴンバーストと無刀盟ムトクメイが対峙し、戦いを始めようとしているのだ。


小虎はさらに強く拳を握った。


「つまりこの世界は、まだ完全には死んでいないのか」


小虎コゴラクはすぐに森が変わったことに気づかなかった。


変化は場所が移動したとは言えないほど繊細で、脅威と呼べるほどの音も立てなかった。空気は依然として湿り、地面は暗く、木の根っこはまるで何かを手放すことを拒む老人の手のように土を掴んでいた。


しかし視界は――


違ってきた。


まばらな木々の間、彼らがいる斜面の下の方に、光がきらめいていた。太陽の光でも、水の反射でもない。


炎だ。


たくさんの炎が燃え上がっていた。


小虎はじっと立ち尽くし、目を細めた。近寄るような動きもなければ、後ずさることもなかった。ただ体を少し横に動かし、途中で割れた太い木の幹の陰から覗き込んだ。


そこには、見るべきものがあった。


広大な開けた平地。地面は平坦ではなく、古い爆発の跡や、治らない傷のような長い擦り傷がいくつも残っていた。煙が低くたれこみ、なかなか上がろうとしないようにゆっくりと動いていた。


一方の側には――


軍隊がいた。

数十人でもなく、少ない数百人でもない。

本当に数百人規模の大軍だ。


乱雑だが攻撃的な編隊。重火器が並び、厚い鎧を身につけていた。いくつかの場所にはドラゴンバーストの紋章が描かれた黒赤の旗が翻っている。足音は低く絶え間ない鳴り響き、まるで大きな機械が暖機運転中の唸り声のようだった。


ドラゴンバースト――


小虎はその風格を知っていた。残酷で、直接的で、目標が倒れるさえすれば犠牲は気にしない。


しかし彼女の視線は長くそちらに留まらなかった。


なぜならもう一方の側には――


わずか五人しかいないからだ。


四人の姿は編隊も列も大きな旗も持たずに立っていた。位置は分散しているが、乱雑ではない。間隔が……丁度良いように感じられた。


五人。


そして彼らが作り出す圧力は、目の前の数百人よりもずっと重かった。


小虎の目はさらに鋭く細められた。


「あれは……無刀盟ムトクメイの者か……」


その名前を声に出すことはなかった。必要もない。コトラットの世界では、その名前が血と虚ろさを伴って聞かれることは少なくなかった。


ノロ率いる主要組織――


そこにノロの姿は見えない。存在も感じられない。だがそれは驚くことではなかった。もしノロがいたなら、この戦場はもはや形どころではないだろう。


五人の者は静かに立ち続けていた。


そのうち一人が前に踏み出した。


そして戦いが始まった。


叫び声もなく、合図もない。


たった一歩を踏み出すだけで十分だった。


最初の爆発はドラゴンバーストの側で起きた。正面からではなく、中央部からだ。土が舞い上がり、身体が吹き飛び、悲鳴は声になる前に破裂した。


小虎は瞬きもせずに見つめていた。


「……」


後ろから息遣いの音が聞こえた。


重く、乱れている。


素早く振り返った。


夷然イエンが咳をしながら、少し体を地面から浮かせていた。目は半開きで、しばらくは虚ろなままだったが、やがて焦点が合った。


「ボス……」夷然の声はからからだった。「ここは……どこ……?」


間もなく茂也モヤも目覚めた。小さく声を上げながら頭を掴み、顔をしかめて座り上がった。


「さっき何が――」


「落ち着け」小虎は静かだが力強く言葉を挟んだ。


二人の間にしゃがみ込み、片手を少し上げて止まれという合図を送った。目は警戒したままだが、声は低かった。


「誰も俺たちを攻撃していない」


夷然はまばたきをし、周囲を見回した。「森……?」


「ロヨダからは遠い」小虎は簡潔に答えた。


茂也が立とうとしたが、小虎は軽く肩を押さえた。力任せではないが、十分に意思は伝わる強さだった。


「勝手に動くな」


遠くから大きな衝突音が響き、足元の地面が少し震えた。


夷然と茂也は反射的に顔を向けた。


そして彼らもその光景を見た。


戦場だ。


茂也は体を固めた。「あれは何だ……」


夷然は唾を飲み込んだ。「あれ……ドラゴンバーストだ」


「で、あの五人は?」茂也は小声で尋ねた。まるで答えが聞こえるのを恐れるように。


小虎はすぐに答えなかった。


五人の伍魁衆ゴカイシュウの一人が手を上げた。


合図ではない。


命令だ。


ドラゴンバーストの数十人が突然動きを止めた。体は突っ張り、そして――


割れた。


武器によるものでも、殴り込みによるものでもない。


まるで体内に何かが逆さまに回されたかのようだ。


一人、また一人と倒れていった。


死んではいない。


まだだ。


だがもはや軍隊として機能しない。


「伍魁衆だ」小虎はやっと言葉を発した。


後ろからさらに音がした。


石榴葉タジュバが声を上げ、半身起き上がり、数秒後には九郎クロも目覚めた。二人ともまだぼんやりとしていたが、戦闘本能は甦っていた。


「状況はどうだ?」石榴葉は早口に尋ねた。


小虎は振り返らずに言った。「静かにしろ。見ろ」


彼らは見た。


そして理解した。


九郎は小さくつぶやいた。「四人……あんな大軍に?」


「それにドラゴンバーストも……」石榴葉は目を細めた。「押されてる」


その通りだ。


ドラゴンバーストは抵抗していないわけではない。猛攻を仕掛けている。弾丸、爆発、重火器は一切ためらいなく放たれていた。しかし攻撃が放たれるたびに、伍魁衆の一人が動く。


速すぎることもなく、遅すぎることもない。


丁度良いタイミングだ。


攻撃はそらされ、爆発は逆戻りされた。ドラゴンバーストの編隊は少しずつ崩れていく。数で負けたのではなく、リズムを失ったからだ。


「普通の戦いじゃない」夷然はつぶやいた。


「組織的な虐殺だ」小虎は答えた。


茂也は拳を握った。「ボス……逃げなきゃ。あいつらが俺たちの存在に気づいたら――」


「分かってる」小虎は言葉を挟んだ。


少しふらつきながらだが、ゆっくりと立ち上がった。まだ残る疲労をこらえるように体を少し傾けていた。だが目は戦場から離さなかった。


「だが今は行かない」


四人の仲間は同時に顔を向けた。


「ボス?」九郎は眉をひそめた。


「見てろ」小虎は続けた。「全てがはっきりするまで」


石榴葉は反論しようとしたが、やめた。その口調を知っていた。小虎の決断がもう動かせない時の口調だ。


再び大きな爆発音が響き渡った。伍魁衆の一人が総力を挙げて動き出した。まるで熱いナイフが肉を切り裂くように、ドラゴンバーストの隊列を突破していく。一歩一歩、数十人が倒れ続けた。


「マジか……」茂也はつぶやいた。


「で、ノロは?」夷然は小声で尋ねた。


小虎は首を振った。「いない」


「つまり直接の命令じゃないの?」


「あるいは……」小虎は目を細めた。「……これはただの前哨戦なのかもしれない」


サオ・バイが今どこにいるかなど気にしなかった。ドラゴンバーストのリーダーが生きていようと死んでいようと、逃げていようと、彼女が目の前に見ているものは変わらない。


大事なのはただ一つ――


ノロの組織は四人だけで……これほどの規模の戦争を始めるのに十分な力を持っているということだ。


そしてコトラットの世界は――


準備ができていない。


小虎は一歩後ずさり、全員が木陰に隠れるように確認した。


「俺たちは関わらない」冷たい声で言った。「ここにはいない」


全員が頷いた。


遠くで、ドラゴンバーストの兵隊は次々と崩れ落ちていく。


炎はさらに大きくなり、煙は空を暗く染める。


混沌の中で、小虎は表情も変えずに立ち尽くしていた。


怖いわけでも、感心しているわけでもない。


ただ計算しているのだ。


この戦いは――


誰が勝つかが問題ではない。


世界が分断され終わった後、誰がまだ立っていられるかが重要なのだ。


そして小虎は決めていた――


自分自身と、仲間たちが、必ず生き残ることを。

「次回更新:1月 25日 21:00」

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