66.定まった道筋
もう彼らは立ち止まることはない。
足取りはゆっくりだが確かで、やがて一つの目的へと続くことが明らかになった廊下を進んでいく。壁は以前のように鼓動することはなくなったが、道端の光がゆっくりと移動し、押しつけるのではなく導くようだ。
夜は陽菜のすぐ側を歩いている。もはやくっついて歩くわけではないが、距離は一歩以上離れることはない。
「この廊下は……」とつぶやく。
「呼んでいるようだ」
猛は周囲を見回した。
「君だけの気のせいじゃない。反射が変わってる。音もだ」
その通りだった。
声でも残響でもない、かすかな音のようなものがある。まるで細やかな引力のように、先の空間が彼らの存在をゆっくりと引き寄せているようだ。
城士郎は一歩足を速め、零二郎と肩を並べた。
「罠じゃない」
零二郎は振り返らずに頷いた。
「分かってる」
声のトーンは落ち着いている。迷いはない。長々と説明する必要もない。
「もし罠なら、十歩前から攻撃されてる」と零二郎は続けた。
陽菜は小さく鼻を鳴らした。
「じゃあ招待状?」
「あるいは呼びかけだ」と零二郎は答えた。
目の前の廊下は徐々に狭くなり、それからまたゆっくりと広がっていく。通り過ぎる人数に合わせているようだ。激しいゆがみもなければ、突然の圧力もない。
この廊下は……彼らを知っている。
夜は唾液を飲み込んだ。
「自分のことをあまりにも知りすぎてる場所は嫌いだ」
「大丈夫、俺もだ」と陽菜は言った。
猛はにやりと笑った。
「少なくとも、もう離れ離れにはならないさ」
その言葉で夜の足取りは少し軽くなった。
突然零二郎が立ち止まった。
全員もそれに合わせて止まった。
目の前の廊下は、二つや三つに分岐するのではなく一直線で、その真ん中には少し明るい光があり、まるで心拍のようにゆっくりと鼓動している。
城士郎はじっと観察した。
「選択肢じゃないな」
「そうだ」と零二郎は答えた。
「これが目的地だ」
彼は先に歩み出した。
指導者だからでもなく、一番強いからでもない。
ただ自然と誰もがその一歩に疑問を抱かなかったからだ。
陽菜が続いた。
猛がその後を追った。
夜は深呼吸をして歩み出した。
城士郎が最後尾を固めた。
彼らの視界の届かない遠くで、笹目ゆかりは動かずに立っていた。
廊下は彼女の思い通りに整えられていた。アクシス・ヴィタエはもはや多くのことを調整する必要がない——本流はすでに自ら流れ出していた。
ゆかりは一番前を歩く姿を見つめた。
零二郎。
彼は決して声を荒げたことがない。
「俺についてこい」などと言ったこともない。
それなのに世界は……いつも彼の前に道を開く。
「君はリーダーじゃないって分かってる」ゆかりはそっと囁いた。
「でも君はいつも進む方向になる」
彼女の手は小さく握り締められた。
会いたい。
本当に会いたい。
だけど今現れたら……
君は歩みを止めてしまう。
それは絶対にダメだ。
彼らの前の廊下はゆっくりと下り坂になり始めた。
空気は変わった。
より濃く、
より重く。
夜は首筋がゾクッとするのを感じた。
「零二郎……」
「分かってる」と彼は短く答えた。「もうすぐだ」
「何がすぐなんだ?」と猛が尋ねた。
零二郎は廊下の先の光を見つめた。
「変動の中心だ」
城士郎は静かにため息をついた。
「つまりこれから……ただ歩くだけじゃ済まないってことか」
零二郎は答えなかった。
だが足取りは遅くならなかった。
そして遠く離れた場所で——
ドラゴンバーストの廃墟の下、翔也はやっと座ることができた。
頭はまだふらつき、体は重い。
だが一つだけはっきりと感じられる。
何かが彼を引き寄せている。
上ではない。
下へ。
同じ廊下の方向へ。
物語はまだ繋がっていない。
だが道筋は……
もう固まっている。
廊下は再び動き出した。
以前のような衝撃や激しい歪みではなく、まるで迷っているかのように、判断を天秤にかけているかのようにゆっくりと動いた。空中に浮かぶ青白い光は、息をつめたかのように伸びたり縮んだりし、それからまた緩やかに吐き出すようだった。
零二郎は一番前を歩いていた。
指導しているからではなく、思考よりも先に足が動いていたからだ。本能だ。ここに長く留まることは、廊下が再び独自のやり方で「選択」するだけだと、彼の中の何かが知っていた。
彼の後ろでは、みんなの足取りはもはや慌てていなかった。
陽菜は夜を右側で支え、時折その少女の肩に手を触れ、本当にそこにいることを確かめている。夜はもはや陽菜の胸元に隠れることはないが、距離はまだ完全には離れておらず、恐怖を抑えようと必死にがんばっていた。
城士郎は少し後ろを歩き、目は決して休まなかった。光の変化、壁の移動——全てが静かに記録されていた。被害妄想ではなく、計算だ。
猛は零二郎の足取りに合わせ、時折後ろの廊下を見上げては、まるで翔也が突然そこから現れることを願っているようだった。
誰も話さなかった。
そしてまさにそのことが、廊下をゆっくりと震わせた。
まるでこの空間が、あまりに自覚的な沈黙を好まないかのようだ。
「何か変だ」とついに猛がつぶやいた。
零二郎は振り返らずに言った。「最初からだ」
「それじゃない」猛は続けた。「まるで……呼ばれているような気がする」
零二郎の足取りが遅くなった。
そして立ち止まった。
他の人たちも命令されるでもなく、反射的に止まった。
目の前の廊下は、二つや三つではなく、無数に分岐していた。分岐は一斉に現れるのではなく、暗い土の中で方向を探す根のように、一つずつ生えてきた。
だが零二郎はそれらの分岐を見ていなかった。
彼の視線は、肉眼では見えない何かに釘付けだった。
方向だ。
「この廊下は……俺たちを惑わせるつもりじゃない」と彼は静かに言った。
城士郎は目を細めた。「なかなか楽観的だな」
「楽観じゃない」零二郎は答えた。「機能的なだけだ」
彼は一歩前に進んだ。左側の分岐はすぐに崩れ、壁が閉じてまるで存在しなかったかのようになった。
夜は驚いて叫んだ。「え?!」
零二郎がまた一歩進むと、別の分岐も消えた。
「反応してるな」城士郎は静かに言った。「集団に対してじゃなく……彼に対してだ」
全員の視線が今、零二郎に向けられた。
零二郎は短い息を吐いた。「俺はリーダーじゃない」
猛はまったく面白くない状況の中で、ほんのりと笑いそうになった。「問題は、この廊下がそんなことを気にしてないってことだ」
廊下は再び震えた。
攻撃的ではない。
まるで……認めているかのようだ。
本流の廊下から遠く離れた場所、廊下と呼ぶにも値しない空間がゆっくりと鼓動していた。
妄撃ジャは虚無の中で目を覚ました。
壁もない。
床もない。
方向もない。
光ではなく、色彩の不在である白だけが広がっていた。
立とうと試みた。
体は重たい——けがのせいではなく、この空間自体が彼の存在を拒んでいるようだった。全ての動きは、固まった空気を押しのけるようなものだ。
「ここは……コトラトじゃない」とつぶやいた。
応えるものはなかった。
それから何かが動いた。
距離がここには存在しないため、近づいてくるわけではない。
ある意識が降りてきて、妄撃の体ではなく、存在そのものに圧力をかけてきた。
アクシス・ヴィタエ。
完全な姿ではない。
ただその機能的な残影だった。
——あなたは本流から排除されました。
その声は外から聞こえてきたのではない。妄撃自身の思考のあいだに現れた。
「排除された?」妄撃はにやりと笑った。「そんなこと、俺がどうしたって?」
武器を掲げた。
反応はない。
攻撃を仕掛けた。
影響はない。
攻撃は失敗したのではなく、発生することすら許されなかった。
——犯罪者には介入する権利は与えられません。
妄撃は笑い出した。「そうか?この世界も今さら選別してんのか?」
——最初からです。
圧力は高まった。
壊滅させるのではない。
削り取るのだ。
妄撃は記憶がはがれ落ち始めるのを感じた——消去されるのではなく、コトラト世界とのつながりから切り離されていくのだ。名前、足跡、関係性——全てが。
「くそっ……」息は切れ切れになった。「それなら……殺せよ、一発で!」
——完全な抹消は非効率的です。
答えは平板だった。
——残渣空間へ移送します。
「残……何だよ?」
説明はなかった。
世界は折りたたまれた。
そして妄撃ジャは、初めて暴力で死なず、戦いに負けず、物語そのものから排除された。
死んでもない。
生きてもいない。
捨てられたのだ。
——本流の廊下へ戻る——
零二郎は何かを感じた。
危険ではない。
取り除かれた重荷だ。
目の前の廊下は狭くなり、それから一本の道だけを開いた。
夜は深い息を吸い込んだ。「気がする……軽くなった」
陽菜は頷いた。「何かが……いなくなったようだ」
城士郎はまっすぐ前を見つめた。「あるいは、排除されたんだ」
ゆっくりと鼓動する廊下の構造の向こう側で、笹目ゆかりはじっと立っていた。
手は握り締められていた。
緊張して我慢しているわけではない。
主要な脅威は排除されたのだ。
だが全ての介入には必ず代償がある。
アクシス・ヴィタエはゆっくりと鼓動していた。
道筋は安定している。
ゆかりは息を吐き出した。
「ありがとう」と囁いた。「今度は……もう彼らを邪魔しないで」
アクシス・ヴィタエは応えなかった。
それは決して約束をしなかった。
零二郎は再び歩み出した。
そして今度は、廊下は抵抗しなかった。
彼に従ったのだ。
彼の後ろでは、五つの足取りがひとつになった。
離れ離れになってから初めて、彼らは追われるからでも、押されるからでもなく、選ばれたから動いていた。
そして何よりも、まだ手の届かない場所で——
本来なら指導すべき人物が……目覚め始めていた。
「次回更新:1月 19日 21:00」




