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61.廊下は決断を待たない

その廊下は誰の決断も待ってはくれなかった。


低い唸り声が響き渡るや、コンクリートの壁さえも息を吸い込むようだった。レイジロウは反射的に動き出した。


「逃げろ」


彼は再び言った。今度の口調は命令ではない。ただの自覚のようなものだった。


「もちろんだ!」


タケルはもう先に振り返り、足をひきずりながらも無謀にも動き出していた。


「これは明らかに意地っ張りする時じゃない!」


モウゲキは静かに舌打ちをし、それから動き出した。協力したいからではなく、本能が一つのことを叫んでいたからだ。動けば死ぬ、じゃなくて——動かなければ死ぬ。


三人は走り出した。


足音は、あまりにもまっすぐで、あまりにも整然とし、そしてあまりにも…不気味な長い廊下で反響した。非常灯は不規則に点滅し、まるで彼らの存在についていけないかのようだった。数メートルごとに廊下は同じ景色を繰り返す——壁のひび割れ、床の水あか、天井の古い配管。全てが同じように見えた。


「これは廊下じゃない」


タケルは息切れしながら後ろを振り返った。


「心理的な罠だ!」


「前に集中しろ」


レイジロウは答えた。


「後ろからの音は聞くな」


「問題は——」


モウゲキは弱々しくにやりと笑い、息は荒かった。


「足音が聞こえないんだ」


それがかえって三人をさらに速く走らせた。


何かが音もなく、焦る様子もなく、感情もなく彼らを追いかけている。


廊下は突然カーブした。


普通の曲がり角ではなく、まるで壁が無理やり回されたかのような鋭いカーブだった。


「曲がるぞ!」


タケルは反射的に叫び、指差した。


レイジロウがタケルのジャケットの襟を引っ張って体を回さなければ、壁に激突する寸前だった。三人はより狭く、より暗く、そして…より長い新しい廊下に入った。


「ますます悪化してる」


レイジロウはつぶやいた。


「少なくとも死んでないんだ」


タケルは応えた。


「それは進歩だ」


彼らの後ろで、何かがカーブした。


そしてモウゲキはいなくなった。


音もなく。


足跡も残さず。


別の廊下、正確にはヨルのいる場所で——


千花・夜は小さく体を突き上げるように目を覚ました。


頭はふらつき、体は冷たい。湿った匂いと…汚物のような匂いがした。彼女は鼻をつまみ、顔はすぐにゆがんだ。


「え、えっ…?」


声は震えていた。


「これ…何の匂いなんだろう?」


彼女はゆっくりと座り上がり、周囲を見回した。暗い廊下。静まり返っている。仲間の姿は誰も見えなかった。


「ゆかり…?ハルナ…?」


小さな声で呼んだ。


応えはない。


空っぽだ。


静かだ。


夜は唾液を飲み込んだ。目には涙が浮かび始めていた。彼女は暗闇が嫌いだ。小さい頃から。


「やめて…こんなのやめてよ…」


つぶやく声はほとんど泣き声だった。


彼女は立ち上がり、速足で歩き始め、やがてスピードを上げて小走りになった。息は切れ切れで、手は震えていた。


そして——


遠くに赤い点が光った。


夜は立ち止まった。


「…ランプ?」


小さな声で期待した。


その点は動き出し、近づいてくる。


そして光は眼窩の形を作った。


生きているような骸骨の顔が闇から現れ、顎はカチカチと音を立てながら動いた。


夜は一瞬固まった。


そして——


「あああああああ!な、なんだそれ?栄養失調の骸骨か?!」


彼女はすぐに振り返り、精いって走り出した。


「ついてこないで!私は痩せてるから、食べてもおいしくないよ!」


骸骨は浮遊しながら追いかけ、顎は開いたり閉じたりしてまるで笑っているようだった。


「私はホラーの脇役にはならないんだ!」


夜は叫びながら、いつまでも続くような廊下をジグザグに走っていた。


別の廊下で——


ジョウシロウとハルナは離ればなれになったものの、既に出会い、同じく走っていた。


問題は、二人の走り方が全く違うことだ。


ジョウシロウはパニックで叫びながら、二歩に一度は振り返っている。ハルナは?まっすぐ走り、表情は平板だが、スピードは一定で…不気味なほど速かった。


「戦わなきゃいけないんじゃないか?!」


ジョウシロウは息切れしながら言った。


「はっきりとした形さえないモノと戦いたければどうぞ」


ハルナは冷たく答えた。


「私は生きることを選ぶ」


遠くから叫び声が聞こえてきた。


「あの骸骨って何なんだ?!」


「…夜の声だ」


ハルナは言った。


「なんであいつの叫び声がスタンドアップコメディみたいなんだ?!」


気づかぬうちに、それぞれ別々だった廊下は近づき始めていた。


彼らの声は互いに響き合っていく。


一方で…


高い空の上で——


ゾルントラは無理やりに進んでいた。エンジンは不安定なまま轟いている。コックピットのサオ・バイは黙って操縦桿を引き、冷や汗が額を伝って流れていた。


ヒノカは後部座席でまだ意識を失っており、体は拘束され、エネルギーがゆっくりと吸い取られていた。


「クロキバ!見えるか?!」


サオは叫んだ。


「レーダーに反応なし!でも——」


空が切れるような音がした。


サタン(別名ザラビス)がゾルントラの横に一瞬現れた。


「…ふむ」


彼は悠然と浮遊しながらつぶやいた。


「エンジン部分を撃てば…ヒノカが跳ね返りで巻き込まれる可能性がある。でも待てば…逃げられてしまう」


彼は手を上げた。


照準を合わせた。


サオ・バイが気づいた時にはもう一秒遅れていた。


「避けろ——!」


破壊の光線が飛び出した。


ゾルントラは反射的に回避した。光線はヒノカの頭すれすれを通り過ぎた。


サタンは思わず目を見開いた。


「ああ、危なかった。今度こそヒノカの頭が吹っ飛びそうだった。夜だから暗くて、わずかに外れただけだ」


彼は一瞬で射撃方向を変えた。爆発はロボットの横の空しかりに命中し、巨大な衝撃波を生み出した。


サオ・バイは口をつぐんだ。


「…奴は…人質を殺そうとした」


恐ろしそうにつぶやいた。


サタンは悔しそうに舌打ちをした。


「集中しろ、ザラビス。集中しろ」


目は細められた。


「二度目のミス…するまい」


ロヨダ市で——


半壊したビルの屋上で——


ソニヤとシラナギは壁にもたれかかって座り、息は荒く、体中に小さな傷がいくつもあった。夜風がそっと吹き抜けていた。


「やっと…座れるようになった」


ソニヤはつぶやいた。


シラナギは疲れたように微笑んだ。


「ブラック・ヤニウエイター将軍…本当に面倒くさい奴だ」


二人は遠くの光で切れ目の入った空を見つめた。


「あの子たちは…大丈夫だと思う?」


ソニヤは小さな声で尋ねた。


シラナギは目を閉じた。


「…もしこれが彼らの選んだ世界なら」


静かに言った。


「きっと生き残るだろう」


風は遠くの叫び声、轟音、そして地下で何かが動く音を運んできた。


ロヨダの夜はまだ終わっていない。


そして運命は、今、つかみかけた手をさらに強く締め始めていた。


崩れかけた建物の屋根はひび割れ、灰色の空に開かれていた。冷たい風がコンクリートの隙間から入り込み、細かな塵と古い鉄の匂いを運んできた。ソニヤは傾いたコンクリート梁に座り、背中をもたれかけ、まだ呼吸は完全に落ち着いていなかった。


シラナギは少し離れた場所に立ち、腕組みをして建物の外の闇を見つめていた。


足音が響いた。


慌てたような音でもなく、軽やかな音でもなかった。


五人の姿が瓦礫の向こうから現れた。


ソニヤはすぐに立ち上がった。


「お前たち…」


声は一瞬詰まった。


「戻ってきたのか」


影爪カゲツメ・ユラが一番前に歩み出した。黒髪の彼女の顔は、夜の湖面のように静かだった。後ろには、皇骸コウガイ・ヤシャが少し離れて歩いており、体格は似ているが、気配はより重かった。蚊噛ニカ・シャケミは周囲を見回し、誰かに尾行されていないか確認しているようだった。黒墨クロズミ・コウヤは手をポケットに入れ、表情は平板だった。一人分の空席がある。


八乃花ヒノカ・ヤヒラはいなかった。


シラナギはすぐに気づいた。


「…全員そろっていない。何があった?」


ユラはソニヤから二歩先で立ち止まり、少し頭を下げた。人間への敬意ではなく、現状を認めるような仕草だった。


「最後の命令通り戻ってきました」


ユラは静かに言った。


「しかし戦場は分断されました」


ソニヤは唾液を飲み込み、目が早く動きながら数えていた。


「サタンはどこだ?」


言葉は自然と口から出た。しばらく沈黙が訪れた。


ニカは小さく肩をすくめた。


「私たちとは一緒ではありません」


声のトーンは軽いが、指は握り締められていた。


シラナギは目を細めた。


「お前たちは…サタンから離れたのか?」


皇骸・ヤシャがついに話し出した。声は低く静かだったが、中には何か固いものがあった。


「今のところは」


ソニヤは長い溜め息をつき、無理やり笑おうとして失敗した。


「奴は理由もなく姿を消すタイプじゃない」


彼女は自分自身に言い聞かせるように言った。


ユラはしばらくソニヤを見つめた。


「私たちもそう考えています」


黒墨・コウヤは静かに舌打ちをした。


「もし本当に危険な状況なら、ここはもうひっくり返っているはずだ」


シラナギはコウヤを見た。


「それは保証にはならない」


「そうだ」


コウヤは振り返らずに答えた。


「でもそれが習性だ」


間が空いた。風が通り過ぎ、塵が天井から落ちてきた。


ソニヤは体の横で拳を握った。


「ヒノカは?」


今度はユラが息を吸い込んだ。


「捕らわれました。機動部隊によって。内部名称は…ゾルントラです」


ソニヤは体を震わせた。


「ロボット?」


「単なるロボットではありません」


ニカが素早く答えた。


「パイロットがいます。そして中には別の存在もいます」


シラナギは顔をそらした。


「サタンは追いかけたのか?」


ユラはうなずいた。


「それが最も可能性の高いことです」


ソニヤは頭を下げ、髪が顔の一部を隠した。


「奴はいつもそうだ…何でも一人で抱え込んで」


皇骸・ヤシャは屋根の隙間から空を見上げた。


「できるからこそだ」


声には感心も自慢もなかった。


ただの事実だった。


シラナギはソニヤのそばまで歩み寄った。


「心配してるな」


ソニヤは肩をすくめ、無理やりくつろいだ様子を装った。


「友達だからだろ。心配しちゃダメなの?」


ニカは小さく微笑んだ。


「面白いですね。人間が我々のご主人様のことをそう言うなんて」


ソニヤは鋭く目を見開いた。


「それが問題なのか?」


ニカはすぐに手を上げた。


「いいえ。むしろ…問題ないです」


ユラは少し手を上げ、会話を止めた。


「現在の優先事項は回復です。時間、位置、そして一人のメンバーを失いました」


「二人です」


コウヤは平板な声で言った。


「ご主人様が戻らない場合」


また沈黙が訪れた。


シラナギがそれを打ち破った。


「もしサタンが突然現れたら?」


「この建物は狭すぎると感じるでしょう」


皇骸・ヤシャが答えた。


ソニヤは今度こそ薄笑いを浮かべた。


「そうだ…あいつはそうだ」


全員が静かになった。座る者、立つ者、もたれかかる者。


誰も眠ろうとはしなかった。


時計の数字もなく、時間は過ぎていった。


そして——


コトラット市の上空で


灰色の雲の上、瓦礫の届かない場所で、誰かがまるで床があるかのように空中に立っていた。


ノロ。


手は背中に組み、割れた世界を見つめる目は、優しいような静けさを帯びていた。


唇の端が上がった。


「面白い」


つぶやいた。


「まだ生き残っているのか」


風が彼の周りを旋回し、遠くの轟音、叫び声、機械の音を運んできた。


ノロはさらに大きく笑った。


「あと二日」


彼は静かに言い、まるで空に話しかけているようだった。


「我々は降りる」


空は応えなかった。


そして世界は、気づかぬうちに、時の訪れるべき場所へと回り続けていた。

「次回更新:1月 7日 21:00」

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